陸奥爆沈 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101117072

感想・レビュー・書評

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  • 天一号作戦の大和乗組員の生存率が8%だとすると、陸奥爆沈での生存率10%が如何に異常な数字なのかがわかります。

    戦ってもいないのに爆沈した陸奥は哀しいですが、その事実を隠そうとした海軍は昭和18年の時点でそれほどまでにすでに狂っていたのかと感じました。

    そして意外なほどに戦艦事故の原因は人為的なものだということに驚き、あっけないほどにもろく潰え去った陸奥はその後の海軍を象徴していると思いました。

    この小説は戦後26年経って書かれたもので当時はまだまだ生存者が残っており、吉村氏の丁寧な取材により徐々に真相が明らかになっていきます。

    馴染みのない用語が多量にあり途中飛ばしながら読みました。

  • たまには異なるジャンルのものをと、久方ぶりに吉村昭さんの小説に挑んでみることに。これは先年、著者が亡くなられた時期に購入していたのだった。

    著者自ら資料にあたり、生存する関係者に取材を重ね、戦時という非日常における軍艦事故の系譜とその顛末を解き明かしてゆく。面白し。

    読み始めて即引き込まれ、読了する頃には認識を新たにすることが多々あり。陸奥慰霊祭の件に目を通し愕然となる。ここに描かれる陸奥の遺族の姿を通して、靖国神社の意味するところが理解できたように思う。

  • あの潮の流れが入り組んだ瀬戸内海で1000人超の死者が出る大惨事。戦時中の海軍の膝下で起こったこの出来事を海軍がいかにして機密事項にしてゆくのか。
    浜で遺体を焼くシーンが印象的でした。後半筆者の独特の切り口から、ある仮説に至る。

  • 吉村昭にしては珍しく、ドキュメンタリー形式の小説。
    昭和18年に起きた戦艦「陸奥」の爆沈事件を、それを調べる著者という立場から解き明かしていく。
    「陸奥」の話だけでなく、他の戦艦の爆沈事件の歴史を追っている点が興味深い。また、歴史上あった戦艦爆沈事件の原因が、どれも人間が意図してなしたことだという事実に驚く。
    戦艦の爆沈事件をとおして、戦艦という器に入っている1人ひとりの無名の人間にスポットライトをあてている見事な小説である。

  • 内容紹介
    連合軍の反攻つのる昭和18年6月、戦艦「陸奥」は突然の大音響と共に瀬戸内海の海底に沈んだ。死者1121名という大惨事であった。謀略説、自然発火説等が入り乱れる爆沈の謎を探るうち、著者の前には、帝国海軍の栄光のかげにくろぐろと横たわる軍艦事故の系譜が浮びあがった。堅牢な軍艦の内部にうごめく人間たちのドラマを掘り起す、衝撃の書下ろし長編ドキュメンタリイ小説。

  • 2011/11/09完讀

    昨天太早睡,今天早上三點就起來讀這本書了…

    這本書的寫作方式是描寫作者採訪的過程,一步一步地發掘出被掩埋在歷史中的故事。跟著吉村さん的腳步,除了對他驚人和不辭辛勞的採訪及蒐集資料能力感到很佩服,慢慢揭密的文學性效果和餘韻都不錯。當初純粹在圖書館隨便借,沒想到遇到一本好書了。

    吉村氏本人雖然寫了很多戰時的記實小說,但他對戰鬥武器並沒有興趣,只是在透過寫戰爭、寫武器,「自分を含めた人間というものの奇怪さを考えたいからほかならない。」他到柱島(戰時聯合艦隊在日本內地最大的根據地),偶然對陸奥當年為何爆沈的原因感到好奇,決定要以此為主題。

    戰艦陸奥是長門型的二號艦,在大和、武蔵登場之前是最強的戰艦,也是當時極具象徵意義的戰艦。1943年6月8日中午停泊在柱島時,三號砲塔與四號砲塔間發生濃煙旋即爆炸,至於原因至今仍眾說紛紜。吉村氏拜訪了當時的倖存者,了解當時爆沈的狀況。

    陸奥爆沈是當時的機密,因此能入手的資料並不多。官方嚴格封鎖消息,甚至假借演習的名義檢閱信件。海軍相當重視這件事情,立刻由海軍造船精銳組成M查問委員會展開調查。一開始先調查是否為敵方魚雷及轟炸機所為(如果是的話事情就大條了,表示基地防衛整體有問題),排除之後接著懷疑是三式彈爆發,或者是彈藥庫的彈藥自燃。一開始海軍緊急將各艦的三式彈撤離,並招來設計者安井中佐訊問。接著召集倖存者(被隔離起來以封鎖消息)來做實驗,觀察爆發煙霧的顏色,終於確定不是三式彈。但事後調查也不認為是火藥庫自燃。

    海軍同時並且派以福永為首的潛水兵潛入陸奥的殘骸中深入調查,同時查問委員會開始懷疑是人為因素。吉村氏調查了歷來軍艦爆沈的原因,訪問許多人並翻閱了報紙、判決書調查了種種資料,發現人為的因素極大:第一次三笠、磐手、日進、第二次三笠、筑波確定是人為因素;另外兩件:松島(馬公港寄港碇泊中)、河內原因不明,但也可能是人為。(閱讀這一段,是這本書最讓我震撼的部分。一艘艦艇居然在某些人有意或無心的動機下,簡簡單單地就爆炸沈沒了。)陸奥是否因為偷盜成性的Q二等兵曹即將東窗事發的不安,因此鋌而走險?後來並未獲得確切的證據,委員會也以曖昧的語氣作結,但不排除如此可能性。


    吉村氏在あとがき中說:「日本海軍には、たしかに儀式的とも思える軍紀に支えられた秩序があった。軍艦は、兵器であると同時に儀式のおこなわれる城でもあった。城には、さまざまな感情をいだいた多くの人間が住みついていた。それらの人間の中には、海軍という組織に順応できず、個人的な人間臭さをもったまま生きている者たちもいた。軍艦火薬庫爆発事故は、そうした者たちの手になるもので、伝統的な海軍の保持していた秩序も、その瞬間にあえなく崩れ去ったのだ。軍艦という構築物は、威圧感にみちている。それは、海戦による砲弾、爆弾でしか破壊されないような堅牢な印象に満ちている。が、一人のふとした思いつきに似た行為で、もろくも爆発し沈没する物体でもあったのだ。軍艦は、多種多様の人間をつめこんだ容器であるということを、調査を進めるうちに実感として感じとった。組織、兵器(人工物)の根底に、人間がひそんでいることを発見したことが、この作品を書いた私の最大の収穫であったかもしれない。」

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    解說:「氏は現代のメカニズムが、いかに人間をリードし、人間を圧迫し、人間を非人間的なものに変えるかを描いてみせた。しかも、その強力なメカニズムも、あるとき一人の人間の裏切りによって崩壊することを主張することも忘れていない。『陸奥爆沈』はその氏の文学観を示す代表的な作品であると思われる。」
    「吉村氏の作品は、組織が知らず知らずのうちに醸成した歪みが、組織そのものを滅ぼす可能性があることを示している。氏が苦労をして調べた三笠、河内、筑波等爆沈の原因は、帝国海軍の栄光の底にある暗部を照明に当てるものであり、同じことは現代社会に罷り通っている多くの巨大組織についても言えるではないか。」

  • これぞまさにドキュメンタリー。
    結局、陸奥爆沈の真相は確信に至らないが、それまで明かされてこなかった日本海軍の放火事件にスポットを当てたところに十分意義があると。
    確かに、軍艦自体は巨大な塊でしかないけれど、1000人近い人間が集まるところではそれなりの人間模様があるよなあ。
    軍隊だからと言って、全員が全員右向け右、で命令通りにすべて動くわけではない。
    なにより、陸奥爆沈を秘するために、数少ない生存者を死に至らしめるような事故後の用兵が気の毒で、心に引っかかった。

  •  戦艦陸奥は、何故爆沈してしまったのか。
     上記の切り口で書かれているが、その内容は「人」についてである。過去起こった様々な爆発事故を調査していく中で、其処に関わった人について筆者は言い知れぬ悲哀を覚えている。
     作為的に爆発させられた軍艦たち、それらの事故を究明すべく奔走する人人、艦と共に海中に没した兵士・再び陸上に立つ事の出来た兵士、残されたご遺族。
     それらを丁寧に調べ上げ、この本が出来ているンだなと実感した。

  • 2011.7.8(金)¥157。
    2011.7.18(月)。

  • 昭和18年、戦艦陸奥、爆発事故により沈没。


    精強をもってなるはずの日本海軍において頻発した艦艇の爆沈事故。本書はその原因に迫ったドキュメントです。

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著者プロフィール

一九二七(昭和二)年、東京・日暮里生まれ。学習院大学中退。五八年、短篇集『青い骨』を自費出版。六六年、『星への旅』で太宰治賞を受賞、本格的な作家活動に入る。七三年『戦艦武蔵』『関東大震災』で菊池寛賞、七九年『ふぉん・しいほるとの娘』で吉川英治文学賞、八四年『破獄』で読売文学賞を受賞。二〇〇六(平成一八)年没。そのほかの作品に『高熱隧道』『桜田門外ノ変』『黒船』『私の文学漂流』などがある。

「2021年 『花火 吉村昭後期短篇集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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