- Amazon.co.jp ・本 (360ページ)
- / ISBN・EAN: 9784087460117
感想・レビュー・書評
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4.2
→すごく面白かったです!どこにでもいそうな普通の女の子の成長物語で、ありふれた日常が進んでいくからこそ楽しんで読むことが出来ました☺︎詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
この本、本棚を始める前に一度読んでいると思っていたのだが、読み始めてみても記憶に触れるところがなく、もしかしたら初読…?
紀子という普通の女の子の10歳から18歳までのお話。
この本が出た頃の読者なら誰もが大なり小なり経験した、誕生日会があったりプチ家出をしたりちょっとグレたり恋愛やバイトにうつつを抜かしたりという通過儀礼的なことがうまく書かれていて、まずまず面白く読んだ。
ただ、今の世の中にこれを読むとかなり呑気な話のように思え、ほんの20年しか経っていないのにほんとに世の中が変わったなぁと改めて思ったのだった。 -
主人公は「永遠」という言葉に敏感だった。
「永遠に見られないよ」などと言われると、途端に見ないといけないと思ってしまう。
そんな主人公が、世界には永遠なんて無いのだと感じながら成長していく過程が書かれた本。
こう書くと悲しい本かと思う人もいるかもしれないけど、決してこの本は悲しい本では無い。
「永遠ではない」=「終わりがある」からこそこの世界は素敵なのだ。
そう思わせてくれる本です。
好きな言葉↓
《損得勘定は往々にして関係の末期を物語る》
《「だって宇宙は膨張してるんだぜ」》 -
あの頃、一日は早いのに重たくて、一年がとても長くて一年の差は果てしなくて、世界が狭いから、その中で一生懸命で、未来は無限で贅沢に使ってて、先の見えない世界に色んなものを詰め込むことが出来た。
物分りなんて良くないから、だからとても大切でバカで一生懸命でいれたとき。
その時があるから今がある。
戻れないから、それが「永遠」
一日はとても早くて、一年はものすごく早く、物分り良くある程度折り合いをつけた、常識的で見え透いた未来を見ている今、この本に出会えて良かった。 -
主人公の紀子の、小学生から高校卒業までを綴った連作短編集。
面白くてどんどん読み進んだけど、同時に読んでて胸が苦しくもなった。青い10代を生きて大人になった人なら、誰しもが思い当たるエピソードが満載で。
今まで忘れていたことでも、そういえばこんなこと私にもあったなぁ、なんて色々と思い出したりした。小学生時代のお誕生会とか、女子同士のあれこれとか、仲良くても卒業してバラバラになると疎遠になっちゃう感じとか。
この主人公は反抗期がやや行きすぎた感じになったのだけど、私の周りにいたいわゆるグレてた子も、元々はきっと普通の子で、ほんの些細なきっかけでそっち側にいって、でも少し大人になってまた元に戻ってみたり、純粋だからこそ染まりやすく揺れやすい、そういう思春期の描き方が本当に秀逸。
森さんは元々児童文学のジャンルの作家さんだから、というのもあるかもしれないけれど、大人になって読んで自分のことを振り返って少し胸が疼くような、懐かしくてちょっと笑っちゃうような、青さが恥ずかしくて思わずジタバタしちゃうような(笑)、たくさんの感覚を与えてくれた小説だった。
10代の頃から目標を明確に持って5年先10年先のビジョンを描けていた人もいるかもしれないけれど、全く描けないまま何も決められないまま高校を卒業してしまった私のような人間からすると、「未来は全然分からなかったけれど、自分次第でどんな風にも変えていけた」と30代になってから気づいた瞬間の、諦めとも後悔とも誇らしさともつかぬ複雑な感覚が正しく描かれすぎているこの小説が、大好きだけどちょっと怖い、と思ってしまうのかもしれない。はっきりと自信が勝っているなら、そうはならないのかもしれないけれど。 -
この話は私世代の話だと思うんだけど、私の世代ってこんなにはじけてたかな。
私が田舎っぺだから知らなかっただけなのかな…。
第6章からはすごく面白くなった。特に第8章の「恋」はいい。 -
どこにでもいる普通の少女、紀子が小学3年生から高校3年生までに経験した様々なこと―誕生日会をめぐる小さな事件、黒魔女のように恐ろしい担任との闘い、不良といわれる仲間とつるんだ中学時代、家庭崩壊の危機を救った温泉旅行、高校での初恋―と共に紀子の成長を描いた短編集。
大人になってから振り返ると愚かで羞恥に満ちているが、小さな世界の中で子供なりに精一杯生きていた日々。紀子が一生懸命になればなるほど、くすぐったいような、苦笑いしたいような気分になってくる。それは誰もが何かしら紀子と似たような経験を経て大人になってきたからかもしれない。それを大人の目線で冷静に見つめることができるようになったからこそ、このほろ苦さを感じるのだろう。
「大人」は別の生き物のように感じていたあの頃から、時間だけは過ぎていってしまった。今の自分はあの頃思い描いていた「大人」とはほど遠い、むしろあの頃の延長でしかないけれど、結局「大人」ってそういうものなのかな、とやっと解った。違う生き物になれる訳はなくて、あの頃から続く今の自分と折り合いをつけながら、これからも生きていくのだろう。この物語を読んで改めて思った。 -
昭和の時代に思春期を過ごした女の子の小学3年生〜高校3年生までの話、大きな事が起こるわけでもなく、特別キラキラした青春でもないので、同じ頃に自分もこんな気持ちでいたのかな…と懐かしい気持ちになったり、クスクスと笑ってしまったり…
子供の頃にもどりたいなんて思うこともあるけど、友達、家族、先生、恋愛、進路… ただ楽しいばかりでなく悩んだり、挫けたり、大変だったんだよね。 -
『あの青々とした時代をともにくぐりぬけたみんなが、元気で、燃料を残して、たとえ尽きてもどこかで補充して、つまづいても笑っていますようにー。』
このエピローグのセリフにじーんとしてしまった。
なんかもうどうしようもなく自意識過剰で、エネルギーを持て余して、周りが見えてなくて、そういう時期をぶつかり合いながら一緒に成長してきた仲間を想う言葉としてこれ以上にマッチする物言いはないように思った。