漂砂のうたう (集英社文庫)

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  • 集英社
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感想 : 77
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  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087451306

感想・レビュー・書評

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  • 鬱屈主人公。
    もがいてるけどそのもがき方が読むだにもどかしい。
    激動の渦の中心でないところから見る幕末から明治。
    なんかもう色々とやるせない。それでもぐいぐいと読まされるのはいつものこと。
    ポン太の味わいもあってどこか浮世離れした不可思議さもあり。

  • 144回 2010年(平成22)下直木賞受賞作。世が江戸から明治へ移った頃、遊郭で働く元武士の男と彼と絡む人々の話。明治維新により侍や遊女、廓の人々、博徒たちはそれまでの生業を変えることを強いられた。あくまでも現状にしがみつくもの、羽ばたこうとするもの、その足を引っ張るもの。そんな輩に囲まれるなかで、主人公だけがどこにも踏み出せずにグズグズともがくさまがおもしろい。おすすめ。
    しかし、松井今朝子の『吉原手引草』やなかにし礼の『長崎ぶらぶら節』など遊郭を舞台とした直木賞作品は多いですね。そこには華やかさ、せつなさ、男女のかけひき、女どおしの争い、裏切り、廓システムの非日常性など小説をおもしろくする題材が全て揃っているからだと思います。

  • 主人公と年が近いせいか、とてもリアルな物語と感じました。焦燥感を抱えながらも廓で生きて行くしかない現状。廓で働く人は皆人間臭く、ああ、こういう人いる!と何度も頷きながら読みました。そんな中で小野菊だけが異様に強い。その強さはある人との絆が故だと。絆が人を強くするという教訓でしょうか…小野菊という人がとても好きですが、非現実的な完璧なヒロイン像という印象も受けました。最後、龍造に武士の子であることを見抜かれていたときの涙など、人の感情がとてもリアルで繊細に描写されており、すごい小説だと思います。

  • 明治維新後の下町の遊廓に吹き溜まる人々。歴史の教科書で習うような維新後の出来事、大学の設置、自由民権運動、西南戦争だのを吹き溜まりから斜めに見上げるやさぐれた主人公の中途半端な荒みっぷりにゲンナリし、読んでいて楽しくはない。でも、このような視点もきっと当時あったのだと思えるリアルさ。籠の鳥は籠を開けても、必ず喜んですぐに飛び立つとは限らない。

  • さすが木内さんと思える作品です。明治初期の世の中の急変と、そのなkでどこか江戸の雰囲気を残しながらも変わって行く遊郭の雰囲気がしっかり伝わってきます。ですが、好きかと言われれば左程でもなく。
    『漂砂のうたう』と言うのは妙なタイトルだと思っていたのですが、読んでみれば納得。まさしく時代の激変の中で漂砂の如く漂う主人公達。特に
    主人公の定九郎の諦念(というより逃避かも知れません)が精緻に描かれます。その姿が何とももどかしく。一方で時代に流されずしっかり根ざした妓夫の龍造や花魁の小野菊。むしろこ

  • 明治維新後、遊女屋で働いている元武士の青年のお話。それまでの生活や考え方、社会の何もかもが覆って、自らの存在価値さえも見失った人々が鬱屈を抱えてもがき苦しむ様を、恐ろしくも哀れにも感じた。突きつけられた厳しい現実から逃げようとしてもどこにも行き着かない閉塞感、諦観。
    そんななかで自分というものを見定めて、置かれた場所で生き抜こうとしたり、居場所を探して一旦逃げた場所に戻ったりする強さを持った男女もいる。
    昏く、不思議な味わいの小説。最後に少し光が見えて、救われた気がした。

  • 単行本を図書館で借りて読んで、文庫が出たので自分で買った。
    再読になるけど。

  • 祝文庫化

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    「明治10年、根津遊郭。御家人の次男坊だった定九郎は、過去を隠し仲見世の「立番」として働いていた。花魁や遊郭に絡む男たち。新時代に取り残された人々の挫折と屈託、夢を描く、第144回直木賞受賞作。 」
    (単行本)
    「明治10年。根津遊廓に生きた人々を描く長編
    ご一新から十年。御家人の次男坊だった定九郎は、出自を隠し根津遊郭で働いている。花魁、遣手、男衆たち…変わりゆく時代に翻弄されながら、谷底で生きる男と女を描く長編小説。 」

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著者プロフィール

1967年生まれ。出版社勤務を経て、2004年『新選組 幕末の青嵐』で小説家デビュー。08年『茗荷谷の猫』が話題となり、09年回早稲田大学坪内逍遙大賞奨励賞、11年『漂砂のうたう』で直木賞、14年『櫛挽道守』で中央公論文芸賞、柴田錬三郎賞、親鸞賞を受賞。他の小説作品に『浮世女房洒落日記』『笑い三年、泣き三月。』『ある男』『よこまち余話』、エッセイに『みちくさ道中』などがある。

「2019年 『光炎の人 下』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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