1Q84 BOOK2〈7月‐9月〉前編 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (345ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101001616

作品紹介・あらすじ

心から一歩も外に出ないものごとなんて、この世界には存在しない──君たち二人の運命が、ただの成り行きによってここで邂逅したわけではない。君たちは入るべくしてこの世界に足を踏み入れたのだ。この1Q84年に。……雷鳴とどろく夜、青豆はさきがけのリーダーから「秘密」を明かされる。天吾と父親の宿命的な再会、そして猫の町。二人が迷いこんだ世界の謎はまだ消えない。

感想・レビュー・書評

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  • 〈7-8〉前編 3
    1Q84年に不穏な空気が流れ始める。
    ふかえりの失踪。牛河という天吾の監視者の登場。
    「さきがけ」リーダーという男の幼児虐待的行為を知る老婦人。
    「一九八四」との接点として天吾とふかえりの「空気さなぎ」をパンドラの箱を開ける思考的犯罪と表現される。この小説半ばまで空気さなぎを抽象的にしかわからなので、納得するのは難しいところ。確か次の巻に全容が出てきたと思うけれど。
    天吾は認知症の父を施設に見舞う。そこで自分の出自を確認する。ここで「猫の町」という作中作が出てくるのだけれど、その町に紛れ込むといった趣向。
    青豆は、老婦人に依頼されさきがけのリーダーと対面となる。彼との会話から、彼がリーダーとしてのカリスマ性、スピリチュアル性を持っている事が示唆される。と、この辺りが受け入れ難いんですよね。小説として読むのには良いのですが、作者が近過去というのであれば、「アンダーグラウンド」等でサリン事件の被害者達に寄り添った長きに渡る取材やその思いは、どうするんだろうって。

    なかなか長編、まだ半分。

  • 前半最後のヤマ場を迎えた。
    青豆のためらい
    緊張感の中、リーダーと青豆の対話が
    重ねられていく。
    全てがわかったうえで横になったリーダー。
    予想していた通りだったが
    二人の命懸けの?対話が深く興味深い。

    天吾と青豆が教団と
    どう関わっているのか
    関わらざるを得ないのか
    次が楽しみ。

    まさに長編の紙芝居。

    個人的にはふかえりに
    ひかれる。

  • 猫の町。

  • 2009年に『BOOK1』と『2』が出た時、読者に『BOOK3』が出ることは知らされていたんだっけ?
    当時、1年後に続きが出るみたいなことを聞いたような気もするんだけど、定かではない。

    ということで、『BOOK2』の前半であるこの『前編』は、『BOOK1』と『2』という物語のクライマックスとも言える展開になっている。
    言ってみれば、「スターウォーズ/エピソード6」での皇帝と対決するために敵地に乗り込むルーク・スカイウォーカーという展開(?)だw

    ……のはずなのだけど、「さきがけ」のリーダーときたら、青豆に「殺して」、「殺して」、「楽にして」と言うばかりだし。
    青豆は青豆で、こんなに苦しんでいるのなら殺す必要はないと考えるようになるという、ミョーに間の抜けた展開になる(爆)

    そのくせ、読んでいて変に緊迫感があるのは、青豆とリーダーの間で交わされる会話が「1Q84」世界の根幹に関わることだからだろう。
    と言っても、「さきがけ」のリーダーはどこぞのミステリー小説の変人探偵のように、「空気さなぎ」とはなんぞや?、「リトル・ピープル」とはどういう者たちか?、と掌を指すように正解を教えてくれるわけではない。
    青豆と二人して、わかったような、わかんないようなことを言うばかりだw

    というのも、これを書いているのは村上春樹なのだ。
    『みみずくは黄昏に飛びたつ』で、“物語というのは、解釈できないから物語になるんであって、これはこういう意味があると思うって、作者がいちいちパッケージをほどいていたら、そんなもの面白くもなんともない。”とのたまわっちゃう人なわけだ(^^ゞ
    つまり、読んでいて変な緊迫感を感じるというのは、自分がこの小説を読みながら、なんとなく考えていた「空気さなぎ」や「リトル・ピープル」を、リーダーと青豆の会話から、そして同時並行でなされる天吾とふかえりの会話から、さらにイメージを膨らまし、自分なりのそれに形づけていくのがエキサイティングだからだろう。

    P299~300でリーダーが言う、
    「世間のたいがいの人々は、実証可能な真実など求めていない。真実というのは大方の場合(中略)強い痛みを伴うものだ。(中略)人々が必要としているのは、(中略)美しく心地良いお話なんだ。だからこそ宗教が成立する」
    「Aという説が、彼らなり彼女なりの存在を意味深く見せてくれるなら、それは彼らにとって真実だし。Bという説が、彼らなり彼女なりの存在を矮小化して見せるものであれば、それは偽物ということになる。(中略)もしBという説が真実だと主張するものがいたら、人々はおそらくその人物を憎み、黙殺し、ある場合には攻撃することだろう。」
    「論理が通っているとか実証可能だとか、そんなことは彼らにとって何の意味も持たない。多くの人々は、自分たちが非力で矮小な存在であるというイメージを否定し、排除することでかろうじて正気を保っている」
    ……なんかは、宗教をめぐるあれこれについて正鵠を射ているのみならず、新型コロナについての言説や行政の方針に対する人々の反応、さらには、ネットの誹謗中傷等々、まさに現在に当てはまる。

    とはいえ、ま、大衆がBの説は嫌だからAの説を信じて、それに応じた行動をしていくっていうのは、ある場合においては、それが適応というものであるかもしれないし。
    適応というのは、進化でもあるわけだから、それはもうどうしようもないことなのかもしれない。

    また、2000年代半ばくらいに書かれた(?)それが新型コロナにみまわれた時の状況、あるいは現在の世の中に当てはまるというのは、たんに世の中がどんなに変わろうと人の本質は変わらないということなのかもしれない。
    つまり、人というのは誰しも、人の成すそれが愚かだとわかっていながら、気づいたらその愚かなことをしているだけの、“矮小な存在”ということなんだろう(^^ゞ
    実は、誰もがそのことに気づいているからこそ、いつの世も、人は「自分が信じられるナニカ」を激しく求めるのを止められない。
    それは、著者の小説を「自分が信じられるナニカ」として激しく求めることと、おそらくは同じで。
    これって、もしかしたら、著者は無了見に自分の小説を信奉する人たちに向けて書いたんじゃない?
    なぁ〜んて、書いたら怒られるのか?(^^ゞ


    「空気さなぎ」とは?、あるいは、「リトル・ピープル」とは?といった1Q84世界の謎に関することは、おそらく村上春樹の頭の中にも確固たるものはないんじゃないのかな?
    というのは、著者自身、それらの解釈をその場その場で(都合のいいように?)ビミョーにズラしているような気がするのだ。
    それは、やはり『みみずくは黄昏に飛び立つ』で言っていたように、“作者にもよくわかってないからこそ、読者一人ひとりの中で意味が自由に膨らんでいくんだと僕はいつも思っている。”ということなんだろう。
    つまり、この小説を読んでそれらが何を意味しているのかわからないからといって、そのことを解説しているサイトを見てしまうことで、それを自分の正解にして。
    そんな風に正解を確定させてしまったことで、考えるのを止めてしまうことは一番つまらないことだと、村上春樹は言っているんだと思う。
    それは、「猫の町」で天吾の父親が言う、“説明しなくてはそれがわからんというのは、つまり、どれだけ説明してもわからんということだ”に通じているように思う。

    ただ。
    実は、『BOOK6』の牛河のパートのラストがどうしても納得のいく答えが見つからなくて、それについては自分もネットで検索してみた(^^ゞ
    結局、そのことに触れているサイトは見つからなかったんだけど。
    何人かの解釈を読んでいたら、ふと、「あ、もしかして、そういうこと?」と思いついたこともあって。
    ネタバレサイトを見てしまうのも、(そこから自分なりにいろいろ考えたり、想像したりするのであれば)あながちワルいことだとは言えないのかもしれないなーと思った(爆)
    とはいうものの。
    ネタバレサイトって、多分にコピペがあるのか、どれも内容が已己巳己でw
    あれをいくつも読むのは、むしろ面倒くさかった(ーー;)


    個人的には、天吾が千倉に行くくだりがすごくよかった。
    千倉は、この小説の設定では「猫の町(=1Q84世界)」となっているわけだけど、それは、どこか懐かしさのある天吾に優しい町として描かれている。
    1Q84世界で浮かんでくる風景が、いかにも現代という感じのカッチリして輪郭をしているのに対して、千倉での風景は夢の中のそれのように輪郭が朧気なのだ。
    そこが個人的にいいんだとは思うんだけど、その反面、それは自分の中に漠然とある死への憧れだったりもするのかな?という気もして。
    その、ちょっとゾッとするところが、またよかったり(^_^;)


    それと、ストーリーとは直接関係ないのだけれど。
    著者はこの小説で折に触れて、本の出版をめぐる今の状況についての皮肉をストーリーに織り込んでいるような気がするのは自分だけ?(^^ゞ

  • 面白すぎる。

  • 時間を忘れて読み進めていく感覚は久々かもしれない。
    青豆の章に限っては物事がどんどん進んでいくので先がすごく気になる感じになっていた。天吾の章は比較的緩やかに物事そして時間が流れていくが、牛河とのやり取りや、父との会話で色々と重要な要素が小出しになってこれはこれで気になる。
    とにかく僕は次が読みたい。

  • 謎が深まるばかり。
    展開がすごく気になる。
    やれやれ。

  • 全部で6冊あるうちの3冊目。
    345ページ。先が気になる度★4。

    評価も先が気になる度も★5に近い。
    寝る前も読もうかなと思ってしまう。

    青豆編のつばさと天吾編のふかえりの謎が面白い。










    以下ネタバレ!!!



























    天吾と青豆は両思いだった!二人は会えるのだろうか。
    「彼女は放課後にやってきて、おれの手を握った。青豆はそのとき、彼の一部を持って行ってしまったみたいに思える。そしてそのかわりに、彼女の心か身体の一部を、彼の中に残していった」
    すごく良い。

    小説の中にある「猫の町」という本が実在するなら読んでみたい。


    【登場人物のメモ】
    つばさ
    青豆編に出てくる少女(ふかえり?)。
    突然姿を消した。

    小松 祐二(こまつ ゆうじ)
    小松の本名。

    深田 絵里子(ふかだ えりこ)
    ふかえりの本名。
    6/27 夜から失踪。

    戎野 隆之(えびすの たかゆき)
    戎野先生の本名。63歳。

    牛河 利治(うしかわ としはる)
    低身長、40代半ば、ぽっちゃりハゲ。
    他人を不快にさせる。
    財団法人 新日本学術芸術振興会 専任理事。
    才能ある若者に援助する団体と名乗っているが、宗教団体と繋がりがありそう。

    【内容メモ】
    青豆と天吾視点。

    青豆は宗教団体のリーダー(ロリコンレイプ魔)を暗殺しに会いに行った。リーダーは奇病に侵され苦痛の毎日を送っていて青豆に暗殺されることを望んでいた。
    少女達との営み中は恩寵で身体は動けないし感覚もなく、少女自ら子孫がほしくてやっていたことらしい。
    安らかな死を与えるよりも苦痛の毎日の中死んでいくことのほうが相応しいと思って暗殺をやめようとしたら、天吾の命の保証と引き換えに殺してほしいと交渉してきた。

    天吾は宗教団体から圧をかけられたが、その状況に対して流れに身を任せている。ふかえりと一緒に生活し始める。










    後半へ続く!!!

  • タマルの口から語られるチェーホフの銃のエピソードは他の人間には出せない凄みがある。村上春樹の描く職業人は仕事に無駄な感情を込めない、本当にいい仕事をするプロって感じでシビれる。にしても、作品全体が暗示と未回収の伏線のかたまりみたいな村上作品でチェーホフの銃とか言い出したらそれこそ自己矛盾みたいな感じもするけれど。自分が深く読めてないだけと言えばそれまでだけど全部説明されても興醒めだしね。それこそ「説明されないとわからないことは説明されてもわからない」のだから。

    天吾とふかえり、最強の男女デュオの力で開けられたパンドラの箱。「リーダー」の世界からすればそれは思考犯罪ということだがこの点が腑に落ちない、、。リーダーは世界の善と悪のバランスを取るために自分が死んでしまうことも厭わないが後継者が見つかるまで世界には空白が生まれるとも言っている。天吾ないしふかえり、あるいはその両方がリトルピーピルの声を聴くものであるならばそれはそれでリーダーにとって、悪くないのでは、、?単純に面白くないってことなのか、リトルピープル側がそれを許さないのか。謎は深まるばかり。

    色々話が散らばったけれどめちゃめちゃ面白い。

  • 少しずつ繋がりや表面的な形を見せ始める2つの月が見える世界。

    天吾と青豆の距離が少しずつ1本の線でリンクして引き合い始めるかのようで
    目に見えない強固な壁で隔てられ、近づきそうで近づかない距離。
    意味深にして核心を突きながらも謎をより深淵にしていく牛河の存在。
    「神は与え、神は奪う。」絶対なる存在ではなかったリーダー。

    人生の黄昏の領域。
    年をとるということの仄暗い部分の景色を
    見事に恐怖とともに知らしめる牛河の存在は不気味であり
    リアルで底知れない。

    認知症の父を囲う猫の町。
    精神的な此岸と彼岸。
    生物学上の父ではない父との初めての邂逅にも似た想い。

    現実という世界も、体という実体も
    少しずつ剥離されたたゆたう場所にゆらゆらと
    漂いながら眺めているようなBOOK2前篇。

    奇蹟は悪魔の誘惑。
    絶対的な善も悪もなく、流動的な善と悪のバランス。
    空気さなぎがもたらすものもそこに通じる
    答えなき答えなのか、善と悪は均衡を保つのか分離されるのか。
    空気さなぎがあるとすれば、ワタシはそれを開きたい。

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著者プロフィール

1949年京都府生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。79年『風の歌を聴け』で「群像新人文学賞」を受賞し、デビュー。82年『羊をめぐる冒険』で、「野間文芸新人賞」受賞する。87年に刊行した『ノルウェイの森』が、累計1000万部超えのベストセラーとなる。海外でも高く評価され、06年「フランツ・カフカ賞」、09年「エルサレム賞」、11年「カタルーニャ国際賞」等を受賞する。その他長編作に、『ねじまき鳥クロニクル』『海辺のカフカ』『1Q84』『騎士団長殺し』『街とその不確かな壁』、短編小説集に、『神の子どもたちはみな踊る』『東京奇譚集』『一人称単数』、訳書に、『キャッチャー・イン・ザ・ライ』『フラニーとズーイ』『ティファニーで朝食を』『バット・ビューティフル』等がある。

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