- Amazon.co.jp ・本 (424ページ)
- / ISBN・EAN: 9784087754421
感想・レビュー・書評
-
4.3
詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
冒頭の「現在パート」があることによって、過去の「出会いのとき」に戻ってからの、威勢の良さやいろいろな出来事による気持ちの乱高下の裏に、うっすら通奏低音のような不安感を感じ続けて、どこか気を抜けない緊張感になっている。ラストはやっぱりそこにいくしかない展開。バカばっかりやって、熱くて真剣で、若さゆえにうまくできなくてもがいて、目指すものを追い求める。又吉直樹『火花』にちょっと似ている気がした。
-
強面でディスクレシアの登さんと万引きして脅された中坊の僕こと一真.二人でタッグを組んで小説家を目指すことになるその方法が事細かく書いてあり,手本とする小説なども含めてとても面白かった.また,登さんと祖母の間に通う情の深さが,哀しく美しかった.
-
ストーリー自体に新規性はないものの、色んな古今東西の小説が引用されており、興味深かった。
-
こんなに先を読みたくて仕方がなくなるのは何年、いや何十年ぶりだろう。先が気になって、トイレにも持ち込み、いやそれは嘘だけど、中1の時読んだ松本清張「点と線」か、高木彬光「白昼の死角」か、落合信彦か、高校に入って読んだ夢野久作「ドグラマグラ」以来だろうか、こんなにも夢中になって読んだのは。
彼らが分析する古今東西の名作。普段気にしたことがないけれど、面白い小説には何が必要なのか、すごく分かってくる。(例えば、読んでいると主人公の顔が想像できるのは良い小説で、顔が想像できないのはダメな小説だとか。) そして彼らが書き始めると、細かなディテールで、そして人物で、そしてプロットで、何が大切なのか、よーく見えてくる。「情熱大陸」で宮部みゆき特集をやったって分かりはしないような、小説家の苦労とか、テクニックの使い方など、かなり高度なリアリティをもってグイグイと迫ってくる。
キャラクターもいい。登のばあちゃんもいい、一真が好きになる美少女かすみもいい。
それだけじゃない。それが何だかずっと考えていた。そうだ。迫力だ。鬼気迫るような迫力だった。そこにあるのは。そしてドラマだ。登と一真の猛烈なスピードで駆け抜けるドラマだ。すさまじいドラマがそこにあった。
小説好きによる、小説好きのための、大傑作だった。作者の久保寺さんは、もうこんなすごい作品を二度と書けないのじゃないだろうか。 -
小説の中で小説が分析されて、小説が
産み出されていく不思議な構造の物語。
読むべき小説のガイドとしても使えるが
セレクションもかなり個性的。
物語を作るという行為、
本を読む楽しみ、
いろいろ考えさせられる。 -
面白かった。
分量多目な感じで読みごたえがあった。
初読みの作家さんでしたが、他も読んでみたいです。
物語中では作家になるにあたっていろいろな本が紹介?参考にされています。
読んだことのあるものもないものもありました。
いくつか読んでみたくなりました。
コンビが真面目な学生とヤンキーみたいなヤクザみたいな人の二人っていうのも
でこぼこが合うようで違いにハラハラするようでした。
小説ってすごいな、作るのほんとに大変だな、って感じました。 -
主人公のぼくは、私立を受けたが落ちて、区立のマンモス中学校に通っている2年生。成績はトップクラス。始業式早々、ぼくは、不良に強要されて駄菓子屋のたぐちで万引きをする。それを、店番をしていた20歳の登さんに見つかったしまう。
登さんは、本の朗読をぼくがすれば、万引きを見逃してくれると言う。登さんはディスレクシアなのに作家を目指していた。
ぼくが朗読して、登さんが聞く。二人で名作、時には駄作を研究しながら、登さんがアイデアを出し、ぼくが書いて、コンビで作家を目指していく。
朗読という形での名作の引用、公立図書館の司書や登さんやぼくの書評が、読んでいて楽しい。登さんの祖母とぼくの母、それからデビュー時の編集者のキャラが良い。私は、読み進めていくうちにー後半は特にーどこでコンビに破綻が訪れるのかとドキドキした。現実を見せつけるエンディングも良いと思う。
うちの中2男子の文芸部員におススメした。 -
最近は昔の名作を探すことが多く、若手作家の、ましてや単行本を買うことが滅多になくなった。この本は、「本の雑誌」で激賞されているのを読み、手にすることにした。
ヤンキーの登はディスレクシアで、読み書きができない。中2坊主の一真が沢山の小説を朗読して、登がそこから換骨奪胎した小説の筋を考え、一真が物語を紡いでいく。この凸凹コンビの奮闘ぶりと読んでいく小説の様々が面白い。
物語の中盤で早々とデビューを果たすのが予想外だったけど、話が面白くなってくるのは此処から。2作目の長編のプロット造り、これが本当に面白い。何度もの改稿で悩みまくる登と一真のやり取りが臨場感タップリ。ある筋を強調すると、肝心の本筋が弱くなったり、という過程は本当に小説家の苦労が見えるよう。
ところで、登の換骨奪胎ぶりから、ふと、この小説自体に元ネタがあるんじゃないかと考えた。実は、映画「ニュー・シネマ・パラダイス」がそれじゃないかと思っている。
この小説で紹介された「アルジャーノンに花束を」など、自分が読んでいた時のことを想い起ことも多かった。
ゴーゴリ「外套」は辻原登さんの本でも取り上げていたし、マーク・トウエィン「ハックルベリー・フィンの冒険」は内田樹さんが必読としていて、読まなきゃと思っているが。
あと、やっぱり横光利一「機械」、ドストエフスキー「罪と罰」「カラマーゾフの兄弟」も読まなきゃなあ