ミノタウロスの皿: 藤子・F・不二雄[異色短編集] 1 (1) (小学館文庫 ふA 1)
- 小学館 (1995年7月15日発売)
- Amazon.co.jp ・マンガ (291ページ)
- / ISBN・EAN: 9784091920614
作品紹介・あらすじ
SF的手法を駆使して現代世相を痛烈に風刺した異色短編集!
▼第1話/オヤジ・ロック▼第2話/じじぬき▼第3話/自分会議▼第4話/間引き▼第5話/3万3千平米▼第6話/劇画・オバQ▼第7話/ドジ田ドジ郎の幸運▼第8話/T・Mは絶対に▼第9話/ミノタウロスの皿▼第10話/一千年後の再会▼第11話/ヒョンヒョロ▼第12話/わが子・スーパーマン▼第13話/コロリころげた木の根っ子▼エッセイ・北村想 ●登場人物/オレ(故障した宇宙船の乗組員。地球型の惑星に不時着する)。ミノア(“本年度ミノタウロスの皿”の栄誉に輝く少女)。(第9話) ●あらすじ/同居する息子夫婦と孫から、あからさまに邪険に扱われ、家での居場所もない老人の穴黒厳三は、そんな家族へのあてつけに雨の中、釣りに出かけてそのまま死んでしまう。やってきた天国で、亡き妻と再会した厳三だったが、「下界テレビ」で自分の通夜を見ているうちに家族のことが恋しくなり……(第2話)。▼乗っていた惑星間航行ロケットが故障し、生き残ったのはオレ1人。水、食料ともに底をついたが、救助艇がくるのは23日後だという。やっとの思いで不時着した地球型の惑星。そこには低い段階ながらも文明があり、ミノアというかわい子ちゃんとも出会うことができた。ところが、その文明というのが実は……(第9話)。▼遅筆で知られる小説家・大和のもとへ、原稿の催促にやってきた新米編集者の西村。外で偶然に出会った2人だったが、大和の家に着くなり、大和は妻を殴り飛ばした! 実は、大和は編集者の間でもうわさの家庭内暴君だったのだ。そして大和の妻は何もいわずに、それに耐えているのだったが……(第13話)。
感想・レビュー・書評
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藤子F不二雄さんの作品、ドラえもん以外のものは初めて読んだ。多くのファンがいることに納得の作品でした。特に表題作の「ミノタウロスの皿」が印象に残った。人間の業の深さよ、、。
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順番逆だけど「気楽にやろうよ」から興味を持って購入した一冊。やっぱりSFショートは面白い!
どうしても星新一が浮かんでしまうけど、この最後にヒヤっとするようなオチがいい。藤子不二雄Aとは違って、ギャンブルとか麻雀みたいなブラックさというよりは、SFが近くて、タイムマシンとか魔法みたいなテーマで皮肉ったような感じ。おばQの原作を知らないのが自分でも残念。
個人的に印象的だったのは以下。
・自分会議:いろんな年の自分が集まって会議→喧嘩、一番幼い自分が飛び降り、、
・間引き:人類の調節機能で愛がなくなる?
・ミノタウロスの皿:人間と家畜の関係、食べるって殺すこと。泣きながらステーキを頬張る主人公がまた切ない。
・一千年後の再開:千光年先の宇宙へ向かったジョウと千年間のタイムスリップで相対的に移動していたウバが再開。ウラシマ効果:相対性理論、光速で移動すると時間がゆっくりになる。
・ヒョンヒョロ:こええ、、 -
表題作について。家畜と支配者の立場が逆転したらどうなるか、を残酷なまでにありありと描いている衝撃的な内容。と、いうより、"残酷"という定義すら揺るがしかねない、恐ろしいまでに真理に迫っている。
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表題作「ミノタウロスの皿」が霞むほどに素晴らしいラインナップ。「コロリころげた木の根っ子」のフツフツとしたリベンジもの(スカッとはしない)。「劇画オバQ」のキャッチーさと切なさ。「ヒョンヒョロ」のわかりやすいブラックさも大好き。
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不気味な雰囲気漂う作品でした。
ドラえもんを優しいけど優しいだけじゃない作品と言うならば、これはその優しさも削ぎ落とされて見ないように避けてる面をユーモアたっぷりに突きつけてくる
ほんとにおすすめです -
大人向けの、今いる世界からズレてしまったような、不思議な感覚になる作品集。少し怖い作品もある。それでも、何の非もない人物が不幸になるような作品はないところに、F先生の人柄が現れていると思う。
「劇画オバQ」を読むと、一瞬でも子供の頃の夢を思い出す正ちゃんと、終始現実的で正ちゃんを連れ戻す奥さんとの対比が切ない…
(私は主婦なので)奥さんは夢を見ることも許されないのか…と思ったけど、恐ろしいことに気づいた。
「まびき」「T・Mは絶対に」「ゴロリ転がる木の根っこ」に共通する女の夢。それは夫が死ぬこと。経済的な心配なく、ろくでなしの夫だけが消えること、それが妻の最大の夢なのか…?と思った。思いたくないけど。まあ、夫がハズレだったら、夢見る気持ちは分かる。
あと「ヒョンヒョロ」はなかなか怖い。常識的な判断が通じない恐怖。 -
富山県高岡市出身
劇画Qちゃん
昔BSのマンガ夜話だったかで放送されたミノタウルスの皿が強烈な印象を残していて、いつか手に取りたいと思っていた本。
コメント欄にあった 不穏 という言葉がしっくり。人間の業。
ころりころげた木の根っこ
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何十年も前に文化相対主義の考え方をここまで鮮烈に描いた表題作『ミノタウロスの皿』はさることながら、『ヒョンヒョロ』や『コロリころげた木の根っ子』のような脇を固める作品も風化することを知らない。