小僧の神様・城の崎にて (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
3.59
  • (166)
  • (223)
  • (405)
  • (37)
  • (11)
本棚登録 : 3339
感想 : 257
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101030050

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • ありがとう、友よ。志賀直哉を教えてくれて。
    あああ、好き!!くらいの気持ちにひさしぶりになれた本だった。あとこの本を読んでいる途中に心境小説という言葉を調べてちゃんと知った。全き自己完成を目指す調和型の作品をこういうらしい。今までは私小説という言葉で括られるときの、その破滅的な要素が気になっていたが、こう区別されるとすっきりとする。

    「佐々木の場合」「流行感冒」「小僧の神様」「焚火」「冬の往来」あたりにぐっと惹かれただろうか。
    「佐々木の場合」は志賀直哉の文章に久しぶりに触れた感動も込みかもしれないが、安岡の「ガラスの靴」などに感じる好きさと似ている。幼さをどこかに持つくらいの年齢の二人の恋の顛末がこう描かれると僕は惹かれてしまう。
    「流行感冒」は本短編集のなかでもっとも好きであった。かなり「和解」と近い気持ちで読んだ。ある一人への気持ちの変遷、そして超克していくところにほんとうに気持ちがよくなる。最後の場面、石が帰ってきて会話を交わすところ好き。
    「小僧の神様」「焚火」。神秘的なものを感じた二作。「小僧の神様」は鮪の味がすべてを語っているのかもとおもった。「焚火」は彼のお気に入りだ。
    「冬の往来」は小説の終わり方はかなり大事だというのを再認識させられた作品。それは筋にかぎらず、どこの視線で終わるかみたいなことなのだけど。そういう事実を書いた話とそういう事実を書いたということを語る話はかなりちがうでしょう。

  •  白樺派の作品は初めて読んだかもしれない。残念ながら、あまり好きではなかった。
     志賀直哉氏の洗練された、クリアな文体には、谷崎潤一郎氏のような作家とは異なる独特な価値があると思う。しかし、道徳的な、あまりに道徳的な内容には辟易した。
     筋の道徳性が作品そのものの芸術的価値を高めるということはない。しかし、「貴族的」で「潔癖」で、「立派」なこの作品では、そこを履き違えたのか、無神経にも自身の道徳性を開陳しているではないか。本質的にはインスタ映えを求める、承認欲求の高い若者と何の違いがあろうか。

  • 意外と刺さらず。主題が捉えにくかった。自分は風景描写にあまり興味がないんだなと気づいた。時間を置いて読み直す。

  • 簡単な言葉を使っているためにさらりと読めてしまうが、ゆっくりと二度三度読むと文章の豊かさに驚かされる。特に情景や生命の描写では、視覚的な様子だけでなく冷やかな空気までもが伝わってくる。
    個人的には、さっぱりとして気持ちがいいストーリーの「赤西蠣太」や「小僧の神様」が気に入った。不倫の話は読んでいて辛かった。

  • 『NHK私の1冊日本の100冊 感動がとまらない1冊編』(https://booklog.jp/item/1/4056057419)にて小山薫堂さんが紹介していた『小僧の神様』が読んでみたくて気になって手に取りました。

    ついでに『志賀直哉の短編小説を読み直す』(https://booklog.jp/users/rebi/archives/1/4780311306)で紹介されている作品も読んでますが、それ以外の作品は特に読んでいないです。

    読んだ中で印象に残っている作品を挙げるとすれば『城の崎にて』ですかね。

    上述の文学講座とセットで読んでいたからこそ面白かったですが、エンタメを期待するなら世の中にはもっと面白い作品があるよねという感想です。

  • 本当に、長い時間をかけて読んだ。もうめっきりと読書量が落ちてしまった。忙しいから仕方がないとも言えるが、僕よりも忙しいのに僕よりも読む人はいるのだろう。別に誰かと比べても仕方がないのだが、そうは言っても、比べてしまう自分が出て来る。頑張れ頑張れ。

    志賀直哉は『和解』以来二冊目だが、短編集だと読み易くて好い。

    今ペラペラと見返してみて好かったなと思うのは『佐々木の場合』『赤西蠣太』『流行感冒』『焚火』『転生』『冬の往来』だが、それぞれ殆ど記憶に残っていない。唯一残ってると言っていいのは『焚火』を湖に投げて消火する場面。あれはよく残っている。それぐらい。

    後半の、男の浮気による夫婦関係の乱れの話はつまらなかった

  • 「城の崎にて」「赤西蠣太」「流行感冒」「小僧の神様」「転生」「濠端の住まい」が好きかな。

  • ◆城の崎にて…事故で死から逃れ、普段当然と傲慢にも思ってる事柄が、急に違って見える。木の葉の揺れの箇所、チャネリングが、ハッキリ違う点である。しかし、その後、呆気ないほどに無常のなんたるかがイモリの死でもたらされる。小津的といえるか?

    ◆好人物の夫婦…これもハッキリは書かれていないが、子のない妻の嫉妬と必死を夫は気付かずにいる様子を描いているように感じる。主題が隠してあると思われる。

    ◆赤西蠣太…これは映画人に創作意欲を掻き立てただけあって、快活でキャラクターは生き生きしている。 日本版シラノドベルジュラックのようだ。志賀直哉が、時代小説をどのように書いたか知らないが、現代小説よりもいいのではないかと思ってしまう。

    ◆流行感染…文章力の巧さをあえて差し引くことで、男の一人称の語り部にキャラクターが出る。志賀直哉は、男を馬鹿にしてる感じがある。石はADHDだと思う。

    ◆小僧の神様…軽妙、ペーソス、舞台のよう、入れ替わる小僧と議員Aの視点、特権階級と丁稚奉公の階級格差、寓話ではないと照れるラスト。

    志賀直哉は、皮肉屋ではない。優しい人で、偽善的ではないだけだ。

    偽善的ではない、ということで充分なのだ。
    最近のクリエイティブは、あんまりにも斬新さ残忍さを求めすぎる。



    全編所々フェミニズムを感じる。

  • 小僧の神様

    小僧にご馳走をしたことで、どこか不安な気持ちになったAに共感した。小心者であるという推察は多分ただしい。末尾に作者が登場するのは舞台裏を見ているようでおもしろいかった。

  • 城崎温泉でどうしても読みたくて。


    やや古文調というか、現代語とは違うのですんなり入ってこない。
    表現は回りくどくないのでそういう意味では読み取りやすい。


    そういえば泉鏡花も途中でダウンしたな〜と思い出した。


    肝心の中身もそんなに良いとは思わなかった。
    城崎温泉を実際に目で見て感じながらこの本を読めたのは嬉しかったけど。


    湊かなえの『城崎へかえる』も読んで、こちらは気に入った。


    4/23追記
    好人物の夫婦を読見返して評価が変わった。
    この話面白いぞ!旅行について押し問答をするときの細君がかわいい。
    星3に上げとく。

全257件中 61 - 70件を表示

著者プロフィール

志賀直哉

一八八三(明治一六)- 一九七一(昭和四六)年。学習院高等科卒業、東京帝国大学国文科中退。白樺派を代表する作家。「小説の神様」と称され多くの作家に影響を与えた。四九(昭和二四)年、文化勲章受章。主な作品に『暗夜行路』『城の崎にて』『和解』ほか。

「2021年 『日曜日/蜻蛉 生きものと子どもの小品集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

志賀直哉の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×