処方箋のないクリニック (小学館文庫 せ 2-10)

著者 :
  • 小学館
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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784094072914

作品紹介・あらすじ

メスを入れるのは病気じゃなくて人間関係! 『感染』で第1回小学館文庫小説賞を受賞。医療ミステリーの第一人者仙川環が贈る新境地。「こんな先生に診てもらいたい!」書店員さん絶賛の医療小説。東京郊外にある古びた洋館。そこには先端科学では治せない患者と家族の「人生」を治療する名医がいる。凄腕、イケメンだけど、ちょっと変わり者の医師青島倫太郎。目が悪くなったのに車の運転をやめない父。怪しげなサプリにはまる母。民間治療に心酔した妻……。そんな患者を持つ家族たちはどうしたらいいのか。スイーツと紅茶の香る古い洋館の診察室を訪れた患者と家族は、青島と話をするうちに、隠していた心の内を打ち明けてしまう……。現代の赤ひげ先生が、鮮やかに患者と家族のトラブルを解決するハートウォーミングお医者さん小説。

感想・レビュー・書評

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  • どの話も心安らぐいい話でした。

    青島総合病院の中にありながら認めてはいられない総合内科で、よろず相談を開設する医師の倫太郎と看護師のミカ。

    どんな場面でも患者さんに寄り添って話を聞く。その中で治療が必要なのは、病気じゃなくて、人間関係であることに気づかされる。

    医療に限らず、どんな仕事でも言えることなんじゃないかなぁ。

    話を聞くって大事なことに、気づかされました。

  •  今どきの時代には、必要な医師だと思いました。許容出来ない閾は持っていて、相手の主張は一旦は肯定する受け答えが見えにくかった本音を引き出す。丁寧な話術は相手の本質を改善する目的がハッキリしていて好感が持てる。
     倫太郎先生は、一見頼りなく感じされるのかもしれないが、臨床を経験した成果が公に認められた実力を持つが故の具体的な根拠がある点が良い。対して院長先生は身内の計らいで地位を得た優遇から多勢に泳がされる傾向にあり、実権を欲しいままにしている。労せず得た地位と権力より現実を目の当たりにした実力が勝る展開が読者に心地よさを与えてくれる。
     もう少し結論が書かれてても良かったかなーと感じてしまった。

  •  青島総合病院の裏の雑木林の中に、放棄された木造平屋建ての診療所があった。病院創業者の息子である青島倫太郎はそこで「総合内科」を開き、迷える患者のよろず相談に乗るのであった……!

    【もみじドライバー】
     年を取って運転がおぼつかなくなっても免許証を返上しないで農業を続ける樫尾平蔵さん。農地の土地利用問題も絡んで複雑な利害や思惑が絡む。果たして落としどころは……?

    【サプリ教信者】
     しっかり者だったはずの綿貫志保理さんの母・絹枝さんがインチキ高額サプリにはまってしまった!そこに至った理由は……?

    【総合内科 本日開院】
     話はちょっと戻って総合内科開設時のお話。セクハラに悩む青島総合病院の外来勤務の小泉ミカはいかにして総合内科唯一のスタッフとなるに至ったか。

    【理想のパートナー】
     民間業者が行う遺伝子診断は当てになるのか?結婚を前にした二人の行動は?そして青島倫太郎のアドバイスは?

    【血圧陰謀論】
     衣料品販売で働く綾瀬航さんはノルマとパワハラ上司の圧力もあり、血圧が上がってしまった。しかし今の高血圧基準は医療業界が儲けるために恣意的に低くしたものであって気にすることはない、とパワハラ上司は言った。確かに和田秀樹先生もそう言っていますね。それに対する青島倫太郎先生の見解は……?
     血圧陰謀論なんかに騙されていると、大変なことになりますよ!!

    【奇跡のメソッド】
     最終話にして青島総合病院に最大の事件であり危機が訪れる!今回の相談者は倫太郎先生の弟であり青島総合病院の理事長でもある柳司先生だ!!
     柳司先生の娘・円花ちゃんがアトピー性皮膚炎になり、奥様の結衣さんが民間療法にはまってしまう。夫婦の意見の食い違いは拡大し、民間療法の幹部が介入し、ネット上で炎上し、ついに週刊誌が動き出す!病院の一大事に倫太郎先生登場!果たしてどう解決するのか……!!


     こういう「総合内科」の概念はいいと思います。しかし現在の医療制度では採算が取れないようです。青島総合病院でもお荷物扱いで、理事会でも閉鎖を主張する声が多いようです。何より、セカンドオピニオンとして方針を否定された形となる主治医が不快に思うようです。
     我々も診察を受ける時にセカンドオピニオンを受けに行くこともあるかと思いますが、その時はくれぐれも主治医を刺激しないようにしないといけません。まあ患者としては医師を選ぶ権利はあるのですが、医師のメンツを潰さないようにうまく立ち回ることが世渡りのマナーというものでしょう。
     本作品での倫太郎先生の考え方・やり方は我々が日常生活を送る上でも応用が利くと思います。本書を読んで賢くなりましょう。続編にも期待。

     なお、本書の小学館文庫版の解説は幸村百理男先生が書かれています。
     興味深い人選ですね。文庫は解説が付加価値です。
     

    OLDIES 三丁目のブログ
     処方箋のないクリニック 青島総合病院総合内科の事件簿
      https://diletanto.hateblo.jp/entry/2024/02/21/204518

  • こちらは職場から少し歩いたところにある書店で
    平積みされていて手に取りました。
    -------------------------
    治療が
    必要なのは
    病気じゃなくて
    人間関係でした

    緑内障、高血圧、肥満、アトピー……
    ありふれた症状が
    引き起こす奇妙な
    事件にメスを入れるのは
    型破りな名医!!
    心温まる医療小説!
    -------------------------
    最初は、伊良部先生みたいなのを想像してました。
    ぶっ飛んでて、
    ひっかきまわして軽い事件を起こして笑、
    最後は何だったんだろう、
    でもなんか良くなってる、みたいな。笑

    そんなイメージとは全く違いました。苦笑

    患者さんが多くて、
    ひとりひとりゆっくりと話しを聞く暇もない。
    総合内科は青島先生と看護師のミカの二人だけ。
    訪れる患者さんを診ているうちに、
    病気を通して、
    患者さんを取り巻く環境まで理解し、
    何に対処すべきかを導き出していく。

    突飛だったり、斜め上というわけでもなくて、
    青島先生はちゃんと医師として診察を行っているので、
    安心して見守りながら読み進められる一冊です。

    こーゆーシチュエーションや環境は、
    どこかにあるんだろうなあって。
    他人事ではなかったです。

    特に病気やケガをすると、
    100%の自分ではいられないし、
    行動も制限されれば生活を見直さなければいけないし、
    年齢を重ねれば重ねるほど、
    思った動きはできなくなっていくし。

    青島先生のように思っていても、
    なかなか実行できない現実もあるんだろうなあ。

    みんなが悩んで迷ってるなか、
    青島先生が診察をもってヒントをくれます。
    癒されたい方にお勧めです…!

  • 医学系研究科修了の作家ならでは。これはシリーズ化あり。

  • 爽快な読後感。
    こんな先生が側にいてくれたらな、現代に絶対必要なクリニック。
    倫太郎先生とミカちゃんをもっと見たい。

  • 続編がでて欲しい作品

    重い話になりそうなテーマを取り扱っているが、個性的な登場人物や間にスイーツ休憩がある為暗い気持ちにならずに読み進められた

  • こんな先生や医療従事者がふえればいいなぁっと思った。

  • 僕も青島総合内科に行きたい。
    「総合内科 開院」と「血圧陰謀論」が好きです。

  • 白衣高血圧の私は『血圧陰謀論』に興味を引かれて読みはじめました。でも結果的にいちばんあれこれ考えさせられたのは『奇跡のメソッド』。

    学生時代から手指の湿疹に悩まされていましたが、約10年前、もうステロイドが効かなくなっていると感じ、思いきって脱ステ&脱保湿に挑戦した過去があります。

    このタイトルにこの装丁ならばひたすら和みながら読める話だろうと思っていたけれど、弟が癌になったときには自由診療の医師の話も聴きに行ったこともあったりして、私にとっては心穏やかではいられない話となりました。

    これが自由診療でなくなればいいなぁ。

    脱ステ&脱保湿の日記はこちら→https://blog.goo.ne.jp/minoes3128/c/4103d3b5e619ca49d3ddcfa4b9e18b4b

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著者プロフィール

せんかわ・たまき
1968年東京都生まれ。大阪大学大学院医学系研究科修士課程修了。大手新聞社在籍中の2002年に書いた小説『感染』が第1回小学館文庫小説賞を受賞し、作家デビュー。その後執筆活動に専念し、医療問題を中心に社会性と娯楽性を兼ね備えた作品を発表する。著書には『転生』『繁殖』『誤飲』『疑医』『鬼嵐』などがある。本作は『幸福の劇薬』に続く「医者探偵・宇賀神晃」シリーズ第二弾!

「2020年 『偽装診療 医者探偵・宇賀神晃』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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