- Amazon.co.jp ・本 (258ページ)
- / ISBN・EAN: 9784093798129
感想・レビュー・書評
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キーワードは「心理経済学」
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自分のグッドライフを実現させる為に、国に期待するのではなく、自分から考えて、動いていく事が大事。
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初めて読んだ大前氏の本。「木を見て森を見ず」にならないために今後も大前氏の著書は読むことにしようと思った。
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大前研一さんが2010年に執筆した書籍であり、斬新な意見というよりは経営の観点から見た妥当な政策提言書という印象でしょうか。
この政策提言は、頭の切れる人間でかつ日頃の鍛錬を怠らない人間であれば、理想として持っているものばかりしょう。問題はむしろ、これをどうやったら行えるか、ですか。日本に限らず、既得権益、固定観念、癒着構造を分解するのがどれ程に困難であるか…。
まぁタイトル見ながら内容をちょろっとまとめますかね。
まず、現在の経済学は人間のミクロな心理を加味していないため機能しない。既にマクロ経済学や景気循環論は使い物にならず、税金を使った官の能動的な経済政策から、長期的スパンでは税金を動員しなくて済むような、民の見えざる手(民間企業などの能動的な動き)をアクチベートする政策が求められる。ということですね。いやその通りでしょう。経済学のこの側面に関しては随分前から議論になっています。そもそも…と語ると長いのでやめます。
<国内の需要を発掘する>
日本の国民は莫大な金融資産を持っているくせに、全く使おうとしない。節約・倹約が美徳とされており、蓄積され使われない金銭が物凄い量に達している。ここに鉱山が存在する。企業は顧客が何を望んでいるか理解しなくてはならない。彼らの真に望むものを提供してやることがビジネスの基本であり、価格と価値の違いを理解する必要がある。また現代では主戦場がネットの世界に切り替わっており、積極的に進出する必要がある。
<国外の需要を発掘する>
マインドセットを変え、海外に積極的に進出する。人材の教育システムを強化し、アジアマーケットのほか、ロシアや新規EU加盟国なども狙うべきである。カントリーリスクなど時代遅れの概念だ。ロシア、東南アジアとの積極的な同盟は非常に重要です。強く同意します。そのほかはもう散々議論になっているので触れないことにします。
<グランドデザイン>
人材力と地方分権が日本を繁栄させる鍵になるのは明らかであり、日本の学生をこのままの教育制度で育てていたら日本は確実に衰退する。長期的観点から、リーダーシップを発揮出来る人材の育成、国外への長期送り出し、英語、ITなどの教育が必要である。詰め込み教育は必ずしも悪ではなく、例えば中国・韓国は恐ろしいレベルで詰め込み教育を行っている。反対に欧米では考えさせる、ディスカッション中心の教育であり、どっちつかずの日本の教育こそが衰退の原因と成る。
地方分権に関しては地方に財源・権限を開放し、地方自治体が税金のバラマキに頼ることなく、リターンを考慮に入れた開発計画などを積極的に行えるようにすべきである。また、人間の必要ない仕事は全てITに置き換え、官僚は権限を移譲すべきである。
これもその通りでしょう。そもそも財源は有限なのにばらまいて使っている現状がおかしいのです。地方に権限・財源を委譲し、地方自治体はその財源の中で成長戦略を練るべきでしょう。
まぁそんな当然と言えば当然の話しです。どのようにこれを成し遂げるか、難しいですね。 -
巷には多くの日本経済を解説した本が出ていますが、技術者出身でコンサルタントを長年勤めてきた大前氏による解説はひと味違うと思います。
日本以外についての経済動向に触れられていますが、現地取材を基にした(と私は思っています)内容は、日本以外を担当している私にとっても参考になります。
小泉氏が進めてきた規制緩和の流れが、首相が変わるたびに、その勢いが弱くなってきて逆流し始めている感もありますが、どんな理由があるにせよ、10年以上に渡って税収のベースとなる名目GDPが増えていないのは変だと思いますので、日本が本当に元気を取り戻して欲しいと思いました。
以下は気になったポイントです。
・アメリカは年金不足で貯蓄する人が増えたため、貯蓄率は1%前後から5%にまで急増、金額にして40兆円ものお金が市場から消えて貯蓄に回っている(p16)
・リーマンショックから立ち直るための術を教えた経済学者はおらず、マクロ経済学者は未来を予測できない、それは限られた条件下での閉鎖的な理論だから(p20)
・外資の傘下に入ったイギリス企業の中でも、外国人経営者が無理な経営を押し付けた企業は失敗し、イギリス人の社員が中心になって立て直した企業のみ生き残った(p24)
・日本における新車への買い替え促進策は、「登録から13年以上を廃車にして、2010年燃費基準の新車に買い換えた場合」という条件つきである、登録13年以上の車は全体の1割程度(p52)
・消費者の間に所得差が広がったというよりも、一人ひとりの消費シーンにおいて、中間がなくなって、高級と格安の二極化が進んでいる(p55)
・日本の標準家庭は、すべての年代において単身世帯となった、ところが大半のスーパーはいまだに「夫婦と子供から成る世帯」を前提として商品を売っている(p68)
・毎日買うような商品は値引きすればありがたみが浸透するが、購買サイクルが数年以上のものは、本当によいものを妥当な値段で提供して満足度を高めるべき(p70)
・価値を変えずに価格を下げても商品は売れない、価値を変えれば価格を下げなくても売れる(p72)
・認知された価値を維持するためには、デザイン・物語・調和・共感・遊び心・生きがい、という6つの右脳型センスを刺激すべき(p76)
・ファッションのネット通販サイト「ZOZOTOWN」は、CGを駆使してリアル店舗に行ったような感覚でお客が買い物を楽しめる(p84)・「超一品.com」は、一日一品しか売らない、価格は割安だが選りすぐりの物を推奨してくる(p90)
・中国は内需主導の第2ステージに入ったが、外国企業は中国国内にしっかりと根を下ろす形では入っていない、沿岸くの保税区に進出して、部品や機械を持ち込み労働者を使って生産して輸出していただけ、人材育成をしている「加ト吉」の例あり(p106、113)
・中国は田舎に7億人もの労働者がいるものの、タイ・ベトナム等のASEAN諸国のほうが労働コストで優位になった、10年間で賃金あがらず現地通貨が下がったから(p115)
・インドネシアのユドノヨ大統領は、官僚の給料を一気に3倍に上げて、官僚の腐敗を少なくした(p116)
・核兵器のウランはもともと濃縮度が高いので、MOX燃料に再利用するには最適、その埋蔵量は100年以上はある(p126)
・増税せずに日本の民間のお金だけで日本経済を立て直すことは可能だが、それは自民党を支えてきた官僚組織の権益を奪うことになるので、自民党はしてこなかった(p160)
・今まで封印されてきた「市街化調整区域」「湾岸部」「容積率」の3つが、国民にグッドライフを届けるという目的に対する戦略的自由度である(p169)
・韓国の好調は今後10年も続かない、韓国産業はコツコツと積み上げた領域が殆ど無く、衰退したアメリカの産業と同じ体質がある、さらに少子化は1,19で日本より小さい(p182)
・ビジネスウィークによれば、アメリカの就職率は、24%、日本:91%、中国:70%、イギリス:15%である(p193)
・生産性を向上させてきた企業は、要員を考える場合、整数論ではなく、少数論でやってきた、例として、ある仕事を20人でやっていたものを12人でするにはどうすれば良いか(p206)
・アウトドアとインドア、そして海外という3つのカテゴリーで、自分一人でできること、仲間を募ってやることを織りまぜて、自分が楽しいと思える趣味を持つことが大事(p225)
・向上心を持ち続けるには、自分なりの目標を少し高めに設定して、それを達成しようとすることが重要(p226)
2011/1/10作成 -
家の古本を処分する祭に父から「ひまなら読んどけ」って言ってもらった本。
国際経済っぽいけど基本的には経営学の本なのかな?てかタイトル「民の見えざる手」に関する記述って第1章くらいであとはなんか筆者の自己満だったきが・・・。経済学的 point of view ではそんなに面白くはなかった。ただこれからは東欧が来るとかそーいう話は興味深かった。まあおじさん世代ウケはいいかもね。夢見させてくれる感じだし。 -
大前研一著「民の見えざる手」小学館(2010)
*この先、景気は上向きになる要素はない。なぜなら、少子高齢化が加速する日本は労働力人口が毎年40万人ずつ減少しており、国内市場の縮小と企業の海外移転nよって、経済規模も雇用も税収も減る一方であるためだ。今のパラダイムシフトをしっかりと理解しているのだろうか?
*経済政策には大きく、金利の上下、マネーサプライの増減がある。逆に言えばそれしか手のうちようがない。この2つの調整でなんとかしようとしてきたのがこの100年である。しかし、この調整だけでは効かなくなってきた。理由としては、「ボーダレス化」があげられる。昔のケインズ経済学が前提としていた閉鎖的な経済とは異なり、現在はボーダレス経済である。ある国の経済政策が別の国に波及して、全く逆の効果を及ぼすことがある。クリントン時代、過熱する一方の国内経済においてインフレをおさえるべく金利を引き上げたところ、世界中から高金利を求めて金が集まってきてしまって、さらに火に油をそそぐ格好になったのが好例である。また、このボーダレス経済を表裏一体にあったのものが「ネット経済」である。2008年のリーマンショックによる金融危機が一瞬にして世界に伝播したように、今は瞬時にお金を電子的に抜いたり移したりできるようになっている。