駄犬道中おかげ参り

著者 :
  • 小学館
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  • Amazon.co.jp ・本 (427ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784093864534

感想・レビュー・書評

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  • 『超高速参勤交代』『引っ越し大名』など次々とヒット映画の原作脚本を書いている土橋章宏さんの作品


    博徒の辰五郎が貧乏長屋の伊勢講のくじに当たり、長屋を代表してお伊勢参りをするはめに
    奉公先を飛び出してきた三吉、嫁ぎ先を子どもができないという理由で離縁された沙夜、✴︎おかげ犬の翁丸の三人と一匹の伊勢神宮を目指しての珍道中

    『愛宕山』と言う落語の中に
    「野辺へ出て参りますと・・・やかましゅう言うて参りましたその道中の陽気なことと」
    という一節ががあるが、まさしくそんなドタバタ道中

    辰五郎いい加減な男で、長屋のみんなから預かった5両を品川の宿を出た時には、はや全てスってしまって文無し
    でも憎めない奴で、人間としての根幹や優しさはちゃんと持ち合わせている

    すったもんだの挙句、最後には将軍徳川家斉まで登場!
    無事、お伊勢参りを果たしたが、この翁丸、実は大奥のお局様のお犬様だったことが分かり、そのお局様の更なる命を受けて、金比羅参りへと詣でることに・・・
    さてどうなりますことやら
    お後がよろしいようで・・・・

    脚本家らしくほとんどが会話なので、落語か吉本新喜劇を見ているような感じでサクサクと400pあまりを一日で読んでしまった

    ✴︎おかげ犬・・・伊勢参りがしたくてもできない主人に代わり伊勢に参拝し、お札をもらって帰った犬
    歌川広重の『東海道五十三次』にも描かれている


  • 江戸時代の伊勢参りを舞台にした、エンタメ時代小説。

    生きて行くには困難が付きものである。何だかんだで行き詰まった人はときに、旅に出る。人生のリセットである。時代は変われど、そんな風に旅に出る人は昔からいたのかもしれない。

    伊勢神宮へのお参りは江戸の庶民にとって1つの夢であった。一生に一度はお参りりしてみたい場所、それが「お伊勢さん」だったのだ。60年に一度の遷宮がある年はひときわ御利益があると言われ、江戸庶民は大挙して伊勢路を目指した。これを「おかげ参り」と称する。
    とはいえ、旅をするにも先立つものはカネである。貧乏人はおいそれとは旅立てない。町内で皆がカネを出し合って、くじで代表者を決め、行けない者の代わりにお守りや魔除けを買ってくる「代参」が往々にして行われた。
    一方で、信心だから、大目に見ろ、とばかりに、奉公人が主人に黙って、あるいは子どもが親に言わずに、抜け出して参る例も多く見られた。「抜け参り」である。金もないのにどうするかといえば、行く先々で路銀を寄付してもらうのである。伊勢まではいけないものが金を恵む代わりに、自分の分もお参りしてもらうという寸法だ。「抜け参り」するものは、目印として柄杓を持つのが習わしであった。
    さらに、伊勢参りに出かけたのは人ばかりではない。お使いとして、犬を行かせる例があったという。首に「代参犬」と札を付けると、道中、人々が食べ物を恵んでくれ、ときには首の袋に喜捨もしてくれる。「伊勢参りに行く犬だからどうぞよろしく」と札に書いておけば、街道を迷わぬように人々が連れ歩いてくれるというからのどかなものだ。
    このあたりにご興味がある方は、『犬の伊勢参り』が参考になる。

    予備知識はここまで。
    さてここに、1人の博徒がいる。名は辰五郎。そろそろ中年にさしかかり、博打のツキも蔭りを見せてきた。大枚の借金があるが返せる当てがない。折良く、町内の代参のくじにあたり、夜逃げすれすれで伊勢参りに出かける。
    ひどい奉公先に放り込まれ、辛い毎日を送っている男の子、三吉。親はその後、行方不明。たった1人の姉が祝言をあげると聞いたが、旦那には暇をもらえない。伊勢参りにかこつけて、姉の元に行こうと黙って出てくる。
    もう1人、死のうと思い詰めた薄幸の女、沙夜。婚家でさんざんな目に遭って飛び出してきたが、自分など生きている価値がないと悲観し、命を絶とうとしたところ、行き会わせた辰五郎と三吉に助けられる。
    この3人がともに、伊勢を目指すことになる。
    3人にはもう1人、いやもう1匹の道連れがいた。白い紀州犬、翁丸。名前は立派だが、食い意地ばかり張った駄目犬である。

    人生に躓いたもの同士、家族連れのふりをした方が宿代も安いと、1つ部屋に泊まり、枕を並べる。東海道をお伊勢さんまで、名所を見、名物を食べては旅するうち、いつしか互いの境遇も打ち明けあい、疑似家族のような絆が生まれていく。
    とはいえ、辰五郎は根っからの渡世人。博打も打てば女も好きだ。下ネタの下品さにはときどき閉口した。が、実のところ、弥次喜多で知られる「東海道中膝栗毛」もキワどいネタには事欠かないから、そちらに比べればむしろかわいい方かもしれない。

    著者は、映画化もされた「超高速!参勤交代」シリーズの作者であり、歴史の裏舞台も散りばめながらエンタメにまとめ上げていく。
    「東海道名所図絵」を手引きに歩く3人の旅は、タイムトリップをしながらグルメ旅も楽しめる趣向。宿場ごとに章立てされているため、通勤途中や寝る前の細切れ読みにも向いている。
    終盤には思いがけず大きな陰謀にも巻き込まれ、あっと驚く結末を迎える。駄犬だと思っていた翁丸の意外な正体も明かされる。
    ラストは次作への含みを持たせるが、続編はあるかな・・・?
    甘いものや塩辛いものをたらふく食べる、おバカだけど憎めない翁丸のその後知りたさに、次が出たら読んでしまう、かもしれない。

  • 60年に一度のおかげ参り、ご利益を求めて多くの人々が日本全国から伊勢神宮を目指す1年です。
    この特別な年に東海道を行くは、宵越しの銭は持たない博徒に奉公先を抜け出してきた少年、入水寸前で助けられた美女に食いしん坊な代参犬、という風変わりな一行。
    いろんな事情が重なって道連れとなった3人と1匹の旅路を、おもしろ可笑しく描いた時代小説です。
    エンターテイメント色が濃いと思ったら、『超高速!参勤交代』と同じ作者なのですね。

    東海道の名所や名物に加えて、さまざまな事件や出来事が次々と起こり、一行の旅は見ていて飽きません。
    それになんといっても代参犬・翁丸が愛らしい!
    食い意地がはってるところも、笑ったような顔をするところも、賢いんだかおばかなんだかわからないところも。
    翁丸のしでかすことが結果的に一行の窮地を救ったりするのは、神様のお導きなのかしら。

    気持ちのよい結末ににっこり。
    『超高速!参勤交代』も読んでみようかな、と思います。

  • 借金から逃げている博徒、奉公先に無断の抜け参りの子供、自殺しようとしていた女性、食欲旺盛な犬が巡り合っての伊勢参り。
    さらっと読める。
    元々は連載なのかな…?
    宿場などで1話になっていて、それぞれが短いので、繋がっているとはいえぶつ切りの印象だった。
    最後も唐突な展開で、重大な読み落としをしていたんだろうか私?と思うくらい。
    映像化とは相性が良さそう。

  • それなりのボリュームがありながらテンポ良く読めた。
    やや掘り下げが足りないというか、一つ一つのエピソードがアッサリしている感はあるが、全体的には楽しく読めた。
    博奕で多額の借金から逃げている男、子供が出来ないことを婚家に責められ死のうとした女、両親に捨てられた少年、そして誰かの代理参りの犬というメンバーでの伊勢参り。
    それぞれが旅の中で変化を見せて、三人と一匹の関係も変化していくところが良かった。

  • あんまり考えることなく楽しく読み終わりました。
    こんなのもいいですよ〜

  • 読む前には結構な分量に感じましたが、さらっと読めます

    よくある東海道中もの、といっても読み比べたことがないのですが、面白おかしなお話です
    良くも悪くも時間感覚が希薄なので、あっという間にお伊勢にたどり着きました

    時間つぶしには、ちょうど良さそうです

  • 2020/02/14-04/16
    道中で出会った3人と1匹の伊勢参り。それぞれが希有な運命を背負いながら伊勢神宮を目指す。宿場ごとの出来事が掘り起こしが不十分で興味が湧かない。土橋さんの道中ものとしては、物足りない。

  • 人生は、博打の連続?
    つきの落ちた孤独な博徒が、くじで引いたお伊勢参りで、家族を手に入れる。
    一件落着、奇想天外だが、博打の心根なんてそんなに簡単に代わるものでもないだろうに。

  • 主人公がなかなか好きになれず、だんだんと好きになってきたかなぁという感じに進む。

著者プロフィール

1969年大阪府生まれ。2011年「超高速!参勤交代」で第37回城戸賞を受賞し、同名映画は第38回日本アカデミー賞最優秀脚本賞、第57回ブルーリボン賞作品賞を受賞。さらに同名の小説で作家デビューを果たす。他の著書に『幕末まらそん侍』『超高速!参勤交代 リターンズ』『引っ越し大名三千里』『スマイリング』『チャップリン暗殺指令』など。

「2022年 『決戦!賤ヶ岳』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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