逆説の日本史 23: 明治揺籃編 琉球処分と廃仏毀釈の謎

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  • 小学館
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  • Amazon.co.jp ・本 (381ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784093798983

作品紹介・あらすじ

「平和ボケ」ニッポンを宗教で立て直せ!

日本人の宗教は平安中期から明治維新までのおよそ1000年にわたって、日本古来の民族宗教である神道と外来の世界宗教である仏教とが融合し合体した「神仏混淆教」であった。仏教の持つ「怨霊鎮魂機能」と「死穢除去機能」が、神道の欠点を補う形で日本人に広く定着したのである。
だが維新後開国した日本には、「一神教」であるキリスト教を国教とする欧米列強に対抗するための「宗教の強化」が急務となった。そこで考え出されたのが、天皇の祖先神に対する信仰を強化することによって天皇の権威を高め、国民の統合原理にすることであった。その第一歩が、“野蛮な外国の原理”である仏教を排除し神道を純化するための「神仏分離」である。1868年(慶応4)、全国の神社における僧形の神官に還俗が命じられ、次いで「権現」など仏教語を神号とする神社の神号変更、さらに仏像を神体とすることが禁じられた。
この政府の方針に力を得た神社関係者や朱子学信奉者は全国で仏堂を壊し、仏像や経典を焼却するなどの暴挙に出た。「廃仏毀釈」である。彼らによって日本古来の貴重な仏教遺産は悉く破壊された。あの奈良・興福寺の五重塔さえ、スクラップとして売り払われようとしたのである――。


【編集担当からのおすすめ情報】
『週刊ポスト』で四半世紀にわたり連載中の歴史ノンフィクションの金字塔『逆説の日本史』。その最新刊となる本書では、「大日本帝国構築編」に入ります。
「琉球処分」「廃仏毀釈」といった、教科書では簡単にしか触れられていないものの、大日本帝国の建設に大きな影響を与えた事象を、「井沢史観」で明快に解説しています。
また、井沢史観の根底をなす「近現代史を歪める人々」も収録。「組織を滅ぼすバカトップ問題」とは何か? 必読です!

感想・レビュー・書評

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  • 前半半分が朝日新聞と韓国への批判。最後の方も憲法9条論と脇道多い。タイトル通りの内容を期待すると残念。
    朱子学の害悪を元に、描かれない歴史の真実的な内容なので、そんな詳しくないうちに読むのなら視点が面白いかな。
    週刊ポスト連載記事のまとめらしいので、連載で流し読む方が良いかも。随分昔に一部読んだはずだけど、知識のない時代のとかは改めて読みたいところ。

  • 朝鮮戦争は、北朝鮮の韓国に対する奇襲攻撃で始まったのである
    歴史は大河の流れのようなものだ。上流に何かが起これば、それは必ず下流に影響をもたらす
    中国、北朝鮮もそうだが、韓国も現代史を歪める人々に満ち満ちた国家である。しかしその歴史を歪める動機は中国や北朝鮮とはかなり違う
    朱子学とは歴史的に見ればインテリのヒステリーである
    朱子学には国家の改革を徹底的に妨げる作用と、歴史を歪曲する作用がある
    尚王家とそれを取り巻く黒党が望んだのは、清国と同じ朱子学を根本道徳とした身分制に支えられた国家であった。士農工商が基本でありその身分の壁を越えることが難しかった

  • 2019年3月7日、津BF

  • 明治時代。一神教であるキリスト教に対抗しようとして国家神道を構築していこうした廃仏毀釈が起こったそうだ。
    やはり西洋キリスト教諸国の植民地化への恐怖と対抗心は。明治の人たちにとり半端なかったということだろう。

  • 西南戦争が終わり、この巻は近現代史第一巻と位置付けられる。そこでまず展開されたのは朝日新聞批判。歴史を捻じ曲げ、同じ手法で事実を捻じ曲げる。そういった人々が戦中、負けるとわかっていながら中国だけでなく米英側との対決を決断してしまった陸軍上層部と同様の思考回路をしているのだと解析する。また、中国や韓国、北朝鮮が儒教、主に朱子学の「毒酒」に酔い、明晰な判断ができなくなっていると断ずる。元によって敗れた南宋の儒家である朱熹が、敗北の事実から目をそらすために成立させた朱子学は現実否定と歴史改竄の要素が強い。
    そういった困った隣人たちとどう向き合っていくかを諄々と説く。ヒステリックにただ断交というのは、大人の作法ではない。中国、韓国に対しては、日本がどのように援助し、インフラの整備等形になるものをどれだけ作って来たのかを恩着せがましくではなく、冷静に説明していくのが遠回りながら一番効果的だと説く。朱子学が未だに根強く残っているのだと思い知った。もっとも、当該国の人たちはそれを否定するらしいけれど、そうじゃなきゃ説明できない現状だとは思う。
    また憲法にも触れ、改正が必要でありながら現政権のやり方は間違っていると指摘。第九条の二項を残したままでは、結局自衛隊は違憲のままであるという。その対案として、自己流の改憲案を明示しており、著者の立場が明確になっている。この辺も、ただ反対と唱える護憲派との違い。ところで、本巻のテーマである琉球処分と廃仏毀釈については、朝日、中韓、憲法論議の内容が濃すぎて覚えていない。

  • 毎年一冊単行本化される井沢氏による「逆説の日本史シリーズ」の23冊目の本になります、改装が終わった近隣の図書館へリクエストしていた本です。江戸時代に入ってからこれで、10冊以上続いています。

    前冊からようやく明治に入りましたが、今回はほぼ「朱子学が日本にどのような影響を与えてきたか」の解説で終始されていたと思います。それほど日本に与える悪影響が大きかったのでしょうね、昭和に入って太平洋戦争に突入するまで、もしかしたら今でもその影響下にあるのかも知れませんね。

    以下は気になったポイントです。

    ・北朝鮮は天国どころか地獄であることがわかると、産経や読売は北朝鮮帰国事業に協力するのをやめたが、真実を報道しないことで協力し続けたのが朝日新聞であった(p33)

    ・十七条憲法にある「和の精神」の底にあるのは、敗者が怨霊と化すことへの恐怖がある(p60)

    ・すみません、ではなく「残念です」という言葉は、謝罪ではない。何が残念かと言えば「誤解されたのが残念」ということ(p82)

    ・信長軍が帝国陸軍に勝てる理由は、木下藤吉郎は帝国陸軍では大将(師団長)になれないから、藤吉郎は陸大を卒業していないから、大佐(連隊長)止まり、これも陸軍士官学校を出ている場合で、足軽(二等兵)からのキャリアであれば少佐止まりである(p85)

    ・大日本帝国軍の兵器にはすべて菊の御紋章がついており、天皇から下賜された形式を取っているので、文句は言えない(p88)

    ・1993年の非自民連立内閣への政権参加後には、村山首相は、党内論議を経ないで、1)自衛隊合憲、2)日米安保の堅持、3)非武装中立の政策的終焉、を表明して従来方針を大転換した(p101)

    ・アメリカは日本と戦争が避けられないと考えたとき、最も優秀な学生に日本語を学ばせた、それが日本の暗号解読にもつながった、日本は見事にその逆をやった(p108)

    ・飛鳥時代は天皇一代ごとに遷都が行われていたが、そんなことをしていたらインフラ蓄積ができないので日本は発展しない。そこで持統天皇は大英断を下し、自らの遺体を神道武士葬から仏教的火葬に改めるように命じた、「ケガレ忌避による頻繁な遷都」を解決しようとした。そして日本の首都は平安京で固定した(p120)

    ・最初に中央に反乱を起こした武士団の棟梁(平将門)は失敗したが、その夢を引き継いだ源頼朝は武士政権(鎌倉幕府)を確立した(p120)

    ・ODAには「円借款」「無償資金協力」「技術協力」の3種類があるが、このうち円借款は1980年から2007年まで、総額3.3兆円も供与した(p138)

    ・日本が負けたのは、蒋介石であり毛沢東ではない、毛沢東率いる中国共産党は日本との戦いで披露していた国民軍に勝ち、台湾へ追いやった(p142)

    ・朱子学の欠点として、孝を絶対化する(先祖の決めたことは絶対守る)、外国のものは全て野蛮であると決めつける偏見がある。これは孔子・孟子の儒教には無く、朱子が始めた儒教(朱子学)にある、南宋を建てた漢民族の一員の朱子が選んだのは、現実を直視することではなく空論に溺れることであった(p157、176)

    ・琉球よりも「おきなわ」という名称が古い可能性がある、奈良時代に仏教を伝えた鑑真の伝記には、阿児奈波(おこなは)島という表現がある、琉球という地名が確定したのは、元を倒し明を建国した太祖洪武帝が1372年に中山を服属させてから(p188、189)

    ・家康は島津忠桓(ただつね)に自分の諱から「家」を与えて、「家久」と名乗らせた破格の待遇を与えた、普通は下の字を貰って上につけるもの(p194)

    ・明国では貿易は犯罪なので、まともな貿易商人は海賊扱いされて「倭寇」と呼ばれた、認められている貿易は、朝貢貿易と、それを簡略化した「勘合貿易」である(p198)

    ・足利義満のように頭を下げて(家臣となって)日本国王に任じてもらうやりかたもあるが、家康はその代わりとして、日本の代わりに頭を下げて中国の家臣となり朝貢もするが、実際には日本の一部であるかのような「ダミー国」として琉球にそれを求めた(p199)

    ・商売を軽視した幕府武士が、貿易は人間の屑がやる仕事として長崎商人に丸投げしていた、これにメスを入れようとしたのが老中田沼意次である、しかしこれを潰した松平定信は、寛政異学の禁にて、朱子学以外を認めない法令を出した(p201)

    ・幕末から明治にかけての日本の近代化とは、朱子学からの脱却・払拭であった。朱子学は「毒酒」(室町時代に輸入)であり「毒」では無い。毒ではなく薬と思うから飲み、中毒となる、毒と分かっているものは飲まない(p216、218、225、264)

    ・日本は新道の国であり、その聖典を言うべき「古事記」には大きく3つの思想が語られている、1)穢れ(あるいはケガレ忌避)、2)言霊、3)和、である(p254)

    ・仏教は日本人にとって受け入れやすいものであったが、キリスト教はそうでなかった、土壌が無ければ必ず枯渇する、インドにおける仏教のように(p257)

    ・新道の神である熊野権現は、仏教の阿弥陀如来と同一とされて、平安時代後期には紀伊の国熊野の地は、この世の極楽浄土(阿弥陀如来の住処)とされ、天皇を引退した上皇たちは熊野詣を盛んに行った(p259)

    ・一神教の反対は、無神論である、一神教の反対は多神教ではない。(p266)

    ・檀家制度は、幕府がキリシタン防止のためにその制度を敷き、菩提寺を事実上の戸籍管理者とした、庶民(特に農民)が旅をするための通行手形を発行するのも、菩提寺の住職の重要な仕事であった(p271)

    ・薩摩hじゃ、外城士という独特の制度があり、末端の農民に至るまで村役所(武士)が管理していた、予備役の形であった。だから幕末において長州の奇兵隊のような組織を作らずともかなりの人数を動員できた(p276)

    ・明治新政府は江戸時代の宗門人別帳を廃止して、新戸籍法を制定した、戸籍を管理していた寺院の役割を奪った。そして神社の氏子制度は逆に法制化して、農村などでは住民の情況が村の鎮守社に把握されるようになった。新政府は、全国の神社を、官幣社・国弊社・郷社・村社などと格付けし、社格に応じて国家から祭りのたびに幣帛料を送った(p284)

    ・明治天皇が伊勢神宮に参拝する、1869年3月までは、全国神社の総元締めは、京都の吉田神社であった、吉田家は日本全国の神社神職の任免権を持っていたが、この参拝により吉田神社は地方の一神社に格下げされて、伊勢神宮が第一位、国家の宗廟(天皇家の祖先の霊が宿るところ)となった。1871年には、伊勢神宮を筆頭に太政官布告がなされた(p287)

    ・1872年4月(明治5年)には、太政官布告として、本願寺系僧侶以外には固く禁じられていた、肉食(生き物を殺して食べる、釣りも含む)・妻帯(正式に妻をめとる)・蓄髪(頭をそらずに髪を延ばす)を、「勝手=自由」とした、江戸時代にはとくに妻帯(女犯)は法律で厳罰に処した(p289)

    ・神社にも神人(じにん)と呼ばれる専属兵士がいたが、寺院の僧兵に比べて影が薄いのは、やはり死穢を嫌う神道勢力が、祭礼・医療などの死穢に触れる稼業を伝統的に仏教に委任したことに由来するだろう(p294)

    ・日本人が最も大事ににするのが「和」である、中国人は「孝」であるので、親が危篤なら必ず帰る、妻が病気なら帰るのがアメリカ人である、大切なのは「愛」であるから(p315)

    ・言霊に影響されている日本人が一番苦手なのは、危機管理と契約である(p349)

    ・サムライの国であるはずの日本が、同時に「平安貴族の国」である、遡れば、縄文文化(動物殺す)と弥生文化(植物でいきる、動物を殺さない)の対立まで行きつく、世界に類を見ない、幕府と朝廷の700年にわたる併存も根底にはこれがある(p359)

    ・元からあった本願寺は通称「西本願寺=正式名称は本願寺」、家康の後押しでできた本願寺は通称「東本願寺=正式名称は真宗本廟」と呼ばれた(p363)

    2018年8月12日作成

  • 廃仏棄釈については歴史教科書でもサッとした扱いなので解説してくださる作者に感謝。前半は必要だという事は重々承知しているが、もう少しコンパクトに纏められて頂きたかった。

  • 前半部分の朝日新聞批判は聞き飽きた感もあったが、後半の廃仏毀釈については、歴史を俯瞰的に学ぶ上で大変参考になった。

  • 第一章「近現代史を歪める人々」がとにかく長い・・・。 
    本巻から近現代史編と著者は宣言しているので、ここからは、「バカトップ」なメディア、「朱子学」に縛られた隣国の批判盛りだくさんのシリーズになりそう。 
    琉球処分はさらりと流し気味。 
    廃仏毀釈は、今では想像も出来ないくらい壮絶なものだったことがうかがえる。 
    イスラム原理主義団体や文革の紅衛兵したような破壊行為やってたんだなぁ~。 
    昔NHKスペシャルかなにかでやっていたが、国宝級の仏像が壊され野ざらしになっている写真があったな(興福寺だったかな?) 
    人間の熱狂って怖い・・・ 
    でも、このシリーズで読みにくい部類には入るなぁ~ 頑張れ井沢さん! 

  • この本から近現代史が始まる。
    で、最初は「近現代史を歪める人々」。朝日新聞や岩波書店批判なのだが、旧陸軍とそれを舌鋒鋭く批判してきた朝日新聞は同じ病魔に侵されているという。
    本来優秀なはずの陸大の金時計組や天下の朝日新聞の社長が何故、バカなのか。一般国民を見下す心情が、本当のことを伝えて戦意を喪失をさせるよりと、後者の場合は戦争を憎む世論形成の為に、当たり前に嘘をつく。日本型タコツボエリート小集団主義が原因と分析されている。
    つまり、戦中の間違いを今でも我々は続けている。
    このシリーズもやがて、何故、日本はあの戦争を起こし、戦争を続けたのか、という問題に向かうだろう。それまで頭に記しておこう

    福澤諭吉の脱亜論は、肩入れしていた金玉均が朝鮮に殺されたことが原因とある。「自省なき者の如し」と中国、朝鮮への絶望感に深さが齎せた、武力でもって目を覚まさせるしかないという結論。しかし、未だに彼の国は覚醒していないのかもしれない。
    後半の廃仏毀釈時代については、知らないことが多く、驚いた。
    昭和ヒトケタの人たちは10代前半に戦中の一番酷い時代を時代を過ごしたので、彼らの思い込みが近代の理解を歪めている処もあるという。例えば、天皇崇拝がされたのは、まさにその戦争末期で、それまではそれほどの教育がされていなかったという。普通、本や論評には、現人神として国民に崇めるよう強制されていたと書かれているよね。
    自分もその時代を知らないで、浅はかな批判をしていないだろうか。いつもながら、刺激の多い本で、結構な厚さなのに、サクサク読めた。

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著者プロフィール

1954年、名古屋市生まれ。早稲田大学法学部卒業後、TBSに入社。報道局在職中の80年に、『猿丸幻視行』で第26回江戸川乱歩賞を受賞。退社後、執筆活動に専念。独自の歴史観からテーマに斬り込む作品で多くのファンをつかむ。著書は『逆説の日本史』シリーズ(小学館)、『英傑の日本史』『動乱の日本史』シリーズ、『天皇の日本史』、『お金の日本史 和同開珎から渋沢栄一まで』『お金の日本史 近現代編』(いずれもKADOKAWA)など多数。

「2023年 『絶対に民主化しない中国の歴史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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