楼蘭 (新潮文庫)

  • 292人登録
  • 3.47評価
    • (16)
    • (27)
    • (62)
    • (3)
    • (2)
  • 32レビュー
著者 : 井上靖
  • 新潮社 (1968年1月29日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (327ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101063140

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

楼蘭 (新潮文庫)の感想・レビュー・書評

  • 久しぶりに読み返す機会があった、表題作を含めて12の短編集。

    表題作はヘディンの『さまよえる湖』に想を得た、砂の中に埋もれたかつてのオアシス都市の物語。穏やかな筆致で、さらさらとした砂の中から現れ、消えていった都市の運命が描かれる。「楼蘭」という地名は、当時の現地の呼び名「クロライナ」に漢字を当てたものだけど、あのように美しい漢字が当てられていなかったら、ここまで日本人のロマンを呼び起こさなかっただろうなとも思う。この字を当てて記録した、当時の名もない記録者のセンスに、心からの感謝と賛辞を。

    個人的ベスト3は、『狼災記』『褒娰の笑い』『補陀落渡海記』。『狼災記』は中島敦の『山月記』に比されることも多い人間の変化ものだけど、『山月記』よりももっと冷たくて厳しい、人間の業とそれに見切りをつけるための結末が待っている。『―笑い』は、笑わない寵姫が夷敵来襲ののろしを見たときにふっと見せた笑顔が忘れられず…と、愚行を重ねる皇帝を描いた、傾国の美女もの。のろしの火と美姫の笑顔の取り合わせが妖しく美しくて、印象的な作品。『補陀落渡海記』は、代々の住職が生きながらにして海の向こうの西方浄土を目指さねばならない寺で住職となってしまったがために…という主人公の迷いと周囲の期待(煽り)の息苦しさがすさまじい。

    いずれの作品も読後に「あぁ…」とやるせない思いにかられるものの、重苦しい余韻が後をひくということはない。主人公らのたどる運命には、諦念もあるのかもしれないけれど、自分たちの行きつく結末に覚悟を決めていたのかとも思われ、むしろ少し輝いていたりする。そこが希代のストーリーテラーと評された著者の筆のなせるわざかと。描かれた世界は重いものを漂わせているけれど、そこに垣間見える高潔さも感じるのが心地よく、何回も読み返したい短編集です。

    -----[2007.1.27にAmazonにアップしたレビューを、記録のためにこちらにもアップし、すこし書き直しました]-----

  •  オリエント情緒というかシルクロードロマンというかそういうのを感じたい時に
    ぱらっとめくって好きなとこを読んで満足する一冊です。
    ずっと手元に置いておきたい。

  • 中国西域を舞台としたものが中心の短編集。
    楼蘭の話は子供の頃になんかの本でも読んだけど、中央アジアっていまいち場所がよくわからない。

    このあたりも行ってみたいけど、お金かかるうえにハードそうだなぁ。

  • 古代、西域に一時存在した国楼蘭を舞台にした「楼蘭」、同じく西域で起こった大洪水の話「洪水」、西域を制圧した英雄班張の物語「異域の人」他、全部で12編の短編。
    まぐあいを重ねるうちに狼に成ってしまう「狼災記」や、人食い羅刹女の国の話「羅刹女国」、意図せず渡海を強いられた住職の追い詰められていく恐怖を描いた「補陀落渡海記」等は割と面白かった。
    ところで、「百億の昼と千億の夜」に出てくる人工都市「ゼンゼン」の名前、楼蘭の人々が漢の命令で移住させられた「鄯善」という都市名から来てるんじゃないかなあ。何となく。

  •  歴史作品を中心に12編収録。楼蘭とは「中央アジア、タリム盆地のタクラマカン砂漠北東部(現在の中国・新疆ウイグル自治区チャルクリク)に、かつて存在した都市、及びその都市を中心とした国家の名称」である(wiki調べ)なんとロマンを掻き立てることか、更に「さまよえる湖」ロプノールの西岸に位置し、シルクロードが西域南道と天山南路に分岐する要衝にあって、交易により栄えたとある。日本人はシルクロードに弱い。なぜなら島国に住むわたしたちの感覚からして、大陸の雄大さは永遠の憧れなのであろう。

  • 人間の智慧と言うものは何と言っても浅いもので…己が身を亡ぼす地獄の門へ向かって一歩一歩足を運んでいたのであります。文章とはこういう事なのか。直接的でないのが好きだけど。

  • 四半世紀ぶりに取りて読む。中学生のときは李陵と比べて格段に低い評価をしていたが、改めてこれはこれで趣の深い作品である。

  • 楼蘭は、移動するロブ湖をめぐる話。叙述詩を読んでるみたい。小磐梯は噴火の前の静けさが物凄く不気味に描かれている。今の時期だから余計にこわく思えるのかもしれない。

  • 中国歴史だけかと思いきや、日本、インドの歴史や童話小説をモチーフにした話もちらほら。
    表題桜蘭は50ページ前後の短い話だが、南インドにまつわる虎の話はちょっとした小話にも最適かと。
    何人かにこの話をしてあげると喜ばれる。
    オチが予想外で。

  • 素晴らしい。西域に思いを馳せた。

  • 井上靖の歴史小説メインの短編集。

    何と言っても出色だったのは『補陀落渡海記』

    補陀落渡海とは、補陀落なる浄土目指して小さな船で単身海を渡ろうとすることで、住職の間で昔行われていたそうです。
    もちろん、実際は海の藻屑と消える運命でして…。
    そんな補陀落渡海に世間に背中を押される形で挑む羽目になった冴えない坊さんの物語。
    悟りを会得して海を渡りたいと願いながらも、
    今まで渡海した僧侶たちも結局のところ
    悟りどころか狂気に憑かれていたり、
    自殺まがいで渡海を行ったり、
    真正の信仰心から渡海を試みていなかったことに主人公は気づいてしまいます(読んでいてドストエフスキーの『悪霊』を連想したりもしました)。

    揺れる主人公の姿が痛ましく、彼を取り巻く世間に対する怒りがひしひしと伝わってきます。

    ほか
    漢と匈奴に翻弄される小国家の物語『楼蘭』
    西域平定に乗り出す後漢の名将班超の物語『異域の人』
    山月記を思わせる変身譚『狼災記』
    も面白かったです。

  • 井上靖好きなんだ!(へえ)
    好きなのでどの話も非常に楽しく読めたのですが、特に「褒似の笑い」がよかったです。
    何なんだこの女は、とずっと思っていた褒似の正体が、そういう事か! と自分の中ですっきりと腑に落ちた最後の1ページ。よかったです。

  • 匈奴とか敦煌とか世界史で習ったあたりが舞台の短編集。

  • 2012/03/13読了

    歴史小説は少しでも知識がないときついなあ。短編集だったので、いくらか伝説、伝承、おとぎ話のようなものもあり、「完全にとっつきにくい!」というわけではなかったけれども。
    ただ、知識があったほうが面白かっただろう。
    戦や文明の進化の中で、発展・衰退・消滅する名も無き国々と生きたであろう人々、私たちは彼らの生きた証を知らない。
    確かに存在したかも分からないことは、想像の中でしか存在できないのかもしれない。
    同じ人間という生き物が、今昔でこうも違うのだと、面白くも切ないという感じを持った。こういう系統の文章を読むのもいいかもしれない。

  • 歴史物に興味がなかったのですが、そしてなんとなく、井上靖に縁がなくこれまできましたが、趣味の登山繋がりで「氷壁」を読んだのがきっかけで、手に取りました。
    表題作の「楼蘭」だけ読み終えました。興味深い歴史です。淡々と事実(おそらく)を述べているだけのようで、翻弄される歴史が胸に迫ります。しかし、歴史物を読み慣れていないので、やや疲れて、巻末近くの普通の小説に飛んで読んでいるところです・・・。

  •  井上靖の西域ものから、ずいぶんシルクロードにあこがれた。
     まだ未踏だけれどいまだにいつかは、と思う。
     その中でも一番ロマンをかんじたのがたしかコレだった。

  • 主に中国・西域・印度を舞台にした短編歴史小説集。
    前半の西域の話がやはり読んでいてロマンを感じられて一番楽しい。
    しかし、やはりこの方はその人の書く文章そのものというよりも扱っている題材が面白いのだと思う。

  • 狼災記が中国で映画化していた嬉しい。

  • 西域、中国、インド、匈奴、日本,中には明らかなフィクションものもある
    12の短編からなる本

    西域の話を読むたびに
    思わず思いを馳せ
    不便だけれどいつか行ってみたいと思う。



    そう言えば教科書に載っていた
    中島敦の“山月記”によく似た話もあった。

  • 世界史の教科書に出てきたヘディン、探し求めた楼蘭とはどんな国だったんだろうと思っていたけどこの本を読んで知ることができました。
    2000年ほどの時間を経て発見される、ロマンですねぇ。

  • 井上靖の歴史短編小説集。

    1:楼蘭
    2:洪水
    3:異域の人
    4:狼災記
    5:羅刹女国
    6:僧伽羅国縁起
    7:宦者中行説
    8:褒ジ(女以)の笑い
    【ここまでは中国西域の説話】

    9:幽鬼
    10:補陀落渡海記
    11:小磐梯
    12:北の駅路
    【ここまでは日本の説話】

    12話と盛りだくさんです。
    通勤途中に1〜2話/日に読み進めるのに丁度よいです。
    彼の作風が自分に合うかどうか試したい方に、お勧めの一冊。

    人間の感情描写やその表現の細やかさに、
    二千年前の楼蘭人や西域の人々の息づかいがそのまま
    立ち上ってくるような錯覚を覚えます。

    とにかく、お勧めの一冊です。
    読み返した数少ない小説の一つです。

  • 今はあまり読まれないようですが、井上靖の歴史小説はいまなおその輝きを失っていないように思います。
    個人的な好みで、まずは『楼蘭』いかがでしょう。

  • 2008年の旅では行けなかったが、次回は絶対に行く!

  • やっぱりシルクロード。
    ロマンだなあ…

全32件中 1 - 25件を表示

楼蘭 (新潮文庫)に関連する談話室の質問

楼蘭 (新潮文庫)を本棚に「いま読んでる」で登録しているひと

楼蘭 (新潮文庫)を本棚に「読み終わった」で登録しているひと

楼蘭 (新潮文庫)のKindle版

楼蘭 (新潮文庫)のハードカバー

楼蘭 (新潮文庫)の単行本

ツイートする