罪を償うということ: 自ら獄死を選んだ無期懲役囚の覚悟 (小学館新書 み 11-1)

著者 :
  • 小学館
3.43
  • (1)
  • (6)
  • (6)
  • (0)
  • (1)
本棚登録 : 85
感想 : 6
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (269ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784098253937

作品紹介・あらすじ

2件の殺人を犯した無期懲役囚の獄内ルポ

「被害者には本当に申し訳ないことをしました」「心より反省しています」「今後このような事件を犯さないようにまっとうに生きていくつもです」
これらの言葉は凶悪事件を犯した犯罪者たちの多くが、裁判などでよく口にする言葉だ。心より反省し、更生していく者もいるが、
しかし、このような言葉をどこまで信じていいのか。
2件の殺人事件を犯し、無期懲役囚となり、現在も四半世紀以上を刑務所内で過ごしている著者によれば、
受刑者の多くは「仮釈放」が欲しい、少しでも刑期を短くしたいために反省した「ふり」をしているだけだと言う。
囚人同士の間では、自被害者のせいにして、自分のした行為を正当化するばかりで、強盗殺人犯も連続レイプ犯も薬物中毒者も同様だと。
一方で最近の刑務所内はテレビも映画も観られて、更生施設とは思えないほど緩いとも指摘する。
「罪と罰」とはなんなのか。著者が見た凶悪犯罪者たちの本音と知られざる最新の監獄事情を獄中からルポする衝撃のノンフィクション。



【編集担当からのおすすめ情報】
著者は、仮釈放を固辞して獄死という選択をしました。その理由を「人殺しに贖罪はできない。奪った命を蘇らせることはできないから」と話しています。数年にわたって往復書簡のやりとりをしていますが、丁寧な文章からは2人を殺めた人者とは思えないほど理性的かつ教養の深さを感じます。おそらく犯罪に手を染めなければ一般社会でもひとかどの人物になっていただろうと思います。そんな著者の客観的に見る囚人たちの本音と建て前、そして入った人間にしかわからないLB刑務所(刑期10年以上で犯罪傾向の進んだ受刑者のみが収容される)の生々しい実態をご覧ください。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • LB級刑務所の中の人によるその住人の実態レポートは唯一無二でとても興味深い。被害者には過酷な話であるが、犯罪者は裁判の時はしおらしくしていても、本音では悪いのは被害者の方と信じて疑わない自己中心的なものが大多数である。また、それをベースにした死刑の犯罪に対する抑止力の議論は納得がいくものだった。それにしてもこれだけの書をものにできる著者は、もし犯罪を起こさねばシャバで一角の人物になっていただろうに。。。

  • ●LB(longとB)級刑務所。長期の凶悪犯が入る。2009年までは、旭川、岐阜、徳島、熊本、今は増えた。女子W外国人F26歳未満Y精神障害M身体障害P。
    ●全国で60カ所以上あり、2007年6月1日に施行された「刑事収容施設及び非収容者等の処遇に関する法律」は明治41年の「監獄法」以来の改正で、従来より受刑者の権利や生活が大きく変わりました。
    ●女性受刑者の65歳以上は15%とあり、増えています。詐欺が多くなるのが特徴ですが、無銭飲食のこと。再犯となれば、たかだか1000円程度の無銭飲食でも2 〜3年の懲役刑となります。
    ●北海道は人気。涼しいわ優しい。
    ●毎日テレビが見れて休みは映画。
    ●無期懲役刑受刑者の仮釈放は今では30年以上と厳罰化されている。有期刑の上限が30年に伸びたから。無期囚は2017年末時点で全国で1800人ぐらいいる。
    ● 1線を超える受刑者と普通の違いは、エゴイズムの強さと倫理観の欠如。受刑者にとって自分の行為は「常に正しい」。それらは「お仕事」であり、「生きるための手段」と言う捉え方をしている。だからそれを邪魔して捕まえよう通報しようとする相手は悪にしか見えません。
    ●保護会。更生保護施設として全国に103カ所あり、主要店は2385人です。毎年の出社はおおむね2万人と言うことでとても足りるものではありません。食費のみ1日1000円必要。
    ●刑務所にいる受刑者は、IQ 100の人が約8%弱しかなく、大半がそうでない人なのでよほどでない限り目立ちません。
    ●覚せい剤犯罪者に至っては、定期的に服役するから、肝臓など回復するわけで、服役なしでは体がもたないでしょう。
    ●「それは法的な罰に対して務めただけで、命を奪ったことへの償いにはなりません。償いとは生きて返すことであり、殺人罪に償いはありません」
    ●死刑の抑止力。モンテスキュー「被害者遺族に対して、救済しよう、応報感情を満たしてやろうという刑罰が無ければ、法の下の正義とは何か?」
    ヘーゲル「我々の行為の戒律が普遍的であるかのように振る舞うことだとするならば、彼を殺すことは、彼の選択した戒律を施すことであり、彼の行為を普遍性として認めることに他ならない」


  • どこまで現実か、自分の見ている世界は何なのか?
    結局、人は人を裁くことはできるのか、ということにいきつきそう。

  • 凶悪犯は反省などしていない…
    死刑は抑止力になる…

    法務省の新入受刑者に課する知能検査の結果
    標準IQ100以上 7.6%しかいない
    69以下 23%もいる…

  • 持論の部分がとにかく読みにくいんよ。あえて難しい言葉つかうし知識ひけらかしたがるし「思春期ど真ん中かよ」と突っ込み入れようとしたら、刑期ど真ん中だった。

    でも塀の中の情報や分析はとっても面白いし価値がある。唯一無二。その点においてはとても面白かった。

    ・人を殺人に駆り立てるのは怒りの情動と合理化
    ・ベースにエゴイズムの強さ、倫理観の希薄さと欠如
    ・盗みを発見され自分の身に危険が及ぶと、その相手に怒りが湧くのが服役者にとっては自然なこと。相手は悪であり自分は善。
    ・服役者には上記の思考回路を持つものしかおらず、同調が重なると思考はさらに堅固になる
    ・刑務所に戻ることが生きる上で合理的になる老齢受刑者「放火は刑期が長い。狙い通りだったのでよかった」
    ・一見無期囚も普通の人だが、自分のエゴが起これば相手のことも法も考慮しなくなる二面性が潜んでいる。
    ・死刑制度の犯罪抑止力が発揮されるのは再犯を繰り返す受刑者である

    なるほどなるほど……と読んだ。

    ただこの人も2人殺して未だに「自分の人生は自分のもの」とか言ってるような人なので、フィクションと思って読むべき。分析が正しくてもこの人は世間にとっては正しくない。殺人を犯した人が生き生きしてしまえば、それこそ懲役刑の抑止力にならんのでは?筆者が何を叫ぼうが、鳴り響くのは塀の中でなければいけないでしょうよ。

全6件中 1 - 6件を表示

著者プロフィール

美達大和
1959年生まれ。無期懲役囚。現在、刑期10年以上かつ犯罪傾向の進んだ者のみが収容される「LB級刑務所」で仮釈放を放棄して服役中。罪状は2件の殺人。ノンフィクションの著書に『刑務所で死ぬということ』(小社刊)のほか、『人を殺すとはどういうことか』(新潮文庫)、『死刑絶対肯定論』(新潮新書)、『ドキュメント長期刑務所』(河出書房新社)、『私はなぜ刑務所を出ないのか』(扶桑社)、小説に『夢の国』(朝日新聞出版)、『塀の中の運動会』(バジリコ)がある。また「無期懲役囚、美達大和のブックレビュー」をブログにて連載中。http://blog.livedoor.jp/mitatsuyamato/

「2022年 『獄中の思索者 殺人犯が罪に向き合うとき』 で使われていた紹介文から引用しています。」

美達大和の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×