少女葬 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (448ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101012810

感想・レビュー・書評

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  • 一見同じ様な境遇の二人の少女が、対照的な運命を辿ります。
    気の毒としか言いようのない少女が可哀そう。
    もう片方はいわゆる優等生なわけで、それなりに危険回避している。
    衝撃的な作品ではありますが、何か物足りなさを感じました。

  • ひでー話だわー。

    同じ境遇でどう転ぶかは、判断と運次第。

    分かってはいるけど、ここまでまざまざと見せつけられると、なんともやるせない気持ちになる。

    まともな会話や理屈が通じない人間しかいない世界は怖いね。


  •  あ、こいつが死ぬ奴だ。
     プロローグではリンチで殺された少女の一枚の写真から話が始まる。
     著者の受賞作「赤と白」では火事現場から見つかった少女の焼死体が話の始まりだった。
     何も考えず周りに流されて、ただ可愛いだけの女の子は死ぬ。
     大体そんなパターン。

     さて、本作では荒廃した格安シェアハウスを舞台に、二人の少女の人生が一方は好転、一方は奈落の真逆の方向に向かう様を描いている。
     出会った二人は同じ家出少女だった。
     それなのに、物語が進むに連れて二人の進む道はどんどん離れていく。
     年金ビジネスは貧困小説でよく見るテーマ。
     そのビジネスを見る視点が十代の少女というのは新鮮だ。
     

     父親が支配する家から逃げ出し、綾希がたどり着いたのは無法地帯で汚くて、タコ部屋同然のシェアハウスだった。
     男女に別れた部屋には、一部屋に2つ二段ベッドが置かれ、個人のスペースは湿り気を吸い込んだベッドの上しかない。
     ただ安く、身分不詳でも入れる、ここ以外に行く場所がなかった。

     しばらくして、綾希の下の段のベッドに入った同年代の少女、眞実も家出少女だった。
     二人は、このシェアハウスの中で仲良くしていく。
     しかし、二人はそれぞれの出会いに寄って、人生を全く違う方向に進んでいくことになる。

  • 図書館で借りた本。シェアハウスで暮らす高校生だった家出少女の綾希。父親のパワハラ支配、父親に服従しかできない専業主婦の母親。お年玉を貯めた金を持って突発的に家出した綾希がたどり着いた貧困の人々が集まったシェアハウス。訳あり人物のオンパレードで泥棒は当たり前。綾希はここからの脱出を目指す中、真美という同世代の子と仲良くなったのだが…後半は真美の生き様。継父からの性的虐待や実母の女としてのライバル視を受け続けた真美は家出しシェアハウスに。そこからの転落していく様は胸糞展開に。貴重な10代というのは歳を重ねないと気づかないだろう。

  • 最近流行りの貧困や虐待をテーマにした作品。
    ちょっと食傷気味だけどそこそこ楽しめた。
    心に響くものがないんだよね。
    角田光代さんとかが待ち遠しい。

  • 敷金礼金保証人不要、風呂・トイレ・キッチン共同、家賃は破格だが、パーソナルスペースは2段ベッドの上だけ。ワケありの者だけが集まる劣悪な環境のシェアハウスで知り合った二人の家出少女・綾希と眞実。互いに友情を抱き励まし合って暮らしていた二人がたどることになった、あまりにもかけ離れた道。

    綾希はシェアハウスを出て、仕事も得た。眞実は凄惨なリンチの果てに殺害された。二人の運命を分けたのは何だったのか?眞実はこんな目に逢わなければならなかったのか?読みながら考えずにはおれない。

    生活保護の不正受給とそれを搾取する者たち。貧困を食い物にする闇のビジネスの末端に組み込まれていく少年少女たち。社会のひずみや闇、今、確実にある現実を容赦なく描きながら、目を逸らさせない筆力が凄い。
    綾希と眞実、二人の「その日」が交互に描かれるラストは、あまりにも対称的で苦しくなる。
    眞実の死を自己責任と切り捨てることはとてもじゃないけど、できないよね・・・

  • 壮絶!こんな感じのコト、結構あったりするのかなぁ〜? コワイっす……。
    綾希のストーリーは、出来過ぎな気がするけど、良い人と出会えてよかった。
    そんな希望もなくちゃ読めない感じのお話です。

  • 劣悪なシェアハウスで出会った2人の家出少女。ひとりはその環境から抜け出し、もうひとりは凄絶なリンチの果てに殺された。少女たちの何が違って、どこで道が別れたのか。

    少しのきっかけで、弱者を喰いものにする貧困ビジネスに巻き込まれていく若者たち。フィクションなんだけど、この国のどこかで、そうやって使い捨てにされる人間がいるのかも知れないという恐さがある。

    調理師を目指し、厨房でバイトしながら資格を取りたいと言っていた眞実が、海里と出会い、どんどん楽なほうへ流されていく。
    彼女に、ほんの少しの賢さと、流されない芯の強さがあれば、少しは違ったのかも知れない。
    シェアハウスを出た綾希が、奇しくも眞実が目指していた調理師の資格を取ったのは皮肉なのか、それとも果たせなかった彼女の夢を叶えたかったのか。
    すれ違い心が離れたかに思えた2人が、最後の最後に親友になれたことが哀しくて切ない。

  • 貧困、孤独、社会からの離脱。弱者が食い物にされる現代を生きる少女たちの、リアル。一歩間違えば誰しもが転がり落ちてしまいそうな世界をすごく明瞭に写しだしている。終わりかたがイマイチしっくりこないのが、残念でした。

  • 貧困ビジネスやら、リンチ、いじめ、など見たくもない描写が出てくるが、なぜかぐいぐい引き込まれて読んでしまう。主人公の少女はもう一人の少女とどこが違ったのか考えてみたが、彼女にはひとつの芯のようなものがあったのかなと思った。

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著者プロフィール

1972年新潟県生まれ。2012年『ホーンテッド・キャンパス』で第19回日本ホラー小説大賞・読者賞を受賞。同年、「赤と白」で第25回小説すばる新人賞を受賞し、二冠を達成。著作には「ホーンテッド・キャンパス」シリーズ、『侵蝕 壊される家族の記録』、『瑕死物件 209号室のアオイ』(角川ホラー文庫)、『虎を追う』(光文社文庫)、『死刑にいたる病』(ハヤカワ文庫JA)、『鵜頭川村事件』(文春文庫)、『虜囚の犬』(KADOKAWA)、『灰いろの鴉 捜査一課強行犯係・鳥越恭一郎』(ハルキ文庫)など多数。

「2023年 『ホーンテッド・キャンパス 黒い影が揺れる』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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