僕たちはどう生きるか 言葉と思考のエコロジカルな転回

著者 :
  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087717570

作品紹介・あらすじ

未来はすでに僕を侵食し始めている。

未曾有のパンデミック、加速する気候変動……人類の自己破壊的な営みとともに、「日常」は崩壊しつつある。それでも流れを止めない「生命」とその多様な賑わいを、いかに受け容れ、次世代へと繋ごうか。

史上最年少で小林秀雄賞を受賞した若き知性が2020年春からの「混沌」と「生まれ変わり」を記録した、四季折々のドキュメント・エッセイ!

【目次】
はじめに
春 / STILL
夏 / Unheimlich
秋 / Pleasure
冬 / Alive
再び、春 /Play
おわりに

森田真生(もりた・まさお)
1985年生まれ。独立研究者。2020年、学び・教育・研究・遊びを融合する実験の場として京都に立ち上げた「鹿谷庵」を拠点に、「エコロジカルな転回」以後の言葉と生命の可能性を追究している。著書に『数学する身体』(2016年に小林秀雄賞を受賞)、『計算する生命』、絵本『アリになった数学者』、随筆集『数学の贈り物』、編著に岡潔著『数学する人生』がある。

感想・レビュー・書評

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  • それまで数学を生業としてきた著者が、コロナ禍で子どもと多くの時間を過ごし、自然に触れることで感じたことを瑞々しい言葉で語っている。現代社会の中では人は「個人」として、独立したものと錯覚しがちだが、見方を変えれば歴史や周囲の自然との関係のなかで作られた依存的存在としての人間の姿が見えてくる。それは決して人の価値を貶めるものではなく、むしろ人間に豊かさをもたらすような気さえする。

    以下の一文が特に印象的だったので書き記しておく。

    「だが、人間がいることによって、人間がいなければ考えられないような、豊かな生態系を構築できる。人間は環境から奪うだけの存在ではなく、生態系の拡張日貢献する生き物になれる。これを示す実例をいくつも作っていくことができれば、未来の子どもたちも心の底から「わたしは生きていてもいい」と思えるのではないか。」

  • パンデミック中でも自然豊かな生活をしている家族の日記のようで、ちょっとした親バカ風な内容かと思いましたが、本来あるべき人間らしさがお子さんが教えてくれる場面があり考えさせられました。例えば、お子さんが「地球上の人間がみんな死んだら次は何かな?恐竜?」真生さんが「道路や車がなくなってまったく違う風景だろうね」そしたらお子さんが「そしたら自由に歩けるね。アリさんとかカタツムリくんとかも」と語っています。
    こどもと散歩していると「あのみかん摂ってもいい?」「あのビワ摂ってもいい」と言われても「あれは他の誰かのものだから」と答えなければならない。せつないです。人間が人間らしく生きられないことをこんな小さいときから大人は伝えなくてはならない。地球は誰のもの、海は誰のもの、土は誰のもの、木や森は誰のもの、そして空気は誰のもの。かなり間違いを起こしている生き物は人類だったかもしれません。

  • 【コロナ、気候、危機感】
    2020年に始まるコロナ期の1年間を記録した日記型エッセイ。春、夏、秋、冬にはそれぞれテーマが付けられている。
    土づくり、協生農法など、著者がその時期に取り組んでいたことについて書かれていた。



    コロナは数年前になるけど、当時は自分たちがさまざまなものに依存していることを痛感した時期だったなーと改めて思い返す。

    このパンデミックで、土との距離を縮めた人も少なくないかもしれない。

    ティモシー・モートンの思想、「エコロジカルな自覚」について、この経験と照らし合わせて綴られる。

    人間の弱さを自覚すること。

    コロナが危機として私たちの脆弱性を露呈し、政治・社会経済的な変化を促す中で、気候危機に対する私たちの動きは鈍い。その違いについて、実際に感じるものかどうか、という点が述べられていた。

    現代の教育環境、社会環境が、私たちが感じるべきものを感じにくくしている、ひとつひとつユニークで一回きりの自然界を想像することが大事という。

    世代間の倫理にも触れる。

    著者の示す解は、正直簡単ではないと思った。
    100万種が数十年以内に絶滅するとされる。知っていたとしても、人間社会にも依存する私たち。そこに日常的にある危機を毎日管理しながら生きている。
    自然界は私たちに対する大規模な危機をもたらしうるけれど、人間社会での危機感は個人的で鋭くて、自分以外は誰も管理・緩和してくれない。

    一定の余裕がいるなー。


    それでも2024年の今現在、また私たちの多くは、私たちのさまざまな「依存先への自覚」を薄めているようにも感じる。

  • 『僕たちはどう生きるか』
    「STILLとは、単なる動きの欠如ではない。それは、生命の躍動をたたえた静かさである。」
    目の前で起きる急激な変化に対応するために、今いるこの場所を精緻に知ろうとする。生命の発する声に耳を傾ける豊かな営み。そんな祝福を僕も感じたい。
    #読了 #読書 #君羅文庫

  • はじまりはコロナ禍の社会やコロナ禍による生活スタイルの変化によって気がついた生態系の描写
    この描写を通して何を伝えたいんだろうと思い読み続けると筆者の日々の生活風景や考えを通して、社会がいつどう変わるか分からない中で自分は日々何を大切にし、どんな生活にしていきたいのかに気づかせてくれる本だった
    人生について考えたいとき、自己啓発本に手が伸びがちだが、自分では経験できない人の生活風景や自分の経験だけでは視野に入ってこない社会・自然・政治・・・などの世の中の動きを描く作品こそ、自分はどうありたいのかが見えてくるのかもしれないと新たな発見をさせてもらった

  • コロナ以降の世界をどのように生きていくべきか、
    筆者と同じ目線で共に考えることのできる作品。

    地球、植物、動物、人間。

    目に見えるもの、見えないもの。

    この世に存在するあらゆるものに気づかせてくれる。

  • パンデミック以降、やっと読みたかった本に出会えました。私はずっとこういう本を探してたんだと思います。

  • 展示図書 思考力フルスロットル!!! 
    「考えを学ぶ」「考えを鍛える」「考えを描く」図書
    【配架場所】 図・3F開架
    【請求記号】 914.6||MO
    【OPACへのリンク】
    https://opac.lib.tut.ac.jp/opac/volume/460694

  • 女子栄養大学図書館OPAC▼ https://opac.eiyo.ac.jp/detail?bbid=2000055870

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著者プロフィール

森田 真生(もりた・まさお):1985生。独立研究者。京都を拠点に研究・執筆の傍ら、ライブ活動を行っている。著書に『数学する身体』で小林秀雄賞受賞、『計算する生命』で第10回 河合隼雄学芸賞 受賞、ほかに『偶然の散歩』『僕たちはどう生きるのか』『数学の贈り物』『アリになった数学者』『数学する人生』などがある。

「2024年 『センス・オブ・ワンダー』 で使われていた紹介文から引用しています。」

森田真生の作品

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