華麗なる一族(下) (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (560ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101104140

感想・レビュー・書評

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  • 展開のダイナミックさにシェイクスピアの作品を思い出した。
    登場人物が武器で切ったはったをしている訳ではないのだが、お互いの心臓を策略と言葉でえぐり合い、血しぶきが飛んでいるようなイメージを覚えた。
    しかし残念だが、途中から登場人物それぞれが強烈過ぎて共感が出来なくなり始めた。
    大介の息子への誤解と執念はどうも女の怨念のそれな気がする。疑惑の息子に対して、白雪姫を実母が執拗に狙い繰り返し殺すような、すさまじい苛めっぷりである。そして、何事もあまりに臆面に出さなさすぎる。
    寧子はあまりに人形のようであるし、相子は知的かもしれないが、人の心をあまりに理解できなさすぎる。銀平は冷たすぎるし、鉄平もまた、冷静さに欠けている気がする…。
    最後に悪党の行いが正義の心を持つ人々の前で静かにひそやかに明らかにされるのだが。そのひたりと貼りつくようなまなざしが、正義と悪がこの世で混じり合い食い合う姿を思わせるのだが…。
    相子が、自身はしがらみの多い日本の結婚を窮屈に感じて最後に外国へ行くかもしれないとつぶやいたのが、理解が出来なかった。そこまで日本人女の結婚が息苦しいものであると知っているのなら、どうして、あそこまで無感動に他の女の気持ちが理解できなかったのか。あまりにも本人を無視してごり押しする様子は、その後上手くいくようには見えないのだ。

    塩野七生のエッセイに、オデュッセイアが女性の手によって書かれたものであるという説がある。この本を読んでそれが思い出された。緻密で細やかな描写と怒涛の展開。次々に敵が現れては、知略でそれを切りぬけて行く一人の男。悲劇的な運命。
    女性が描く男性像と言うのは、かくも美しい。
    女が男を描く事は、実は男が女を描くように、幻想的で、美しい。
    古今東西の世の芸術は男が決めるものだったのだが、これからは、女が男を賛美するような、女が女を描くような、このような作品がこれからもっと生まれる事を願う。

  • 9ヶ月かけてようやく読み終えました。

    けして面白くなかったわけではなくて、単純に時間がなかったり生活リズムが変わっただけですが。

    やはり山崎豊子面白いですね。不毛地帯、女系家族に続いて読破したのは三作目ですが、どれも間延びせずに緊張感を持続したまま最後まで読める、時代を感じさせない作品です。

    登場人物それぞれの感情の機微がしっかり描かれていて、個性がはっきりしているので、情景が手に取るようにわかり、物語に引き込まれます。

    予想できない衝撃の結末で、かつ今後の展開に含みをもたせたまま物語を終え、読者に今後の展開を予想させるのも巧みです。

    年代を問わずオススメの一作です。

  • 最終巻、大きく動く。万俵大介の仕掛けた策略に皆がはまっていく。勤めていた場所、自分が一生懸命かけていたことから、追われる無念はどんなものか。
    最後に流れが変わりかけた気配を持って終わる。

  • なぜーーーー!!
    なっぜーーーー?!!!
    鉄平よぉーーー!
    遺書を残さず死んだぁぁぁぁぁ!!


    遺書に何もかもぶちまけて、
    大介を合併銀行の頭取からひきおろし、
    相子を万俵家から追い出させたのにーーー!!


    と、読んでて思ったけど、
    きっと鉄平は大介と相子以外の残された家族のことを考えて、遺書を残さず自らの命をたったのかなぁーと思った。

    私としては、この結末はキレイに終わりすぎてると思うんだけど、永田大臣が見せかけ融資の疑惑を感じ、もっとすごい合併を考えて大介の新銀行を潰そうとしてるのがわかっただけでも救いかな。

    二子も寧子も新たな気持ちと環境で新生活が送れることになったし良かったなぁ。

    まぁ、それにしても、すっごいビジネスの話で一気に読ませてもらいましたー。
    実際、こんな裏のドロドロした世界ってあるのかしらねー。

  • どういうオチが来るのか一心不乱に一気に読んだ。
    人生の明暗を最後まで楽しませて戴けた。
    35年も前に書かれた企業小説が、今でもこれほど面白く読めるとは吃驚。

  • 銀行頭取を中心とする一見、豪華絢爛で満たされている彼らだが、その歪んだ家族関係に翻弄されていく家族を描いている。また、銀行業務の冷酷な一面を如実に表しており、銀行業界を渦巻く食うか食われるかの生存競争の中で、政界、官界を巻き込んでその癒着していく関係性をもリアルに描かれているため、思わず時間を忘れて読み進めてしまう。

  • 華麗なる一族崩壊。
    中間まで読み続きの内容が気になり下巻は一気読み。
    クライマックスは驚きの展開の連続。

  • 華麗なる終わり方。弱肉強食という身も蓋もないメッセージ。痛快さはないが、娯楽小説の名作だろう。

  • 三部作の最終巻。
    人間の名誉欲や嫉妬心、執着心。
    人間臭さが存分に表現された大作。
    これだけ続きが気になる本は久々だった。

  • 悪人のしぶとさ。。
    まさに悪は栄え、善は滅び、正直者は損をするのがこの世の中なのか。
    できすぎた勧善懲悪の、頭の中がお花畑になるような読後感も好きやけど、世の中に憤り、嘆き、考えるためには、こういう作品が必要なのだと思う。山崎豊子さん、まだまだ読みたかったなあ。。

    鉄平の死のあとは、大介の非情さへの憤りがピークに達し涙が止まらないほど。
    「自身の知力と精神力のすべてを投入し、今日までの、自分の人生そのものであるといっても過言でない高炉建設」が策謀の梃に使われたと知ったときの絶望は、死に追いやるには十分すぎるものである。
    そしてその死によって親子関係が明らかになるなんてやるせないにもほどがある。
    ただ、投じたその大きすぎる一石が、傍観者であった銀平にも悔恨を残し、また二子が自由な人生を選ぶきっかけになったことで少し救われる思いである。
    また、何より、たった3年の栄華のために実の息子を失った大介が、今後悔やみ、苦悩することは想像に難くない。
    ざまあみろである。
    『天下ヲ得ルニハ 一不義ヲ成サズ 一無辜ヲ殺サズ』
    大介は一生この十字架を背負っていくべき。

    しかしこの大介とて出し抜かれて3年後合併されてしまうのだから、この世は欲と野心の応酬で出来てるのか。。
    よほど図太くないと総理大臣になんかなれんのやろな。

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著者プロフィール

山崎 豊子(やまざき とよこ)
1924年1月2日 - 2013年9月29日
大阪府生まれの小説家。本名、杉本豊子(すぎもと とよこ)。 旧制女専を卒業後、毎日新聞社入社、学芸部で井上靖の薫陶を受けた。入社後に小説も書き、『暖簾』を刊行し作家デビュー。映画・ドラマ化され、大人気に。そして『花のれん』で第39回直木賞受賞し、新聞社を退職し専業作家となる。代表作に『白い巨塔』『華麗なる一族』『沈まぬ太陽』など。多くの作品が映画化・ドラマ化されており、2019年5月にも『白い巨塔』が岡田准一主演で連続TVドラマ化が決まった。

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