ミャンマーの柳生一族 (集英社文庫)

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  • 集英社
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感想 : 88
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087460230

感想・レビュー・書評

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  • ミャンマーに興味を持った人が最初に読む本としてお薦め。
    世界の秘境ハンターとしてすっかり有名になった著書が、船戸与一の取材旅行の案内にとしてミャンマーに向かう。
    タイトルがいかにも怪しげなのはいつもの癖。軍事政権下で鎖国政策を取る、ってことは開国前の日本とそっくりじゃないかということで、ミャンマーを江戸期日本に見立てて説明していくのがこの本の趣向。
    取材は10数年前のこと、ジャーナリストビザはなんとか貰えた、ただし条件として軍情報部の旅行会社のお膳立てに従うこと。情報部の元締めキン・ニュンは首相でもある。彼のような人物を日本で探すと、江戸初期の柳生但馬守が一番しっくりくる、小説やドラマの中では裏柳生はおなじみだし、、ってなことで、すべてが江戸時代に例えられていく。
    正直、最初の方はちょっと苦しい例えが多いというか、ちょっと滑りがちのような気がするものの、だんだんこれ以上の方法は無かったように思えだす。
    というのは、やたら複雑な民族問題、領土紛争の話を、固有名詞を次々に出されて説明されても日本人にはまずついていけない。それがカレン島津藩、シャン伊達藩、タン・シュエ家光みたいな書き方してあると、すんなりイメージできてしまう。そして最後にはどんでん返し。

  • 早大探検部の先輩・船戸氏に随行する形でミャンマー(ビルマ)入りした著者。入国前の審査から船戸氏との扱いに笑えたが、題名のとおり軍事政権の情報部を隠密・柳生一族になぞらえての記述は、まさにエンタメ系ノンフィクションと呼ぶに相応しい。奇しくも2015/11/11現在、ミャンマーでは千姫ことアウン・サン・スー・チー氏率いるNLDが勝利を収める報道が世界を駆け巡った日だったことは偶然にしても出来すぎ(笑)

  • 掛け値無しに面白すぎる!
    クレイジージャーニーで見かけたヤバイ人だぁと思って読み始めたけど、ヤバさはそのままにミャンマーの体制や人びとの濃い部分を描き出している。
    人を観察する視線はフラットで、そのフラットさが激ヤバな状況でもそのままだからこそのおもしろさ。

  • 基本強引に徳川幕府に繋げていくのでちょっと違和感。親しみを持って例えているのは分かるがかえって混乱した。
    コンデンスミルクをたっぷり入れたチャイ、飲んでみたい。その茶店の風景と共に味わったら楽しいだろうな。電気が部分的にしか通っておらず、夕陽が沈むと街が赤く染まり闇に包まれていく、終末を迎えたかのような感覚というの、ちょっと興味がある。人々の温かみや、少ない娯楽を堪能しながらゆっくりと時間が流れているミャンマーに想いを馳せた。
    お酒の席での話なんかは、人種や言葉や育ち方や住むところが違っても、おじさんはおじさんでみんな一緒なんだと思えて面白かった。

  • 面白かった、為になった点 3点。

    p137
    日本で働くミャンマー人がストレスを感じるのは上司に意見を聞かれること、つまり発言の自由。

    p151
    ミャンマー人の社交性はどこで身につくのか。
    p158
    答えは国内。ミャンマー国内で様々な宗教・民族の人="異国"の人と接するため。

    p171
    パンロン条約締結後アウン=サン亡くなる。その後地方を押さえるために軍事独裁体制を築いたのがネ・ウィン。

  • 普通の人は行かないようなところばかりをわざわざ選んで旅をする、辺境作家の高野秀行。コンゴへ怪獣を探しに行ったり、ミャンマーへアヘンを栽培しに行ったりしていた彼が、早稲田の探検部の先輩後輩のよしみで、大作家の船戸与一からミャンマーへ一緒に行こうと誘われます。ミャンマーに合法的に入ったことがなかった高野さん。絶対にブラックリストに載っていると自負していたのに、意外にも入国は簡単に認められ、駄目だと言われたのは船戸さんのほう。作家としての知名度の差らしく、高野さんガッカリ。なんとかふたりとも入国できることになったものの、ミャンマーの某旅行会社を必ず使うようにと指定されます。これがなんと旅行会社に姿を借りた軍情報部、高野さん曰く、まるで柳生一族。ワケのわからん日本人に勝手をさせてたまるかということで、ガイドのふりをした柳生一族が監視役として同行するのでした。高野さんが行けば何でも珍道中に。船戸さんの酔っぱらいぶりも楽しい旅行記。

  • 内容(「BOOK」データベースより)
    探検部の先輩・船戸与一と取材旅行に出かけたミャンマーは武家社会だった!二人の南蛮人に疑いを抱いたミャンマー幕府は監視役にあの柳生一族を送り込んだ。しかし意外にも彼らは人懐こくて、へなちょこ。作家二人と怪しの一族が繰り広げる過激で牧歌的な戦いはどこへ…。手に汗握り、笑い炸裂。椎名誠氏が「快怪作」(解説)と唸り仰天した、辺境面白珍道中記。

    今僕が一番偏愛している高野さんは、とにかく色々な冒険をしているのですが、場所がとか世界情勢がという以前に、現地の人達に対する愛情がほとばしり出ていて、笑いながらもとってもジンとくる文章を書くお方です。今回も行動を共にした政府の監視役と思われる人々とも仲良くなって、最終的には読んでいる方が名残惜しくなる感じでした。
    ミャンマーの情勢を徳川幕府になぞらえ軍部を柳生一族に置き換えて日本人に分かりやすく説明をしてくれていますが、残念ながら僕は日本史にあまり興味がなくて残念でした。これそこに精通している人ならもっともっと楽しめます。

  • 辺境作家の高野秀行氏と、早大探検部の先輩で小説家の船戸与一氏によるミャンマー珍道中。船戸氏がミャンマーを舞台にした冒険巨編『河畔に標なく』を執筆するにあたり、取材旅行の通訳兼ガイド兼雑用係として、ミャンマーに詳しい高野氏を指名したのが旅のはじまり。

    なんとなくミャンマーに住む柳生一族の末裔の話かと、勝手に想像しながら読み始めたが、全く違ってて最初から戸惑ってしまった。高野氏がミャンマーの軍事政権を徳川幕府に、そして取材旅行の監視役であるミャンマー国軍の情報部の人たちを柳生一族に、勝手に例えただけだったのだ。でもこの例えが絶妙で軍事政権と反政府ゲリラ、そしてアウンサン親子との関係を理解するのに、新聞なんかより格段にわかりやすい。

    しかし旅程的にはフツーの取材旅行なのだが、高野氏が参加した時点でなぜか面白くなってしまうのは、いつも通りさすが。しかも今回は、同行した柳生一族のポンコツぶりとの相乗効果で、想像以上の面白珍道中だった。それにしてもこの作品と船戸氏の小説、どちらの方が売れたのかね?

  • 徳川幕府を使った例えを用いているが、よけい分かりにくい。

  • 2004年にジャーナリストの高野氏と作家の船戸与一がミャンマーに取材に行き、経験したいろいろ。ミャンマーの政治について、わかりやい例えに沿って話が展開されていく。

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著者プロフィール

1966年、東京都八王子市生まれ。ノンフィクション作家。早稲田大学探検部在籍時に書いた『幻獣ムベンベを追え』(集英社文庫)をきっかけに文筆活動を開始。「誰も行かないところへ行き、誰もやらないことをやり、それを面白おかしく書く」がモットー。アジア、アフリカなどの辺境地をテーマとしたノンフィクションのほか、東京を舞台にしたエッセイや小説も多数発表している。

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