奇跡の教室 エチ先生と『銀の匙』の子どもたち

著者 :
  • 小学館
4.12
  • (108)
  • (115)
  • (57)
  • (5)
  • (2)
本棚登録 : 808
感想 : 156
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (220ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784093881630

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 昭和9年橋本先生は、教科書を一切使わずに「銀の匙」を教材に3年間、一言一句を読み解き授業を展開していった。久しぶりにこの本を手に取り、「アクティブラーニング」ってまさにこれなのではないかと思わされた。一つの言葉の裏には、広がりがある。詳細に読み込んで行くと、歴史・文化・社会・伝統とつながっていく。受験・受験となるのではなく、一つ一つの物事を丁寧に読み解いていけるって素敵なことだと思う。橋本先生の「すぐ役立つことは、すぐに役立たなくなります」という言葉も非常に共感。自分はどんな国語教師になりたいのか、受験だけに捉われずに熟考していけたらと思う。

  • 全国的に有名な進学校、灘校で教鞭をとられたエチ先生こと橋本武先生と、その教え子たち(と言ってももう立派な大人の方々)とのお話です。

    エチ先生の国語の授業は一風変わっていて、教科書は一切使わず、文庫本 『銀の匙』(中勘助著)一冊を読み通す、それのみを勉強するというものです。
    一冊の本の内容を深く掘り下げ、広く脱線し、大きく横道に逸れ、読み込んでいくことで、作品を自分のものにする。
    感性豊かな中少年の生き様を、中学生が三年間をかけて存分に味わうのだそうです。

    教え子たちは異口同音に、国語の授業を通じて、エチ先生から生き方の根源を教わったと、言っておられます。
    エチ先生の教育に対する覚悟と信念、魂は、教え子たちにしっかりと伝わり、彼らの人生の肥やしとなっているのです。

    エチ先生は退職された後、街のカルチャースクールの教壇に立っておられると知り、ぜひ一度講義をお聞きしたいと思いましたが、残念ながら2013年に101歳でお亡くなりになっていました・・・

    図書館スタッフ(東生駒):ほっこり

    ----------
    帝塚山大学図書館OPAC
    https://lib.tezukayama-u.ac.jp/opac/volume/732042

  • 仕事上の知り合いから進められ。

    人にものを伝える(教える)ことの価値観を揺さぶられました。

    灘に興味深々。

  • あたたかな気持ちになりました。先生の言う所の、『結果を出す』が、いい大学にすすむ学力を身につけることではなく、何歳になっても、前を見続けることだというのが最後にのっていて、特に素敵だと思いました。

  •  昭和59年まで50年間、兵庫県の灘中高の教壇に立ち続け、中学3年間は中勘助の自伝的小説『銀の匙』1冊だけを授業で扱うというスタイルを取っていた国語教師・橋本武先生のドキュメンタリー。各界を牽引する存在となった教え子たちへのインタビューを交えて、「エチ先生」の人柄や教室の様子が伝わってくる読み物となっている。途中で齋藤孝などの教育学者が、橋本先生の授業を分析するコーナーが設けられている。
     この読み物の舞台となるのが、戦後の昭和なので、とにかく時代のギャップが結構ある。表紙の写真は最近の子供達に囲まれるものなのに、ページをめくって出てくる写真がいかにも昭和の写真ばっかりなので、この表紙は何なんだ、とか思ってしまった。橋本先生みたいな授業が出来るのは、必要なことはこれでも出来る、という信念があるからだと思う。じゃなければ、「結果が出なければ責任を取る」なんて言えないだろう。
     いくつか共感した部分を挙げると、まず「壁を階段にする力」(p.79)という部分。橋本先生よりも、この本の著者が実は20年間英語教員だったという事実に驚いてしまうが、「単語がわからなくても、文法が難解でも、前後の文脈から類推しようとする。意味がわからない一文があっても、とにかく読み進めていき、後の文章からヒントを探そう、結論から逆算してみよう、などとあれこれ方策を練る。」(p.78)というのが、英語の成績が伸びる生徒、と著者は言っているが、この部分に共感した。おれは高校の時は、「ミクロで攻めて(倒置・省略・挿入を見抜けば文型は取れるはず)、マクロで攻めて(結局この筆者は何が言いたくてこの文を書いているのか)」と自分に言い聞かせて英文を読み砕いていた。あとはこれも橋本先生自身の言葉ではないが、教え子で東大総長の濱田氏の「知識を伝えるのは、一種の『美しいもの』を伝える」(p.160)という部分。知的な興奮を味わせてやる、というのは教える過程における究極のステージだと思うので、こういうステージに到達できる授業者というのになりたいと思った。『銀の匙』を読んだことがないので、また灘という学校も超有名進学校のトップ、という意識しかないので、入り込みにくい部分もないことはないが、全体としては読みやすいエッセイみたいになっている。(15/11/08)

  • エチ先生のことをもっと早く知っていればなあ。高学年では無理かと思っていたが、これはまさに理想に近い「総合学習」だ。

  • 読みやすい。
    こんな授業ができたならどんなに楽しい日々を過ごせるだろう、と思う。
    文庫本一冊を丸々授業で読み込んでいく、という学習をするには、授業者として、言葉に表せないくらいものすごい大量の教材研究が必要だ。

    教員として、そのくらいの情熱をもって、教材とも向き合いたいし、目の前にいる生徒たちとも向き合いたい。

    大村はま先生のような、強烈なパワーをもつ教師だと思うか

  • 本を読むということは字を読み進めていくだけではないということを教えてもらいました。

    文脈から、なんとなく意味の分かる単語でも実際には分かっていない。

    それを知ることも勉強。

    読めない言葉があっても、つい読むことを優先させてしまう。

    辞書ではなくても携帯で読みを調べたらいいのにね。

    名前は知っている地名だけど詳しくは知らないとこも多々ある。

    そこの特産品を調べたり、今ならふるさと納税をしているか調べてもいい。

    読むスピードの速さや読書量も必要なのかもしれないけど、深く読み進めていく読書をすることも大切なこと。

    自分も橋本さんの授業を受けてみたかったです。

  • 最近とかく話題になっている灘の橋本武先生のお話。
    先日テレビにも出演されていたが、近所にお住まいらしい。
    「銀の匙」も読んでみないといけないかな・・・

  • 20140503

全156件中 11 - 20件を表示

著者プロフィール

伊藤氏貴(いとう うじたか)
1968年生まれ。文藝評論家。明治大学文学部教授。
麻布中学校・高等学校卒業後、早稲田大学第一文学部を経て、日本大学大学院藝術学研究科修了。博士(藝術学)。
2002年に「他者の在処」で群像新人文学賞(評論部門)受賞。
著書に、『告白の文学』(鳥影社)、『奇跡の教室』(小学館)、『美の日本』(明治大学出版会)、『同性愛文学の系譜』(勉誠出版)など、
訳書に、『塹壕の四週間 あるヴァイオリニストの従軍記』がある。

「2022年 『ジョージ・セル —音楽の生涯—』 で使われていた紹介文から引用しています。」

伊藤氏貴の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×