PLUTO 1 (1) 【豪華版】 ビッグコミックススペシャル

  • 小学館
3.85
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本棚登録 : 399
感想 : 69
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  • Amazon.co.jp ・マンガ (388ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784091877567

作品紹介・あらすじ

▼第1話/モンブランの巻▼第2話/ゲジヒトの巻▼第3話/ブラウ1589の巻▼第4~6話/ノース2号の巻(前・中・後編)▼第7話/ブランドの巻●主な登場人物/ゲジヒト(ユーロポール所属の特別捜査官。人間そっくりの外見を持つロボット)●あらすじ/ある夜、スイス林野庁所属のロボット・モンブランが、山火事現場でバラバラの破片となって発見された。翌朝には、別の場所でロボット法擁護団体の幹部・ランケも遺体で見つかり、双方の現場を検証した捜査官・ゲジヒトは、二つの事件が同一犯のロボットによるものと考え、追及を開始する(第1話)。●本巻の特徴/巨匠・手塚治虫の代表作に、現代を代表するコミック作家・浦沢直樹が挑む! 『鉄腕アトム』の名作エピソード「地上最大のロボット」をモチーフにした話題作が、満を持して単行本化!! 雑誌掲載時と同じB5判の"豪華版"には、普及版にも収録されているあとがきに加え、手塚眞・浦沢直樹両氏の対談を追加。さらに別冊付録には、手塚治虫原作の「地上最大のロボット」も完全収録!!

感想・レビュー・書評

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  • 冒頭から、どんどん、どんどん、引き込まれていく・・・・。漫画の、ストーリーの、画の、引力がものすごい。ひっぱられてぐらぐらするように、頭の中の常識が揺らいでしまう。
    ヒトとはなんだったろうか?とおもってしまうと、もう、いままでの己でいられなくなった。

  • ちゃんと原作を知ってから読めばよかったかなあと思うけど話の流れがとても面白くて、特に一巻は何度読んだ。

  • めちゃくちゃ面白かった。映画化されないかなー!
    手塚治虫の原作を極限まで掘り下げて浦沢直樹の漫画として昇華させてる。本当に面白かった。

  • 機械の力を借りて物が見えたとしても、それはニセモノだ。そんなものは必要ない。私の記憶の中に本物の風景がある。機械が見る夢。ブレードランナーだったか。アトムをモチーフに物語を再構成する。大胆でチャレンジャーだなと思ったが。浦沢直樹の描く物語は気になる。そういう世代。ではある。

  • 『鉄腕アトム』の「地上最大のロボット」をイラク戦争への皮肉を織り込みつつサスペンスにまで昇華させた名作。ところどころに登場する手塚ファンへのサービスが嬉しい。何だかんだで浦沢直樹は絵がうますぎる。手塚作品の登場人物が、面影を残しつつ浦沢化しているところはもはや芸術。ロボットや未来の街のデザインも芸術。

    物語の構成上仕方がないことだけれども、どんどんロボットが殺されていく展開は悲しい。良質の映画を観終わった後のようなカタルシスあり。

  • 豪華版の1巻には手塚先生が書いたオリジナルがセットだったので思わず買いました

  • 浦沢版アトムを読むことで
    手塚作品の素晴らしさの再確認。
    浦沢氏のイマジネーションと絵の上手さに脱帽。
    しかし、絵は好みではない。ゴメンチャイ

    ( ・_ゝ・)<心あるロボットたちの生きざま

  • 衣鉢を継いだか。

    浦沢直樹が敬意を持って翻案し直したアトム。ゲジヒト目線も新鮮なら、6〜8頭身になり、大友克洋以降の、細かい背景で加えられ、浦沢流の世界観が加味された手塚漫画は、原作の魅力を損なうことなく、重厚に展開される。

    手塚眞の「浦沢作品」の要望は大正解。

    2004年、読了。

  • 面白かった。

  •  人権というのはもとい近代市民社会の成立に際して市民が持つ権利すなわち市民権として登場した。フランス革命に際して起草された人権宣言、すなわち「人間及び市民の権利宣言」(Declaration des Droits de l'Homme et du Citoyen)では「人は、自由、かつ、権利において平等なものとして生まれ、生存する。社会的差別は、共同の利益に基づくものでなければ、設けられない。」(第一条)と人間が平等の存在であることを宣言した。
     その根本思想は自然法と自然権思想であるとされているが、この思想そのものがフランス革命によってかちとられたものであるということを忘れてはならないだろう。
     かつてある憲法学者から聞いたことであるが、この人権宣言にある人間=Hommeは人類すべてを指すものではないということである。彼によるとHommeとは白人の男性に限られていたというのだ。Citoyenはさらに一定の納税者であるというような資格制限がついてくる。つまりHommeないしはCitoyenにはなりえなかった黒人(をはじめとする有色人種)や女性には人権はなかったということなのだ。それをひとつひとつ勝ち取っていくことで人権はわれわれ共有のものになったという。
     実際、日本国憲法においてはこのことが明確に記されている。「この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない。」(第十二条)とあり、ほうっておくとすぐにおびやかされる性質のものなのだというのだ。確かに大日本帝国憲法では我々は「臣民」であり、臣民としての制限の中でしか権利は持たなかったし、女性に至っては戦後まで公民権すら与えられていなかったのである。敗戦という天皇制権力の崩壊ははからずもわれわれに人権という宝物を与えてくれた。問題はいかにそれを保持するか、である。われわれには不断の努力という任務が課せられているが、ややもすると自らそれを怠っていることがある。少なくとも人権・同和教育は不断の努力の一端くらいは担っているのだと自負したいところである。
     で、本書『PLUTO』のことだが、著者名からわかるようにこれは漫画である。しかもそこに手塚治虫の名がある。手塚治虫といえば日本漫画界の超カリスマであるが、周知の通り手塚はとうに鬼籍に入っている。にもかかわらず、著者として名を並べているのはなぜか。仔細に調べると長崎尚志プロデュース、手塚真監修、手塚プロダクション協力というプロジェクトの中で生まれた作品であるということがわかってくる。おお、ただごとではないのだ。
     この作品は手塚治虫の生み出した代表的キャラである鉄腕アトムが二〇〇三年四月に生誕していたという話から浦沢直樹が鉄腕アトムをモチーフにした作品を作りたいということから始まった企画であったという。ということで浦沢がチャレンジしたのが『地上最大のロボット』という作品だ。
     鉄腕アトムの世界ではロボットは限りなく人間に近い存在となってくる。殊に感情を持つとか、悩んだり苦しんだりするとか、ロボットが人間らしさを増してくる時代のロボットとは何かが問題となってくる。手塚はそうしたロボットの人格を問題とすることで人間そのものについて考えようとしていたのではないか。まさしく感情や理性を持ち、人間に非常に近くなったロボットの存在は人権を勝ち取ってきたわれわれの近代史と符合するのである。
     下敷きになっている『地上最大のロボット』は感情や理性を持ったロボットが人間の命令通りにしか行動できないという残酷な宿命と葛藤するさまを描いたものである。それを浦沢直樹はみごとに浦沢的世界で描くことに成功した。下敷きとなった『地上最大のロボット』では登場するロボットはアトムをはじめとして人間の奉仕者として描かれているとともに、闘うロボットの間に微妙な友情であるとか、悲しみや不安といった感情を持つなど非常に人間に近い存在となっている。さらに手塚治虫は理性とか倫理などもロボットに与えようとしていた。そこにアトムの悲劇というものの芽が吹き出していたのだ。『地上最大のロボット』では人間もどきのロボットたちの殺し合いの結果、悪役として登場するスルタンに(換言すれば読者である子どもたちに)闘いの愚かさをさとすのである。しかも人間もどきのロボットによって。この作品の後味の悪さについての稲葉振一郎のコメントは興味深いので一読をお勧めする(「傲慢の「罪」をこえるもの」『専修大学出版局通信』(2000年12月)ウェブ上でも読めるhttp://www.sendai-sentyuri.co.jp/sup/inaba.html)。
     手塚治虫のこの作品では人間を諫めるために「人間もどき」のロボットたちがいくつもの命を捨てていく。あくまでロボットは人間の奉仕者として位置づけられていたことが後味の悪さを呼んだのかもしれない。
     浦沢はこの手塚治虫の作品を下敷きに新しい設定をしている。この「人間もどき」のロボットたちに国際ロボット法によって「ロボットに自由で平等な権利を与えた」(02「Act.8鉄腕アトムの巻」)のである。このことによって浦沢作品の中のロボットたちは人間及び市民の権利宣言のもとでの黒人や女性たちのように、はたまた日本国憲法下の日本国民のように人権を持つ存在となったのである。とはいえ従来からの人間たちの中には露骨な差別意識を持つものもいるし、英雄的なロボットたちに惜しみない拍手を送る者もいる(マイケル・ジョーダンやジネディーヌ・ジダンに対するように)。まさに現代のわれわれの社会とよく似た構図がここに登場するのだ。そしてかつて人権を持たされていなかった被差別民衆や、被抑圧民族を国際ロボット法下のロボットと重ね合わせろ、と短絡的に言いたいのではない。それは帝国臣民であったわれわれ自身のことでもある。
     浦沢はイラク戦争を取り込んでこのストーリーを展開させる。そこに現代社会への揶揄を読み取ることができよう。第39次中央アジア紛争と本編中では描かれる戦争の彼らはヒーローであった。そこにはロボットがロボットを破壊することで人間の欲に奉仕していく残虐さが示される。手塚治虫が『地上最大のロボット』で提示した枠組みである。しかし、ロボットに人権を与えることで、われわれはイラク戦争のほんとうの加害者と被害者を読み取ることができるのだ。浦沢直樹は本書によって手塚治虫を超えようとしているのだ。
     周知のように浦沢直樹は『YAWARA!』、『MASTERキートン』、『MONSTER』といった作品で知られる漫画家である。彼の描く世界には常に国際的な臭いが漂っているとかねてから思っていたが、もとより国際的な物語として作られていた『地上最大のロボット』のリメイクには恰好の作家であったと言える。ちなみに本作品で浦沢は第9回手塚治虫文化賞を受賞した。彼は既に『MONSTER』によって第3回の手塚治虫文化賞を受賞しているからなんと前代未聞の二度目の受賞となる。
     

    ☆☆☆☆ ついでに申し添えておくが、ここでは豪華版を紹介した。しかし、別に廉価版が五五〇円で刊行されているので、貧しき民はそちらをどうぞ。但し、豪華版の場合、01にはなんと手塚治虫の原作『地上最大のロボット』の復刻版がまるまるついているし、02にはあのマーブルチョコレートを模したケース入りの「アトムシール」と「PLUTOシール」がついてくる。絶対のお買い得だ。

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