のぼうの城

著者 :
  • 小学館
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  • Amazon.co.jp ・本 (338ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784093861960

感想・レビュー・書評

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  •  戦国末期、豊臣秀吉の天下統一の総仕上げと言うべき小田原征伐。その小田原征伐における忍城(おしじょう)の攻防戦を描いたのが本作。
     主人公は「でくのぼう」を略して「のぼう様」と領民に呼ばれている城代・成田長親。不器用で、表情にも乏しく、背が高いだけの大男で馬にも乗れない。だが、そんな長親は領民にやたら慕われているのである。

     前半の見せ場は、長親が石田三成軍二万を相手に戦を選択するところだろう。
     傲慢な軍使・長束正家が城主の娘・甲斐姫を秀吉に差し出せと言ったことで、長親の堪忍袋の緒が切れた。
    「いやなものはいやじゃ」
    「二万の兵で押し寄せ、さんざに脅しをかけた挙句、和戦いずれを問うなどと申す。そのくせ降るに決まっておるとたかを括ってる。そんな者に降るのはいやじゃ」
    「武ある者が無なき者を足蹴にし、才ある者が才なき者の鼻面をいいように引き回す。これが人の世か。ならばわしはいやじゃ。わしだけはいやじゃ」

     だが、この事態を期待していたのは、実は軍使を遣わした総大将・石田三成。三成は、ある思惑があってわざと忍城を威嚇し、傲慢な長束正家を遣わしたのである。

     初戦で大勝利をおさめた忍城勢。
     しかし、石田三成はそれも計算に入れていた。彼が本当にやりたかったのは、秀吉が毛利攻めで見せた高松城の水攻めである。
     高松城のときよりも壮大な堤防を築かせ、湖に囲まれた忍城を水没の危機にまで陥れる。
     窮地に追い込まれた忍城では、城代・成田長親が「鬼になる」と言い捨て、決死の奇策に打って出る――。


     最近は、『天地明察』などもそうだが、ラノベタッチというか、かなり読みやすい時代小説が登場しているように思う。時代小説ファンにすれば味気なさを感じたりするのかもしれない。
     が、それはあっさりした飲み口から重厚な味の赤ワインと色々あるように、好みの問題としていいように思う。むしろ、時代小説の裾野が広がることで、今まで池波正太郎や藤沢周平を手に取らなかった読者層が新規開拓されることだって考えられる。「古典落語はかくあるべし」みたいな教条主義的思考で排斥するのではなく(実際、そうやって貶すレビューも散見される)、時代小説の間口の広さ、懐の深さとして歓迎すべきだと個人的には思うところである。

     ただし、本作に関しては少しスッキリしない部分があるのも確かである。石田三成は、生来の潔癖さと、水攻めをやってみたいという欲望の虜になっている部分で齟齬があっても構わないが、成田長親のキャラ設定にはちぐはぐ感が残ったように思う。小田原陥落により全ての戦が終わった後、冷静に振り返ってみると「結局、こいつは何がしたかってん?」と思わざるを得なかった。長親の心情は作品内では明示的に語られることなく、そのほとんどが正木丹波の推測として語られるのだが、読者視点であるはずの正木丹波が納得するシーンで「?」となるところもあった(特に最後の甲斐姫の処遇について、あそこで納得するんだったら、領民・家臣を苦しめても開戦に踏み切ったときの正当性って翻ってどうなるの? 結局は「城代の気分」で戦争したってことにならないか?と何かひっかかりを感じた))。
     あと、少し冗長な印象も受けた。上下巻合わせて400頁ほどだったが、もう少し削れるところを削って引き締めた方がテンポが出て、ダイナミックな展開になったと思う。

     ちょっと気になるところもあるにはあったが、それでも十分楽しめた。浅学にして石田三成の忍城水攻めを知らなかったので、「戦国時代にはまだまだ知らない面白い話があるんだ」と思わせてくれたのも大きい。
     さらっと読めるので、気になっている方には一読をオススメします。

  • 昔映画のCMを見た(野村萬斎さんやったかな?)+エレカシのタイアップで気になっていた本。
    登場人物のそれぞれの視点で物語が進む中で、読んでいて全く忙しくない。個々のキャラクターが立っていて長親を中心とした展開ではあるけれど、感覚的には短編集を読んでいて結果それらが全部1つの物語でした、という感じ。
    しっかりした人間ドラマ読む気力ないわー、って時に、安心して読めるのか時代ものかもしれないと最近気づいた。

  • 歴史物苦手なので、読むのにいつもより時間がかかりましたが、長親の人間性は興味深かったです。こんなリーダーも有りかなと思います。

  • 評判が良かったし、そろそろ映画も公開だし、と思って読んでみた。
    けど、そんなにおもしろいかな。ある程度の情報がすでに入っているから楽しめなかったのか、説明が多すぎて登場人物に感情移入できなかったのか、なんだかイマイチな印象。戦闘シーンもあんまりイメージできなくて、迫力に欠けてたし、ハラハラドキドキしなかった。
    主演は野村萬斎だから、もしかしたら、映画の方がおもしろいかもしれない。

  • 野村萬斎とはイメージが合わない。
    普通に開城すれば良かった気もする。

  • 読み進めやすかった。
    甲斐姫とは結ばれてほしかったなぁ。

  • 長親をはじめキャラの濃い登場人物たちに心を奪われる。
    人を動かせる人には何かがあるんだなぁーとしみじみ思う。
    面白く読めた。

    2018.4.10

  • でくのぼうと称される成田長親を総大将とする成田軍が、秀吉の命を受け石田三成軍と戦う。多勢に無勢の成田軍は、緒戦に続き、水攻めにも勝利する。味方をまとめ、農民を結束させ、大将のために士気を高めたものは単なるばか者か、でくのぼうの内に秘める利に流されない素直な心か。

  • 史実の解説がウザい。
    のぼう様の魅力がよくわからない。結局甲斐姫も秀吉に取られるし。

  • 歴史小説??
    とっつきにくくて食わず嫌いを決め込むも読んだら面白かった〜
    この本の三成はイメージと違います。

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