初恋温泉

著者 :
  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087748154

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  • 温泉を舞台にした、5篇の恋愛短編集。

    すれ違い、離婚を考えている夫婦。よく喋る、結婚間近なカップル。ダブル不倫カップル。妻を誘ったが、断られた、保険外交官の男。高校生のカップル。

    五組の客が、温泉宿を訪れる。

    熱海温泉・蓬莱➡︎初恋温泉
    ランプの湯・青森、青荷温泉➡︎白雪温泉
    京都祇園・畑中➡︎ためらいの湯
    那須・二期倶楽部➡︎風来温泉
    黒川・南城苑➡︎純情温泉

    それぞれの宿を検索しながら読み進めていくと、まるで、その宿にいるような気分になれた。

    ゆっくり流れる時間。風が見える。凛と澄んだ空気。

    旅への憧れが膨らむ作品。

  • 本当に気が合う人と温泉に行きたい

  • 温泉を舞台にした短編集。
    一番はじめのは続きがとても気になった。

  • 各地の温泉を舞台に、男性目線で男女関係の機微を描いた小説で、全5話に関連はなく、さらっと読める。
    不倫男女の話もあるが、全体的に落ち着いたキャラクターばかりなのでイライラさせられることもなく読める。登場人物の男女問わずに、なんとなく共感できる部分があるからかもしれない。

    事業で成功した夫と離婚を切り出した妻、おしゃべり好きな夫婦と隣部屋の聾の男女、不倫に躊躇い合う男女、保険外交員の男が妻に暴力を奮ってしまい温泉で女と話す、高校生カップルの温泉旅行。
    エピソードのいくつかは特にオチはなくすーっと終わる感じではあるが、文章が綺麗なのか嫌な感じはせず、読後感もすーっとしている。男女問わず、周りの状況や自分の意思、いろんなものに影響されていろいろ考えてうまくいったりいかなかったり、人間って面倒な生き物ではあるなとじんわり読んだ。
    作家さんは確実に経費で各温泉に行ったんだろうな。

    追記。不倫カップルか保険外交員の話だったか忘れたが、「結婚とは嫁に隠れてアダルトビデオを見ることだ」と先輩が表現する場面があったが、村田沙耶香の「殺人出産」に収録されている「清潔な結婚」の症例でもあり、これは表には出てはこないけど、現代夫婦制度を揺がす、結構根強い問題なのかもしれない。

  • #2535-85-297

  • 目次
    ・初恋温泉
    ・白雪温泉
    ・ためらいの湯
    ・風来温泉
    ・純情温泉

    タイトルの柔らかさから、心温まる掌編を想像したのだけど、やっぱり吉田修一はそれだけですまなかった。
    もちろん「白雪温泉」の、ふすま一枚を隔てた隣室の客との無言の交流や、「純情温泉」の青臭さが甘やかな作品もあるが。

    「初恋温泉」と「風来温泉」は、設定が同じ。
    好きな女性にいいところだけを見せたい男性。
    これ、男性の理想かもね。
    だけど、好きだからこそ女性は、男性に無理をしてほしくないと思い、共に苦労を分け合いたいと思い、重荷になりたくはないと思う。

    そういう女性もいるだろうけど、「しあわせにしてくれるって言ったじゃん!」っていう女性も少なからずいると思う。
    で、いい振りこきの男性は、そういう女性と結婚したら、上手くいくのかしら?

    でも無理をしている時点で苦しいのでしょう?
    それを見ている妻の気持に気づく余裕すらないのでしょう?
    そうしたら、妻としては、してあげられることは一つしかないと思う。
    何が狂ったのだろうって、最初から進むべき方向が違っていたとしか言いようがない。

    特に「初恋温泉」の妻は、賢いからこそ自分の存在意義に悩んだのだと思う。
    そんな妻の思いに気づけないままだと、「風来温泉」みたいになる…かなあ…?
    『パレード』を彷彿させるラストの衝撃度でした。

  • 最後の高校生カップルの純情温泉、甘酸っぱい記憶が蘇ってくる。家内とは、行きたいとは思えない温泉、一人でサウナ付きの健康ランドでくつろぐのが一番な人生は、残念だ。

  • 吉田修一の短編集.個人的には表題にもなっている離婚話中の夫婦の話である初恋温泉が好き.基本男性目線で進んでいくのだが,女性から目線が物語の肝となす.こういう女性目線はどうやって理解し,小説にするんだろう.

  • 初恋の女性に突然離婚を切り出された夫、互いに夫/妻がありながら関係を持っている元同級生、初めての外泊に緊張気味の高校生・・・それぞれの事情で温泉にやって来る5組のカップルを描いた短編集。このところミステリのように起承転結のはっきりした作品が続いていたので、ある瞬間の感情だけをスナップショットのように描く手法が新鮮。物語の行き先を予想することなく、感じるままに読むのも心地良い。どのシーンもそれぞれ共感と余韻があって良かったが、最後の高校生のくすぐったい程の初々しさが好印象。おかげで読後感も良い。

  • 奥さんを愛しているのに、すれ違ってしまう夫婦が切ない。

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著者プロフィール

1968年長崎県生まれ。法政大学経営学部卒業。1997年『最後の息子』で「文學界新人賞」を受賞し、デビュー。2002年『パーク・ライフ』で「芥川賞」を受賞。07年『悪人』で「毎日出版文化賞」、10年『横道世之介』で「柴田錬三郎」、19年『国宝』で「芸術選奨文部科学大臣賞」「中央公論文芸賞」を受賞する。その他著書に、『パレード』『悪人』『さよなら渓谷』『路』『怒り』『森は知っている』『太陽は動かない』『湖の女たち』等がある。

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