高野聖 (集英社文庫 い 27-1)

著者 :
  • 集英社
3.77
  • (42)
  • (54)
  • (64)
  • (8)
  • (0)
本棚登録 : 617
感想 : 59
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (260ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087520347

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 夢を見ている時の、あり得ないことが起きているのにストンと受け入れてしまう感覚を思い出した。人界と幽界の境に存在するような女たちの妖しさが鮮烈。流れるような描写のせいか、情景がするする頭に浮かんでくるので、表題作『高野聖』の蛭の森のくだりではそれが効果的すぎてヒイイイイとなったり。

  • 怪奇小説家でコレが書けるのは次元が普通じゃない

  • 久しぶりに読みました。数十年ぶり(笑)。若い頃に読んだ時も面白い好みの題材の好みの耽美小説だったんですが、当時とちがうネットリ感が感じられてハマりました。まず『高野聖』前回(笑)読んだ時には幻想的で妖怪幽霊不思議もののイメージをうけたんですが、、これはしみじみとエロですねぇ。ただ、大変高潔上品に下品(どんなんよ)。なんというか、そこらへん葛藤があるわけですよ。主役のヤングな美僧と山の美女、障害をもつ男、おやじ(脇役/説明者)このバランスの良さに滝ですわ。滝てエロチシズム爆発です、だいたいにして修験や修行の触りになるほどの煩悩イメージですよって(あははは)。ともかく、馬に山美女が全裸で絡むシーン
     「大きな鼻面の正面にすっくと立った」美女がフィジカルに大きくなったような錯覚を覚える美僧、美女は「うっとりとなった有様、愛嬌も、嬌態も、世話らしい打ち解けたふうはとみに失せて、神か、魔かと」いう印象になる。そしてその美女は馬の前に立ち、着ていた単衣をくるくると円ろげて持って、「霞も纏わぬ」素っ裸になったとおもうと、「仰向けざまに身を翻し、妖気を籠めて朦朧とした月あかりに、前足の間に膚が挟まったと思うと、衣を脱して掻い取りながら下腹をつと潜って横に抜けて」出て来た。この後、動かなかった馬がしゃんしゃんと歩いて行くんですねぇ。なんともダークファンタジー的なえぐいほどの美しさ。この後、この馬や山美女についての謎解きが語られて、この馬と美女の絡みがさらに意味のあるものになるんですが、他にも蛭に吸われるところや、滝のところなんぞはアレですし、細かい1つ1つ、沢庵齧る1つにしてもなにやら怪しくてねぇ、これはもう、それはそれは凄まじいです。長くなるのでこの辺で。
    『高野聖』(明治33、新小説)の他は、『義血侠血』(明治27、読売新聞、スクリプト『滝の白糸』の原作)、『夜行巡査』『外科室』(明治28、文芸倶楽部)『眉かくしの霊』(大正13、苦楽)。

  • 「外科室」
    病院で、麻酔を嫌がるおばさんの話
    精神の純潔性を守ることの不可能について説くものだ
    心の秘密を知られたら生きていけない
    ということが、今よりずっと切実な問題としてあったのだろう

    「星あかり」
    天然自然、あるがままの世界から独立して
    一個の精神を隠し持つ人間のありよう
    その後ろめたさが、自然現象に投影されたとき
    理由のない恐怖へと変わるのか
    だけどまあ、そこに抑圧者が直接介在しないのならば
    ただのそそっかしさにすぎない

    「高野聖」
    セクハラを用いる抑圧者への敵意が共有されたとき
    プラトニック主義とフリーセックス主義は結託するだろう
    それはしかし、より大きな
    あるいはより陰惨な暴力を求める意志にもなりうる

    「眉かくしの霊」
    おばけを相手に、どっちが美人か勝負しようとしたら
    第三者に、本物のおばけと間違えられて殺されちゃったという
    悲しいお話です
    そもそもなんでそんなあほな勝負をせなあかんかったのか
    迷信を否定できない空気があったから、かもしれない
    ニッポン・イデオロギーか…

  • 懐かしい日本語に感嘆。使いならされていたはずの多くのことばにも再会し、今の貧しさ実感。

  • 新潮文庫版、角川文庫版もあったけど、装丁のきれいさと程よい注釈で集英社文庫版をチョイス(立ち読みしたときの印象では、新潮文庫版は注釈がうるさすぎた)。

    「声に出して読みたい日本語」とはまさにこのこと。 独特の文体に慣れさえすれば、そのリズムがとても心地よい。

    妖艶で危険な香りのする女性の描き方が最高。
    谷崎潤一郎に通じるものを感じる。
    女の相手が禁欲の修行僧ってのもいい。あの背徳感。

  • いやもう…すごい作品だ、これは。
    泉鏡花は『草迷宮』を最初に買ってページを開いたものの、「よ・・・よめねえ・・・」と断念して随分時間が経ってしまいました。こっちから読めば良かったんだな。

    もうね、作品の世界の、空気の湿度まで伝わってくるようですよ。森の中で肌に吸い付く無数の蛭のぬめり、月に照らされ艶やかに光る濡れた女の肌、そういう湿度を多分に含んだ鮮烈なイメージの断片が、感覚に直接訴えかけてくるように、頭から離れなくなる。いつの間にか文体の古めかしさなんて気にならなくなってました。

    一番好きな場面は白痴が唄った後の、僧侶と女とのやりとり。ここは逆に、作品を通して感じていた湿り気が蒸発していくかのような熱を感じたんですよね。単に自分がこみあげてただけかもしれませんが。

  • 高野の聖、聖にはとても思えないけど何か他の意味合いがあるのかな。
    夜な夜な香を焚きながら机に向かって書いてたのかと思うと侘しくなる内容

  • 幻想的な小説でした。
    山越えの描写が圧巻です。
    怖いだけでなく、美しい小説です。

    鹿児島大学 : ヤクシマザル

  • 美文とはこういうものなのだな、と納得。流れるように情景が頭の中に入ってくる。幻想的で良い

    収録作品:『外科室』『星あかり』『海の使者』『高野聖』『眉かくしの霊』

全59件中 11 - 20件を表示

著者プロフィール

1873(明治6)年〜1939(昭和14)年)、小説家。石川県金沢市下新町出身。
15歳のとき、尾崎紅葉『二人比丘尼色懺悔』に衝撃を受け、17歳で師事。
1893年、京都日出新聞にてデビュー作『冠弥左衛門』を連載。
1894年、父が逝去したことで経済的援助がなくなり、文筆一本で生計を立てる決意をし、『予備兵』『義血侠血』などを執筆。1895年に『夜行巡査』と『外科室』を発表。
脚気を患いながらも精力的に執筆を続け、小説『高野聖』(1900年)、『草迷宮』(1908年)、『由縁の女』(1919年)や戯曲『夜叉ヶ池』(1913年)、『天守物語』(1917年)など、数々の名作を残す。1939年9月、癌性肺腫瘍のため逝去。

「2023年 『処方秘箋  泉 鏡花 幻妖美譚傑作集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

泉鏡花の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
ヘミングウェイ
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×