くまちゃん (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
3.81
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本棚登録 : 2719
感想 : 247
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  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101058283

感想・レビュー・書評

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  • ★3.8
    くまちゃんという男から始まり、振られる側に常に焦点を置きながら、振られる側が何を思ったのか、そしてその人を振った相手がが次の章では振られる側、、という面白い構成の本。
    おもしろポイントは、同一人物のことを書いているのに、主観と客観でだいぶ印象が違う描かれ方なこと、その印象の違いは、単純に、主観客観だけの違いもあれば、時の経過や関わる人でその人自身が変化したことによる違いもあって、そこがおもしろい。人だな、と思う本。

    ひとつの恋愛やその中で起きた事実でさえも、たくさんの見方、少なくとも自分の捉え方と相手の気持ちと2通りの見方があって、、改めて、人にはその人の事情やこれまでのその人を形成した歴史があるんだな、と思う。


    _φ(・_・
    自分の精神というものも入社時にぴたりと止まり、何も吸収しないまま伸びないばかりか、縮んでいくのではなかろうか、と時々考える

    普通で平和な毎日が決してわたしをだめになんかしない。そういう日々の先に私にしか手に入れられないものがある。

    大人になってよかったねと思わず抱きしめて頬擦りしたくなる

    ずっと見ていたいというのは、美しいという言葉とおんなじだ

    何かをやりたいと願い、それが実現するときというのは、不思議なくらい人が気にならない。意識のなかかから他人という概念がそっくりそのまま抜け落ちて、あとはもう自分かしかない。自分が何をやりたいしかない。

  • 失恋話⁉︎
    誰かを振った人が誰かに振られ、また誰かが振った人が誰かに振られる話。

    自分が振られた時に読んだりもう少し若ければ楽しめた本なんだろうなぁーと‥‥。


  • p.277のなんてことだろうからの文章にぐさっときました。
    さらさらとは読めなかったけど、おもしろかった。

  • 振られるお話短編集。あーこの人いつかひどい振られ方して欲しいー!って思ったら次の話で振られるのでスッキリ。自分がその立場になってやっと前の恋愛で相手の気持ちを理解しててその辺もよかった。

  • 図書館で。
    惚れこんでる方が恋愛では優位に立てないんだなぁというのがよくわかるお話、というか。大体ろくでもないなぁという人が次の話ではこっぴどく振り回されるのがなるほどねぇという感じというか。それにしても恋愛脳だなぁ、登場人物のほとんどが…なんて思いながら読みました。

    それにしても女性陣は思い切りが良いな。男と付き合うために仕事辞めるって描写がそこここに出てきてちょっとびっくり。いやぁ、経済力大事よ?なんて思いながらこれにかけちゃうって辺り女は度胸だなぁと…感心はしないけどまあすごいなぁなんて思いながら読んでました。
    まあそんなこと言ったら花見の席で初対面の男の子を持ち帰るなんて無いだろうし、学生時代からのアイドルと付き合うこともまあ現実ではあまり無いだろうからそんな心配ご無用といえば無用なのかもしれないけれども…
    恋愛脳スゴイ、としか感想が出てこない辺りでまあ恋愛小説には向かなそうだな、なんてぼんやり思いました。

  • 男女の恋の始まりと終わりは、その時に自分にとってそれが必要だからというのは納得がいく説だ。だから、始まりと終わりがあるのは当然なのかもしれない。ともに変わり続けることができれば、長い付き合いになるのかな。オイラは久信が文太を慕う気持ちがいちばんリアルだった。キスもセックスもないけど、会うことが嬉しくてしかたない男はオイラにもいる。女の子とデートする訳でもないのにスキップしてしまうのではないかと思うくらいワクワクしてしまう男って確かにいる。オイラにはその毛があるのかも?と思うことがある。そいつみたいになりたいっていう尊敬なのかな。相手が男でも女でも、ワクワクドキドキさせられるような自分でありたいものだ。そして、ワクワクドキドキさせてくれる人がいるというのは大きなエネルギーだと思う。

  • 14/10/26

    角田光代さんの本読み漁ろうその2。
    『くまちゃん』てすごく聞いたことあって読みたいなあと思っててようやく読めました。仕事に対する不安がすごく生々しくて、ひりひりしながら読みました。『浮き草』では物静かな人のように扱われてた久信さんが『光の子』では、[なんだとこのブス。偉そうに。]とか、[何言ってんだこの女。わかったようなこと言いやがってこのブス。]とか心のなかで思っててすごくおもしろかった。笑

    P342-
    だれも彼も、それぞれの痛みを今もって抱えていて、奇妙な暗闇のなかを歩いていて、ただ「痛いよう」「暗いよう」と言いたいだけなのだ。その痛みや暗さを、いくら言葉を費やして話したところで、現実味を持って共有してくれる人はいないとわかりつつ、ただそうしたいだけなのだ。発展性はまるでない、進歩も前進もない、前向きさのかけらもない、そういう場所をこそ、さっきの女たちは求めているのだろうとこずえは理解したのだった。もちろん、自分も、である。

  • 失恋リレー。
    読んでいて、あーこの人も失恋するのかーって悲しくなるけど読んじゃう。
    主人公たちが昔の恋人のことをだんだん歳をとるごとに忘れていってるのが悲しい。あと、二人の温度差にも悲しくなる。

  • 失恋をテーマにした連作の短編集。久々の角田光代作品だったが読みやすく面白かった。
    人それぞれに恋愛に対する価値観や想いがあり恋人関係の奥深さを感じた。恋愛が人生に与える影響は凄まじく仕事の恋愛がよく対比される理由が分かった。特に女性視点の失恋に感情移入できたのは良い体験だった。

  • ふった人が次ではふられ、という具合に進んでいく恋愛短編集。登場人物たちは何度も恋をしてはふられます。誰かを好きになるのだって少ないチャンスなのに、さらにそれを実らせて維持する事の難しさ。でも人は懲りずに誰かを好きになる。お互いに必要だと思える人を探し求めて続いていくんだなと思うと、失恋小説ではありますが希望を感じます。
    それにしても角田さんの料理の描写は美味しそうです。作中の、ダサくて貧乏くさい料理て言われている料理がおいしそうなので、そう言われて逆にむっとして、家庭料理のなにがダサいのだ!とつっこみたくなりました。

著者プロフィール

1967年神奈川県生まれ。早稲田大学第一文学部文芸科卒業。90年『幸福な遊戯』で「海燕新人文学賞」を受賞し、デビュー。96年『まどろむ夜のUFO』で、「野間文芸新人賞」、2003年『空中庭園』で「婦人公論文芸賞」、05年『対岸の彼女』で「直木賞」、07年『八日目の蝉』で「中央公論文芸賞」、11年『ツリーハウス』で「伊藤整文学賞」、12年『かなたの子』で「泉鏡花文学賞」、『紙の月』で「柴田錬三郎賞」、14年『私のなかの彼女』で「河合隼雄物語賞」、21年『源氏物語』の完全新訳で「読売文学賞」を受賞する。他の著書に、『月と雷』『坂の途中の家』『銀の夜』『タラント』、エッセイ集『世界は終わりそうにない』『月夜の散歩』等がある。

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