少年 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101001067

感想・レビュー・書評

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  • 旧制中学の寄宿舎での美しい後輩・清野との淡い愛。彼との書簡、当時の日記、学校の綴方で書いた作文とを引用しながら、齢50歳の川端が追想する。川端が清野に特別な想いを寄せていたのは思春期特有の心理的な動きだと思うが、それとは別に肉親との縁が薄かった川端の人恋しさもあったと思う。思春期の肉体的な欲求と恋や愛への憧憬、苛む孤独が清野への愛着となって現れたのではないか。中学生当時、清野は川端の心の拠り所であり、青春の思い出の象徴でもあったろう。最後に会ってから30年経った今でも感謝を持ち続けていると川端は書いている。清野がいなければ川端はもっと違った人間になっていたかもしれない。

  • 日常の何気ない描写の美しさは星5つ、内容については私の理解力不足ゆえの星2つである。

    川端康成といえばどちらかというと少女趣味のようなところがあると思っていたが、「寄宿舎」「少年愛」といううたい文句にまんまと釣られ購入(いわゆる腐女子根性である)。

    初の文庫化ということで早速読んでみた。

    本筋である清野少年とのあれこれよりも、当時の生活の描写、そして寄宿舎で起きたときの朝靄の描写などは本当に美しくそして気高いものであり、今のスマホパソコン世代、いや、4K、8K世代にはできない描写であると感じた。
    ぎょっとするようなことも、さも平然であるかのようにさらりと書いてある。
    それゆえの川端康成らしさを強く感じた作品でもあるけれど、良くも悪くも堂々巡りのような印象が否めずやや退屈はしてしまった。

    あと、凡人の感想として「当時から新興宗教ってあったのね」みたいな発見もあった。

    回想録というかエッセーというか、であるので、あわよくば長野まゆみあたりの想像をして購入すると期待外れになるのでご注意を。

  • もし期待して読もうとする人がいたら伝えたい、案外そんなことないよって
    短い話で読みやすい、けど頑張って読む甲斐はないかもしれない。でも次は伊豆の踊り子を読みたいと思った。一応それっぽい感想を言うと川端康成特有の孤独感、悲壮感があってエモいけどちょっと失敗したかも。けどやっぱり時代を考えるとこれが精一杯なのかなと

  • 清野少年と川端青年(回想なので御年50歳)との恋とも兄弟愛ともつかない水泡のような関係。
    「どんなにお苦しいことがあっても、私は蔭ながらあなたのお心をお慰めいたしますでしょう。」清野君の素朴な手紙に胸打たれます。それに比べて川端ったらなぁ。。。
    30年前の川端の訪問以降、再会の機会のなかった2人、手紙も日記も焼却した最終ページには空白が取り残され、紙を焼いた煙は何処に消えて行ったのでしょう。

  • 恥ずかしながら、源氏物語を愛読されていた事をこの本を読んで知りました。
    かな文学のような、やわらかな美しさがあると感じていたので納得。
    文章が静かでとてもきれい。
    やはり思春期には生い立ちや孤独、人への希求があったんだなぁ。

  • 川端康成の作品を初めて読んだのでいまいち作者の人となりがわからないのだが、この本は自身の少年〜青年期を振り返ったものということで良いのだろうか。
    自身の書いた手紙をみつけるがまま順に書き連ねていったという感じで、時系列がばらばらで把握しにくいのだが、文章自体は読みやすかった。

  • 良いと思わない。私小説。いわば川端なりの仮面の告白であるが、整然としない。少年期を丁寧に書けるかは、ひとつ作家の重要な指標だが、これはどうなのか。原点を振り返るという意味で、トルストイや三島は確かに上手い。
    肯定的に捉えるのであれば、「伊豆の踊子」の裏作品として読まれるべきである。また、川端康成研究上は不可欠ともいえる。
    後書きはエッセーだが、川端康成の女性からは「匂い」がしないという。それは谷崎に比べればそうであろうが、「眠れる美女」などを読んだことがないのだろうか。

  • 書簡や日記の抜き書きで読みにくかった。

  • 旧制中学のころの川端康成の文章がうますぎる。ノーベル文学賞をとることになる素地が垣間見える。しかし、文通相手の清野少年の文章も美しい。全体を通して日本語の美しい響きを教えてくれる。そのうえに、川端少年の思春期の心模様が映し出されて、なお美しい。

  • タイトルから気づけばよかったものの、苦手な分野の作品でした。まさか川端がこの世界を題材にするとは思いもしなかった。とはいえ、その世界観を除けば旧制中学校での生活が垣間見られて、その点は興味深く読むことができた。

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著者プロフィール

一八九九(明治三十二)年、大阪生まれ。幼くして父母を失い、十五歳で祖父も失って孤児となり、叔父に引き取られる。東京帝国大学国文学科卒業。東大在学中に同人誌「新思潮」の第六次を発刊し、菊池寛らの好評を得て文壇に登場する。一九二六(大正十五・昭和元)年に発表した『伊豆の踊子』以来、昭和文壇の第一人者として『雪国』『千羽鶴』『山の音』『眠れる美女』などを発表。六八(昭和四十三)年、日本人初のノーベル文学賞を受賞。七二(昭和四十七)年四月、自殺。

「2022年 『川端康成異相短篇集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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