- Amazon.co.jp ・本 (264ページ)
- / ISBN・EAN: 9784087714425
感想・レビュー・書評
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今回も透明な表現がたくさん出てきて、泣かされた。
廃校が決まった地方の高校、最後の卒業式。そこでの別れと旅立ちの物語。
・「好きでした」と、先生に想いを告げる作田さん、
・卒業式をサボり、幼馴染の旅立ちを見守る孝子、
・送辞で田所先輩への想いを告白する亜弓、
・卒業を機に寺田と別れる決意をする後藤さん、
・森崎の生の歌声を最後のライブで皆に聞かせるために、卒業ライブ本番でステージ衣装とメイク道具を隠す氷川さん、
・あすかとの別れを受け入れ、彼女の絵を描く正道、
・駿の死を受け入れるため、夜の校舎に忍び込むまなみと香川。
卒業式の日の早朝から深夜にかけて、少女たちは自分の周りにある別れを受け入れ、消化し、旅立とうとする。
高校生と呼ばれる、限られた時間。過ぎてから気づく、あの貴重だった時間。誰もが経験する別れと旅立ちを通して、彼らは大人になっていくのだ。そして、私たちも、大人になっていったのだ。
純粋に、まっすぐに、別れと旅立ちに向き合う彼らが、私はうらやましい。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
朝井リョウさんの本は【桐島、部活やめるってよ】に続いて2冊目。
実はこの【桐島、部活やめるってよ】の私の身勝手評価は☆☆2つ。
そんなわけでこの本を手にするときにはほんの少しためらいがあったりして・・・(笑)。
今年で廃校になる高校。
最後の卒業式は3月25日。
その最後の日を巡る連作短編集。
最後の日だからこそ勇気を振り絞る少女あり、未来に一歩踏み出す少女あり、思い出と決別する少女あり。
最後の「夜明けの中心」はまさに胸キュンで、すっかり女子高生の気分でした(汗)。
史上最年少の直木賞作家である朝井リョウさんは1989年生まれの24歳。
そんな彼が描く世界。
今まさに女子高生だったらツボだったと思うけれど…
なんせン十年も昔に女子高生を卒業していますから…
それでも読んでるうちに女子高生のころを懐かしく思い出したりしていました。
たまにはこんな世界に浸るのも悪くない!
なんて、上から目線で失礼しました(笑)。 -
私も今年度、高校を卒業します。最後に学校の図書館で借りた本の中の一冊です。全7編の短編集で、特に私が好きなのは『屋上は青』と『夜明けの中心』。明日には校舎が取り壊されてしまう中で卒業式を迎えた生徒たちの複雑な思いと高校生ならではの甘酸っぱさを感じさせる作品。映画も脚本が少し変わるようなので見てみたい!!
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高校の卒業式の日。
女子の視点で語られる短編集。
さわやかで切なく、痛みと悲しみもどこか甘やか。
成長していく時期の女の子の気持ちを、細やかに、髪の動きや息づかいまでありあり感じるほど、丁寧に描いています。
3月25日の卒業式。
来年度からは合同になるため、廃校に。
翌日には校舎の取り壊しが始まる前日という、特別に遅い日程になったのだ。
「エンドロールが始まる」
「作田さん、返却期限、また過ぎてますね」
それがいつもの会話。
図書室のカウンターにいる先生に、ほのかな思いを寄せている。
これまでのことを思い出す最後の日…
「屋上は青」
幼なじみの尚輝と屋上に来ている孝子。
待ち合わせのメールが来たので、卒業式をさぼることにしたのだ。
地元の国立に進む真面目な孝子は、さぼるのは初めて。
進学校で、ダンスの事務所に所属する尚輝は異色な存在。
中退してしまったのだが…
「在校生代表」
長い送辞を読む亜弓。
卒業式の催しで、照明をやっていた田所先輩に惹かれて、生徒会に参加。
成績が悪いふりをして勉強を教わったり、重ねた月日…
「寺田の足の甲はキャベツ」
女バスの部長の後藤。
男バスの寺田と付き合ってきたが…
「四拍子をもう一度」
卒業ライブで体育館にいる軽音部。
ヴィジュアル系バンドの衣装が盗まれてしまい…?
「ふたりの背景」
帰国子女のあすかは、H組の正道くんと美術部に入る。
クラスでは最初は仲の良かった女の子に無視されるようになり、浮いた存在だった。
「夜明けの中心」
卒業式も終わった夜、校舎に忍び込んだまなみ。
これが最後と思って、駿によく作ってあげたお弁当を作った…
それぞれ進路が分れていく高校生たち。
校舎に幽霊が出るという噂をモチーフに。
自分の高校時代には、こんな事は何もなかったな…とふと思いました。
2012年3月発行。 -
廃校が決まっている高校の、最後の卒業式。その一日を切り取ったお話しでした。
出会いと別れ、未来への希望や不安、色々な感情が入り混じった気持ちを思い出しました。一言でいえば、青春だね〜としみじみ思ってしまう私は、おばさんですね。
”あたしは知ってる。ずっとこういう日々が続けばいいって思っている時点で、続かない、ってわかってること。”
この文章が、青春時代の儚さをよく表現していて心に染みました。
みんな、この短い学生生活で色々と経験して、大人になっていくんですね。 -
校舎取り壊しが決まった高校の、最後の卒業式。どんな想いで「その日」を迎えるのか…それぞれの別れを描いた連作短編集は、1989年生まれの著者だからこそ描ける若々しさ、新鮮さに満ちている。同時に、自分も経験した「卒業」に対する寂しさ、新しいスタートに対する期待と不安、そんな色々な感情が入り混じった泣き笑いな3月を、懐かしく思い出した。
出だしの数話は、まあ、普通の青春小説(ちょっとおセンチすぎるのは男子目線で描く女子だからか?)と思ってましたが、連作短編だからこその構成の巧さが徐々に引き立ち始め、卒業式当日にあちこちで起こっているドラマがどんどんつながっていき、いつの間にか夢中でページを繰っていた。
そして、各話の起承転結の「転」が見事!!意外な展開に何度も驚かされた。若さゆえの悩みや迷いや痛みが丁寧に描かれ、若い女性作家が描く青春ものとも一味違う世界観。もっと彼の作品を読みたい、と思いました。
たまたまなんだけど、3月に読めてよかった。 -
高校生6人のそれぞれの卒業の物語
高校生活の終わりに何を思うか。
一つの終わりでもあり、一つの始まりでもある卒業式が舞台の作品から、一歩踏み出したい勇気が欲しい方におすすめしたい一冊。
高校に進学する、進学しないそれぞれの進んだ道にあるものを確かめてほしい。
卒業式の送辞と卒業ライブは、最後に何かやりたい、先輩に卒業してほしくないという思いが溢れ出てるのかなと感じた。確かに先輩が卒業するのは寂しいもんね。
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これはただの青春小説じゃないです。
思春期ならではの悩みを抱えた高校生が、それに向き合っていて。
その姿に感動させられます。
学生の頃に何かに悩むって、大事だなと思わされます。
舞台は廃校前日の高校。
そしてその日は卒業式の日でもあります。
朝井さんの本って、悩みは人を強くさせてくれるものだなと、悩むことを肯定できるのです。
高校生とか、自分より年下の主人公の本って
自分と比べてしまって嫉妬しちゃうんですけれど
朝井リョウさんの本はただのキラキラ物語じゃないのが、とても刺さる。
悩める人を前向きにさせる力があります!!!
私の中では万人受けする小説家ナンバーワンです。
自信持って人に勧めたいです。
あ、でも悩みとかなさそうな陽キャな人にはお勧めしないかも。多分共感できないと思います。。
とにかく面白かったです。
「寺田の足の甲はキャベツ」は特に好きでした。
この、すべてを言葉にしない二人のやりとりが高校生の割に大人びていて、切ないのに美しかったー。
在校生代表も好きです。最初、「こんなに面白い送辞ないぞ!これをパクることを勧めたい」と思っていたけれど、最後まで読んで、「これはこの子だけの送辞だな」と勇気を褒め称えました。
最終章は読み終えた時なぜか鳥肌がたちました。
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朝井リョウ初読。7つの短編集。すべての物語が瑞々しくて、ああ、高校生の頃に戻りたいなと思った。