絵はがきにされた少年

著者 :
  • 集英社
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本棚登録 : 92
感想 : 15
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  • Amazon.co.jp ・本 (264ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087813388

作品紹介・あらすじ

砂塵のように消えゆく運命の、名もなく貧しき人々が、生きた軌跡を、残した言葉を、筆者は温かい目で掬いあげ、揺らがない視点で記す。アフリカ特派員として、5年半を費やした取材の結晶。第3回開高健ノンフィクション賞受賞作。

感想・レビュー・書評

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  • ハゲタカと少女の写真をとったカメラマンのノンフィクションだと思ったら全然違った。
    「お前は自分のことしか考えてない」と
    ニャウォ氏とガブリエル老、ダ・シルベラ老の話に惹かれた。
    ダ・シルベラ老と商魂逞しいオランド氏の顔つきの違いがいいな。

  • アフリカ特派員だった新聞記者によるアフリカ・レポート。ちょっと、ナイーブなところが好感がもてるが、特派員っていっても、お客さんであることがよくわかる本でもある。

  • 良いと感じる文章を読むと、文章を書きたくなります。この本を読むと、私が出会ってきた人たちの話を、自分でも綴りたくなります。

    「アフリカ」に住む人々が直面する危険・貧しさ・植民地支配・人生の節目・人種問題・外国人の目線——そういったものの等身大を、ひとに寄り添い、自身に葛藤しながら伝える作品。
    印象的な文章を抜き書きしておきます。

    「先進国の首脳会議などの会場を取り囲み、「貧困解消、貧富の格差の是正」を叫ぶ若者たちがいる、こうしたエネルギーを見ていると、一年でいいからアフリカに行って自分の暮らしを打ち立ててみたらいいと思う。一人のアフリカ人でもいい。自分が親しくなったたった一人でいい。貧しさから人を救い出す、人を向上させるというのがどれほどのことで、どれほど自分自身を傷つけることなのか、きっとわかるはずだ。……一般論を語るのはその後でいい。いや、経験してみれば、きっと、多くを語らなくなる。」

    J.M.クッツェーもセットで読みたい。

  • 自分の持っているイメージと現実との齟齬、助けることと助けられること、色々考えさせられた。
    淡々と書かれているけれど、著者の熱い気持ちが伝わってくる。

  • 最初のほうをちょっとだけ読んだ。
    これはひどい。
    扱われる題材が気になるだけに見方のひどさが腹立たしい。

    たとえば「ハゲワシと少女」でピュリッツァー賞を受賞後に非難をあびて自殺したカメラマンのドラマチックな人生の、ドラマチックな消費のされかたに疑問を持って取材する・・・にしてはあまりにドラマを作りすぎてる。
    自分の好きなドラマに読み替えているだけだ。

    自殺したカメラマンの友人で自身も南アフリカのカメラマンである白人(アフリカーナー)の語りはまるっきりディアスポラ(著者の息子も同じような感覚を得るかもしれない)なのに、「白人」「黒人」で「アフリカ人」という軸でしか見ようとしない。

    自分の息子のシーンは文学青年崩れのごとき文章も気色悪いけど、距離感がなお気持ち悪い。
    自分はまるで傍観者みたいだ。「子供」がその環境に「おかれた」んじゃなくて、お前が連れまわしてるんだろうが。

    自分探し系のオナニーが気色悪いのは、他人をネタに使うからだ。
    「じゃーなりすと」ってこういう人多いよな。

  • ハゲワシの前にいる飢えた子どもの写真は記憶にある。子供ながらに恐怖を感じた。
    人種の差別をうける魂の痛み。南アフリカでは10秒に一人がレイプされている。
    ツチとフツの違い?そりゃ、神様だけが知っている。

  • 人種差別。それが実際に行われているアフリカの地では、受け取り方が違うのかもしれない。また、争いの中の差別には外から見たときに、どう違うのかがわからない場合がある。
    アフリカに住む人たちの深い言葉には考えさせられる部分がたくさんある。

  • 日本人が知ることのない、南部アフリカのノンフィクションである。

    この本を読むまで、いや、読んだ後もアフリカについて理解出来ない自分がいる。

    それほどまでにアフリカは理解出来ない。差別そのものを理解出来ない。

    人間同士が互いに憎みあう世界。

    多数の民族の集まりそこで暮らす人々。何が幸せで何が不幸せか。

    カメラマンの自殺。賞を取った後で。麻薬に溺れていたとも。そこまで異常な国。

    子供はストレートに感情をだす。何もわからないのではなく何かを感じつつストレートに表現する。

    日本人なのに南アフリカにいる子供。皮膚の色の違う人達と暮らす中、自然と差別してしまう。

    絵はがきにされた少年はイギリス人を恨むことなくむしろ誇りにしている。

    宗主国と植民地の関係。自分には到底理解出来ないがひとつだけ分かることがある。

    それはみんな生きているということ。どのような環境、境遇であろうとも人々は働き、生きている。仕事を誇りにしている。自分の境遇が悪いとか不満をもらしてはいない。

    むしろ誇りに思っている。見習わなければならない。

    今の自分には辛いがこれが現実。受け入れなければならない。

    前向きに生きていこう。それがこの本を読んだ自分の義務な気がする。

  • 南アフリカは遠いくにだが、複雑なことがわかった。収納なんか考えない人生が本当だと思う

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著者プロフィール

藤原章生(ふじわら・あきお)1961年、福島県いわき市生まれ、東京育ち。北海道大工学部卒後、エンジニアを経て89年より毎日新聞記者として長野、南アフリカ、メキシコ、イタリア、福島、東京に駐在。地誌、戦場、人物ルポルタージュ、世相、時代論を得意とする。本書で2005年、開高健ノンフィクション賞受賞。主著に「ガルシア=マルケスに葬られた女」「ギリシャ危機の真実」「資本主義の『終わりの始まり』」「湯川博士、原爆投下を知っていたのですか」。

「2020年 『新版 絵はがきにされた少年』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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