- Amazon.co.jp ・本 (206ページ)
- / ISBN・EAN: 9784093863735
感想・レビュー・書評
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その手をにぎりたい、って ずいぶんともっさりしたタイトル、もしかして介護現場の話かしら? と思ったら、寿司屋だってことだから、読んでみた。
栃木から上京して大学卒業後に 地味にOL やってます、という青子、そろそろ実家に帰ってお見合いでもとなって、上司に送別祝いだと高級寿司屋に連れて行かれる。
そこから彼女の人生が大きく動き始める。
とまぁ、一昔前のトレンディ・ドラマのような、いや おおいにバブル期のそれを意識した 「女子暗黒の10年(勝手に命名)」の話、なんだけれど 寿司屋の場面の鮮やかさが、質感を出している。
第一話ヅケの “市ノ瀬さん” との出会いの場面は とても清潔でありながらセンシュアル。
いろんな意味で生唾ものです。
作者の柚木さんは 1981年生まれだそうなので、現在 ちょうどこの物語の最後の青子の年齢と同じくらい。
だからバブル期のことは知らないはず。
バブルを描いてみたかっただけかもしれないが、女子の20代後半から30代前半という一寸先は闇な怒濤の10年を表現するにはピッタリな時代を選んだと思う。
関係ないけど、その時期を優しくできなかった男は将来が惨めです。
映像にするなら、今をときめく桐谷 美玲ちゃんか 有村 架純ちゃんがチャレンジするか?詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
バブル期の寿司屋と不動産屋かぁ。
ある意味での歴史書…私の知らない時代の話。
ステレオタイプ的なバブル描写がいっぱい出てきてテンション上がる。
どの時代でもマジョリティとして生きられないタイプの女っていて、それは本人にとっては茨の道でも誰かにとっては羨ましかったり輝いて見えたりするものなんだろうなぁと思った。私もマジョリティとしては生きられない女なのでなんかちょっと勇気出た。
バブルだからってみんなジュリアナで踊ってるわけじゃないもんね。
若き寿司職人(しかも高級寿司店の)が"推し"ってことでしょ、推し活お金かかるねぇ…
でも1回5万円とかでお寿司越しに触れ合えて美味しいお寿司も食べられるならそりゃ通うよね…
旬のネタが食べたくなるわね -
ひゅーひゅー、ロマンチック!いやぁ題名が良い。その手をにぎりたい、というのがお鮨屋さんを舞台にした恋愛小説なんて...なんかシャレオツ。時はバブル時代。上司に連れられて超高級鮨店に初めて入った青子。そのお鮨の美味しさに、若き板前さんの佇まいに身も心も奪われてしまう。自分1人で通えるようになりたい。華やかさと酔狂さが混濁した東京でガムシャラに働く事を決める青子。まずお鮨が美味しんぼもビックリの本当に美味しそうな描写。そして主人公青子の紆余曲折に人間らしさを感じられて、流れる10年の歳月にドップリハマった。
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バブリーの説明を受けたようだ。当時、こんな世の中だったんだね。今考えたらハラハラしちゃうような好景気。きっと当時は女性が仕事で活躍することはあまり一般的じゃなかっただろうに、青子の踏ん張りがすごい。
この時代なら、アッシーメッシーネッシーとかも出てくるのかと思ったらそうではなく、青子と一ノ瀬さんの関係はもどかしいほど。
最後のシーン、終わらないで欲しい。いい終わり方。
にしても、一ノ瀬さんのお寿司が美味しそうでたまらない。
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故郷に帰ろうとしていたOLが上司に連れていかれた銀座の寿司屋の職人と出会ったことで生き方を考え直すストーリー。
今から30年以上前に女性が男社会でバリバリ働いて稼いで、そして自分のお金で好きなものを食べたいと思うのは相当風当たりが強かったと思うのに、少しずつ強くなっていく青子の姿がとても格好よく思えた。
その生き方を体を貫いたせいで体を壊しているし、結婚した友人と上手くいかなくなったり、正解ではないのかもしれないけど、男相手に色目を使ったりしないところが好き。
あと、時代を感じる登場人物の職業とか働きぶりや今ではびっくりするようなお金の動きも当時を知らない世代としてはおもしろかった。。
ずっと想い続けてきた一ノ瀬とのラストシーンにはジーンとしつつ、あれ以上になって欲しいような、欲しくないような…。でも結局あの距離感がこの二人にはちょうどよかったんだろうなぁ。
ちなみに本日は父の日だったのでスーパーでお寿司を買って食べたのだけれど、どうしたって銀座のお寿司はどれくらい美味しいのか想像せざるをえなかった笑。 -
言葉選びが素敵でテンポ良く読了できました。始めてこの作者の本を読んだけど、売れてるのが納得。カウンターのあちらとこちら。好きだけじゃだめなんだなあ。
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なんにも知らないOLだった主人公が、ある寿司職人との出会いを機に、変わっていく物語。柚木さんの食べ物の描写はほんとうにすごい。ランチのアッコちゃんでもそうだったが、とにかく美味しそうで秀逸。
バブル時代の街と人の変化がまた切ない余韻を残してくれる。ほんとうに握って欲しかったのはずっと手だったのかもしれない -
昭和から平成へ。
バブルの香り漂う小説。ページを開くたびにタイムスリップできました。
小説の中身は自分の生活とはまったく交わりのない内容でしたが、なぜか「あの頃」が懐かしくフラッシュバック。
何か違う。何かがおかしい。と思いつつも時代に流されて居心地はそんなに悪いもんじゃなかった。あの頃があったからいまキチンと生活できている。そんなことを考えさせてくれるような雰囲気のある小説でした。
お寿司食べたい。 -
柚木麻子さんは食べ物の描写が本当に秀逸。
仕事に真摯に向き合う一ノ瀬さんのお寿司、私も食べてみたくなりました。