- Amazon.co.jp ・本 (424ページ)
- / ISBN・EAN: 9784087754421
感想・レビュー・書評
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久保寺健彦 「青少年のための小説入門」
小説を書くためにコンビを組んだ2人の青少年の成長の物語。語り手でもある一真が、自分の心情を代弁しながら、登とともに物語を進めるメタフィクション。
とても面白い。
登のヤンキー言葉が 文章にリズム感を与え、小畑健 のイラストが 登と一真の表情をイメージしやすくしている。言葉や身体的特徴など 真逆の2人のキャラクター設定も 物語の魅力になっている。
一真は秩序、登は混沌の象徴 (善と悪ではないと思う)。小説の何でもありの凄さとは、秩序と混沌を同一化できる凄さ。
弱肉強食のアウトローな世界で生きる 登が人間的成長を遂げたのは、小説を通して、ハンディキャップがあっても 助け合える秩序ある社会を感じたことによる。
最後の一文がエモーショナルに響く
「作家である限り、決してインチキなものは書けない。その約束は〜絶対のルールであり続ける。ぼくは そうしてこの小説を書いた」
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2020/05/15
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小説入門、とあるから
どんな本なのかなぁって思いましたが
入門編でした。
ヤンキーと中坊が織りなす
物語も面白いけど、
なにより
小説とは、ということについて
考えさせられたし、
読みづらそうな名作も
読んでみようと思わされました。
なんか悔しい。 -
星六つ。
久保寺健彦先生の作品は全て読んでいますが一番好きな作品です。(寡作な小説家なので新刊が待ち遠しいです。)
あまりに違いすぎる主人公二人が小説を共作するのですが、どちらが欠けても成り立たない大切な間柄となりました。結末は賛否両論あるかと思いますが、読後感は最高でした! -
識字障害を持つ青年と中学生が小説家を目指す話。ともかく小説家になると決めて、そのために古今東西の小説を読み漁る。と言っても、一人は識字障害なので、朗読して小説というものを研究するところから始まる。どうやったら面白い小説が書けるか、どうやったら賞が取れるか、何もかも違う二人が協力するところが面白い。小説に対する考察も面白いが、物語の筋としても波乱万丈で面白い。
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表紙が小畑健なので、小説版バクマンかと思いながら読みました。半分当たっており、半分ハズレ。作中に出てくる作品で横山利一を出してくるのが個人的には渋いと思ったり。
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この作品が☆3なのは面白くないからじゃなくて私にはハイレベル過ぎて手に負えないと思ったからだ。どうして手に負えないかと言うと、私が全然小説を好きじゃないからだ。彼らのように作品を読めたら面白いだろう、素敵だろうと思うにつけ、自分がそうではないことがわかるからどうにもやるせなく嫉みにも似た気持ちを感じてしまう。
近所の駄菓子屋たぐちで万引きを強要された中学2年生のいじめられっ子・一真は、ディスレクシアの青年・登とともに、小説家を目指すことになる。
もうこのプロットだけでご飯何杯も食べられそうなくらい面白い。
でも、話は私の想像の斜め上をどんどん加速して行って、臨界点に到達して、そして最初に戻った。
最後の一文を読み終えて、すぐさま冒頭に戻る。
冒頭からしばし読み進めて、登さんの言葉に行き当たり、ああ、ああ、と思う。
じんわりとした感慨が私を襲った。
私は大人の小説が苦手だ。辛いものやドロドロしたものは到底読めない。ノンフィクションならまだしも、フィクションならなおさら無理だ。と、思う。読んでないから分からないけれど。
冒頭3ページで登さんが死んだ。ああこれは、私が予測していた生温い青春小説ではないのだと気づく。気づけど、その仄暗い予感をひしひしと感じつつも、読むのを放棄することは出来なかった。
登さんのために小説の朗読をしながら、小説とは何かを考えていく二人の様子が面白い。
小説の知識が極端に少ないため、二人の思考にほとんど共感できない自分の浅さが恨めしい。
作中で紹介されていた作品の中に、一つだけ既読のものがあった。『アルジャーノンに花束を』だ。だからだろうか、『パパは透明人間』に関して行われた手法については、とても明確に思い描くことができた。
彼らが抽出した作品を知っていれば、ああ、と首肯することも多いだろう。
彼らがなぞった作品たちを読破したい思いに駆られるが、私はそれをしないだろうと思う。
「ホールデン」と私も言ってみたいので、『ライ麦畑でつかまえて』だけは死ぬまでに読んでみたい。
一真と登さんの関係は望ましく、特に登さんはとても魅力的な人物として描かれていたが、昨今ではどこにいってしまったのかと思われるような昭和の?不良の描写や暴力の描写に、馴れずにドン引きしてしまった。ところどころ時代を感じさせたのは、誰彼もが一真に構わず飲酒させるところだ。昨今ではそういったおおらかさ(?)はなくなっているように思う。
登さんはとても魅力的だけれど、結局はそういう世界で生きて亡くなったのだと考えると苦しい。
「換骨奪胎」
実際にそういった手法で作られる作品はあるだろうか。
私には知る由もない。
おばあさんの描写が美しい。人間が衰えて死にゆく様を描いているにも関わらず、彼女が彼女の理論で生き、筋を通し、めそめそと泣き、我儘を通し、やがて自分の周りに理想の世界を描き出し、世界を作り変えていく様は美しく迫力があった。それは私がいつもやりたいと思っている方法にほかならないからかもしれない。
登さんのおばあさんに向ける眼差しはいつも温かい。おばあさんと登さんの双方の存在があるからこそ、限りなく底辺に思える環境の中で、登さんはこんなふうになったんだなと思う。
一真が、おばあさんの譫妄やかすみの体験を通して、小説とは何かを導いていくさまは、私にも理解することができた。
登さんがいいが、久間さんもいい。良心のような人を見つけるとひどくホッとしてしまう。
私には、全体的に切ない内容の話だった。
やはり、述べられている作品を読んでみたいと思う。
島大八の『バルネラビリティ』も気になる。
決して読みたくはないが。 -
学習障害の一種のディスレクシアを患うヤンキー?の登と、ちょっと勉強の出来る真面目な一真がコンビを組んで小説を書く話。
小説が出来るまでのプロセスが面白く、また、登のおばあちゃん、編集者、かすみ 等の登場人物との絡みも大変面白かった。
事前の情報がなかったのも良かった。
装丁もいい!