さよなら、田中さん

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  • 小学館
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  • Amazon.co.jp ・本 (253ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784093864848

感想・レビュー・書評

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  • 「君のお母さんがあんなキツイ仕事をしているのは君のためだよ。君がいるからあんなにがんばれるんだよ。お母さんの幸せのために自分がいなくなるなんて間違っている。君がいなくなったら、お母さんは幸せどころか、世界一の不幸になっちゃうよ」
    「どんなに絶望的で最悪の状況でも、その人なりの希望があるから生きていけるんじゃないかな。たとえ針の先ほどのわずかな希望でも、かすかな光でも、幻でも、それがあれば、なんとかすがって生きていける」
    「うらやんだり、ねたんだりするというのは、その人に近い事柄や自分と似たような環境、境遇の人に対して起こるのではないだろうか?自分とはあまりにかけ離れている人、明らかに別世界の人は、嫉妬の対象にならない。同じようなレベル、階級の人に嫉妬心は生まれるのだ」
    「疑われるような行動はつつしめ」
    「悲しい時、腹が減っていると、余計に悲しくなる。辛くなる。そんな時はメシを食え。もし死にたいくらい悲しいことがあったら、とりあえずメシを食え。そして一食食ったら、その一食分だけ生きてみろ。それでまた腹が減ったら、一食食べて、その一食分生きるんだ。そうやってなんとかでもしのいで命をつないでいくんだよ」
    「その食べ物をくれる人には感謝しなくちゃいけない。それは命をつないで、生かしてくれる人だ。食事を作ってくれる人とか、食材を買うお金を稼いでくれる人とかな」

  • 貧しいけれど、脇目も振らず生きることに全力の母親と小学6年生の娘、花実の日常や周りの人たちとの出来事を綴った5つのお話。

    一番に思うことは、子どもは大人が思うより、周りの大人のこと、物事の本質を見ているということ。
    花実は、母親が汗水たらして必死で働く姿を見て、生まれたときからいない父親のこと、貧しいということ、食べること、お金のこと、自分の存在のことを一生懸命考えている。
    木戸先生も母親の言葉も心に刺さって、こんな話をしてくれる大人が花実の側にいてくれて良かったと思う。

    最後の「さよなら、田中さん」は切なすぎた。
    学歴、世間体しか頭にない毒親に身も心も縛られていた三上くんにとって、田中親子は生きる上でもっと大切なことを教えてくれた。
    「もし死にたいくらい悲しいことがあったら、とりあえずメシを食え。そして一食食ったら、その一食分だけ生きてみろ。そうやってなんとかでもしのいで命をつないでいくんだよ。」と。
    家族からも友達からも離れて生活を始める三上くんが最後に、みんなが悲しくて泣く日が少しでも減りますようにと祈り、「その分、代わりに僕が泣きます。僕は泣くのに慣れているから」という言葉は辛すぎた。
    どうか、三上くんのこれからの人生に明るいことが待っていますようにと願ってやまない。

  • なんかたくましい、そんな話。

    傍から見たら決して幸せには見えないだろう花実だけど、たくましくて生き生きしていて、幸せそうだ。
    友達に恵まれているのが何より。

    最後の表題作は同級生からの視点。うまいまとまり方だと思う。

  • p56
    「人は誰でも、言いたくないことがあります。その人が話したくないことを無理やり聞き出すのはよくありません。真実をすべて知ることがいいとは限らないし、その必要もないんです。そして知った後では、もう知る前には戻れないんですよ」

    わーわーわーーーわ、わ、わー!

    目の前の席の子が、昨日「それは、ほわほわしますね!」て云ったーー
    ほわほわ!!

    まずは息子に読書をバトンタッチ。
    そして、娘へ。

  • お母さんと二人暮らしの小学6年生の花ちゃん。ちょっと、いや大分貧乏だけど心豊かに過ごす毎日が色々なエピソードで描かれている。このエピソードが離婚してずっと会えなかった娘に父がこっそり会いにくる話とかお母さんの再婚話に自分がどう影響するか悩む話とか中学受験とお母さんとの関係の悪影響の話とか簡単にお涙頂戴になりそうなのに絶妙な温度で、かつ判りやすい描写で描いているのが凄い。友達同士のお金とかの家庭レベルの差に悩んだりする花ちゃん視点だけじゃなく大家の息子や激安堂の社長、そして悲しい事があるならメシを食え、と言う素敵な言葉を放つ格好いいお母さん等の大人視点まで!同級生の三上君視点で花ちゃんの格好良さが見られる最後の話もいい。頑張って真っ直ぐ生きていこうと襟正させる一冊。

  • 次の作品も気になります。

  • 中学生作家のデビュー作
    とても中学生とは思えない表現力に驚かされた

    主人公(小学6年生)を取り巻く環境を一人称視点によって表現している
    主人公の年相応に素直な感性や、小学生ながら大人びた考え方などがうまく表現されており、大人には描けない作品になっていると思う

  • やられたよ。これほんとに今中学生の子が書いたの?
    才能ってなんだろう。なんでこんなのかけるこがポッとでてくるんだろう。

    タイトルは冴えないなあと思ったけど、最終章の目線だけ別の子に変わって、そこが「さよなら」。

    親子の幸せってなんだろうと考えさせらる。貧しさやプライドや、幸せを邪魔するものがあっても、それでも生きていこうとする強さ。生き物としての最低限の、っということもあるけれど、ちょっとだけ笑える明日にするような努力。

    でもどうにもならない現実もあるけど。少しでもね。

    久しぶりに、琴線に直接どんと響いてくるものが読めて、それがなんと作者中学生。
    話題作で、図書館のまちは予約したこととっくに忘れてたやつ。

  • 最近注目されている鈴木るりかさんもう最高です‼️まだ小学生の私にとって、中学生作家さんが書いた方が結構気持ちがよくわかるかもしれません。

  • 本当に中学生が書いたの!?
    「もし死にたいくらい悲しいことがあったら、とりあえずメシを食え」
    生きろというメッセージがストレートに伝わってくる。
    花ちゃんのお母さんとは対照的な三上くんの毒母。タイトルにもなっている最後の一編だけが、その三上くんの視点で描かれているところにやられたって感じ。
    西原理恵子さんの装画もいい。

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著者プロフィール

鈴木 るりか(すずき るりか)
2003年東京都生まれ。史上初、小学4年生、5年生、6年生時に3年連続で小学館主催『12歳の文学賞』大賞を受賞。あさのあつこさん石田衣良さん、西原理恵子さんらが、その才能を手放しで絶賛した「スーパー中学生」。2017年、14歳の誕生日に大賞受賞作を含めた連作短編集『さよなら、田中さん』発表。近年では珍しいローティーンの文壇デビューで、各メディアの注目を集めベストセラーに。

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