しろばんば (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (592ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101063126

感想・レビュー・書評

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  • 井上さんの幼少期を描いたとして非常に有名な作品です。

    大正時代の日常生活の様子が非常によくわかり、人と人との付き合い方が、主人公の洪作の目線、感情を通して描かれている部分が非常に興味深かったです。日常の一コマ一コマが描かれているのですが、洪作とおぬい婆さんの生活、やり取りが読み手を大正時代に引き込みます。あるいは、自分自身が幼少期だった頃の記憶へと導いていきます。
    実際、自分自身も今は亡き大好きだった祖母を思い出しました。幼少期の夏休みに祖母の家で過ごしたこと、一緒に布団を並べて寝たことなど、大きな出来事ではなく、何でもない、ちょっとした祖母とのことを鮮明に思い出していました。

  • 少年時代の自伝的小説。小学生の少年洪作が曽祖父の妾であったおぬい婆さんと共に過ごす中で様々な出来事を経験して成長していく過程を描いている。

    多感な少年期の感じ方を本当に上手に表現しており、読んでいてこんな気持ちだったな、という箇所が多数あった。また、変に感動させるという意図も感じさせないところもまた良い。おぬい婆さんとのやり取りが心暖かと同時に少し切ない。少年文学の傑作と思う。

  • 中学生くらいに読んで、なんだか印象に残っていて…
    30代も後半になり、無性に読みたくなっての再読です。

    子どもの頃は、おぬい婆さんが寝床にいる洪作にお菓子をあげる「おめざ」なる習慣や、妊娠すると酸っぱいものが食べたくなるのだ、という新知識の印象だけが鮮やかに残っていて、後半のストーリーはうろ覚えだったのだけど、この年になって読み返すと、親戚の面倒くさいアレコレや、親や親戚がガミガミうるさく言うことの方に共感しちゃって、楽しめました。

    特に大きな事件が怒ったり、ハラハラドキドキさせるわけではなく、淡々とした日常と心の変化を描いているのに、次を読みたくてたまらなくさせる、こういうのが名作っていうんだなー と感心してしまいました。

    おぬい婆さんの年になったらぜひまた再読したいです。

  • 小学校の頃、受験塾の授業で出てきて大好きだったお話。

    でも大学生になった今、
    小学校の頃読んだときとはやはり感じ方が違う。
    小説の中に出てくる覚えてた様々なエピソードも、
    今読んだら違うイメージを持つ。
    やはり小学生の頃は、主人公の洪作と年齢が同じだったので
    子供独特の感性や、おぬい婆さんに対する感情などにリアルに共感できたのと、
    今より想像力が豊かだったのだなぁと思う。
    今はむしろ、さきこ姉ちゃんやお母さんと同じ目線で読んでしまう。
    自分の祖母に対する気持ちの持ち方も変化してきた気がする。

    おぬい婆さんとの別れの場面は何度読んでも泣いてしまい、
    この時の(成長した)洪作は今の自分と重なっていて、つらかった。

    昔は気付かなかったけど、
    この本が井上靖の自叙伝的3部作の1つであり、
    主人公の洪作は筆者の少年時代であると知り、
    こんなに鮮明に感情豊かに子供の頃のことを書けるほど、
    素晴らしい思い出を持ち、郷土を愛していることは素敵なことだと思った。

    あと、読んだ後、伊豆行きたくなった。
    湯ヶ島行って温泉入って蜜柑食べて川で遊んで天城ほたる祭り見て沼津で千本松見て下田の丘に登って漁村を見下ろすような旅がしたい。
    すべて鈍行列車で。

  • この本に出会えて幸せ

  • 初めて本を読んで、泣きました。

  • 浦野所有
    →10/09/26 山口さんレンタル →11/03/27返却

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    『しろばんば』、よかったです。This is 名作。ですね、まさしく。

    孫バカ、傍若無人、世間知らずで恥知らず。そんなおぬい婆さんと、婆さんを誰よりも頼りにしながら、ときに鬱陶しく思ってしまう洪作少年。

    2人の純な生き方が、友人関係、親戚関係、隣近所の住民関係を交えつつ、つとめて冷静に、洪作の視線でもって表現されています。これほど緻密な心理描写の作品は、そうそう読めるものではありません。

    さまざまな人や物と出会い、そのたびに洪作が抱く感想は、正に少年ならでは。子どもだけがもつ理性と本能が見事に描かれていて、「ああ、自分も昔はこんなだったのかもしれないな」と、不思議に納得してしまうのです。

    そして『しろばんば』でもっとも特徴的な表現といえば、たとえば次のくだり。

    「納屋を少し焼いただけで火事は大事にならず収まった。子供たちは火事も見に行かなければならなかったし、バスも見なければならなかった。それからまた火事を出した農家の嫁が、自分の不始末で火を出したということで、火事の収まった直後、どこかへ姿を消すという事件があった。子供たちはまたこの嫁を探しに長野部落の山へも出かけて行かなければならなかった。やりたいことは沢山あったが、体は一つしかなかった。」(後編四章より)

    何か事件があると、それを見届けなくてはいけない。それが子供の特権というか、義務なんですよね。

    とにかく『しろばんば』は感動的な作品ではあるけれど、愉快な場面もたくさん散りばめられています。私も列車内で読んでいて、思わずクスッと笑うことも何度もありました。そういう意味でも、これまで読んだ小説とは異なる性質の作品だったと思います。

  • 高校の時に模試の問題で後編2章から少しだけ読んだ記憶が。その時ものすごくこの本の世界に引き込まれた覚えがあります。実際読み終わってみてちょっと泣いた。

  • ほんわか、じんわり、

    たっぷり愛された感じがしっかり伝わります。

  • この物語は好きで好きで、中学生の頃から何度読んだか分からない。主人公・洪作と自分を重ねあちこちで共感を感じるし(自然の中で生まれ育ち祖母に溺愛されるとことか)戦前の田舎の暮らしがユーモラスに描かれているのも魅力。どこまでが井上靖さんの実体験かは分からないけれど、それにしてもなんと鮮明に少年時代のことを覚えておられたことでしょう。

著者プロフィール

井上 靖 (1907~1991)
北海道旭川生まれ。京都帝国大学を卒業後、大阪毎日新聞社に入社。1949(昭和24)年、小説『闘牛』で第22回芥川賞受賞、文壇へは1950(昭和25)年43歳デビュー。1951年に退社して以降、「天平の甍」で芸術選奨(1957年)、「おろしや国酔夢譚」で日本文学大賞(1969年)、「孔子」で野間文芸賞(1989年)など受賞作多数。1976年文化勲章を受章。現代小説、歴史小説、随筆、紀行、詩集など、創作は多岐に及び、次々と名作を産み出す。1971(昭和46)年から、約1年間にわたり、朝日新聞紙面上で連載された『星と祭』の舞台となった滋賀県湖北地域には、連載終了後も度々訪れ、仏像を守る人たちと交流を深めた。長浜市立高月図書館には「井上靖記念室」が設けられ、今も多くの人が訪れている。

「2019年 『星と祭』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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