アラスカ物語 (新潮文庫)

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著者 : 新田次郎
  • 新潮社 (1980年11月27日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (467ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101122212

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アラスカ物語 (新潮文庫)の感想・レビュー・書評

  • 史実をもとにしたフランク安田こと安田恭輔の物語。
    明治から昭和にかけて、一人の日本人が極北のアラスカ大陸を股にかけた壮絶な闘いを繰り広げています。まさに「神話」のような一大叙事詩ともいえる物語にびっくり仰天です!

    海賊船を監視する米国船ベアー号の船員だった青年フランク安田。北極海の氷に閉ざされ身動きがとれなくなったベアー号と食糧難に喘ぐ仲間を救出するため独り船を降ります。降り立つそこは海の上、見渡すかぎりの氷原、アラスカ大陸の北端岬ポイントバローまでは最短でも150マイル(約240キロ)。太陽のない闇の季節、北極星はつむじの頂点にあって東西南北も定まりません。極寒の凍りついた海上をわずかな食糧をたずさえて歩みだす凄まじい展開に息を呑みます。この世のものとは思えないオーロラが、ちっぽけな人間の決死の旅路をよそに乱舞するさまはあまりにも切なく、哀しいほど美しい。

    ポイントバローは海辺エスキモーが暮らす小さな村。フランク安田は彼らとともに生活しながら言葉を覚え、鯨やアザラシ猟にのぞみ、犬そりを巧みにあやつりながら次第に仲間に溶け込んでいきます。しかし、鯨の乱獲、白人が持ちこんだ麻疹……飢餓と疫病に苦しむ人々、多数の死者を出した村はたちまち存亡の危機に立たされます。

    「……白人は海から鯨を追い、陸からカリブーを追った。この次に追われるものはなんであろうか。おそらくそれは、わずかながら存在している原住民であろう。フランクはやり切れない気持ちになった」 (*カリブーはトナカイの一種)

    いやはや、本の頁を繰るのももどかしい、読みだしたら止まらなくなってしまいました。ロビンソン・クルーソーばりの安田の大冒険を支えるのは、広大なアラスカの自然、そこに暮らす野生動物と懸命に生きるエスキモーの詳細かつリアルな描写です。アラスカの地には、エスキモーの他にも多くの少数民族が暮らしていることを知ってまたまた驚き、彼らインディアンたちとの相克、人種差別、当時のゴールドラッシュ、金鉱や砂金にむらがり狂乱する人々、野生動物の乱獲と自然破壊……見事に描いていきます。

    綿密な調査と目に映るような上手い描写、スケールの大きな物語にぞくぞくします。そしてなんといってもフランク安田という男にぞっこん惚れ込んだ作者の吐息が行間から溢れています。まるでフランク安田の人生まるごとすさまじい神聖喜劇になっていて、その笑いは哀愁をおび、アモールファティ(運命愛)を慈しみながら少しの現実逃避もありません。ひたすら生きることに挑戦した人間の、冷酷で人生そのものの厳しさに唸ってしまいます。

    そういえば高校生のころ、本多勝一さんの作品に熱中した時期がありました。『カナダ=エスキモー』というルポルタージュ本をながめて驚愕し、世界には大きな自然と叡智のもとに生きている人々がいるんだな~と感銘を受けた記憶が蘇ります。

    ふと、この作品もそのころに読んでおけばよかったなぁ……と少し後悔しましたが、いやいやどうして、本は出会いだ~、読めば吉日~、今だからこそ楽しめたのだ! な~んてほくそ笑みながら、(表紙の)湖沼にたたずむカリブーとアラスカの美しい峰々をしげしげ~と眺めました。とても面白いです、お薦めします(^^♪

  • 極地アラスカに、エスキモーの村を作った日本人がいたことを、私は知りませんでした。

    食料不足や、疫病の流行により、滅亡に瀕したエスキモーを救出し、アラスカのモーゼと仰がれたその人の名は、フランク安田。
    そんな彼の生涯を描いた物語です。

    この静かなタイトルからは想像もつかない、激しく変化に挑んだ人生物語は、とにかく、面白い!!
    運命の流れに乗って生きるとは、こういうことかもしれない。
    彼の人間性やリーダーシップ、運の強さにシビレます。

    著者の新田次郎は、アラスカまで足を運び、フランク安田にゆかりのある人々から話しを聞き、文献を集め、更にフランク安田が育った町や家を訪ね、生存している親族からも話しをきいて、この一冊の本にまとめ上げています。
    新田さんのおかげて、フランク安田の生涯とアラスカやそこで生きるエスキモーたちの、衝撃的な事実を知ることが出来ました。

    活字が好きな人はもちろん、苦手な人にも、一度は読んで欲しい*\(^o^)/*
    ちょっと厚めで、単行本で460頁ほど★
    でも、中盤からは、寝る間も惜しいほど、そして、後半に入ると、読み終わってしまうのがもったいなくて、休むか読み続けるかと葛藤しますよ〜★

  • 自分がまだ知らない、そして知っておくべき日本人がまだまだいる。フランク安田は、まさにその1人だと思う。彼がいなければ、海岸エスキモーは飢餓または麻疹により全滅していたかもしれない。彼がいなければカーターのゴールドは見つかっていなかっただろう。彼がいなければ、ビーバーという街も生まれていなかっただろうし、インディアンとエスキモーの共存もなかったかもしれない。彼だけではない。ジョージもそうだし、ミナモもそうだ。
    彼がベア―号から降りて以降、毎日が真剣勝負だったろう。ポイントバローへの奇跡的到着、密漁による食糧不足、麻疹による村存亡の危機、ゴールドの探索、エスキモーの移住、第二次大戦中の強制収容、ビーバーの町おこし。遠い日本から離れて、リーダーとしての役割を期待され、ただエスキモーのために人生を費やしたフランクは、どんな気持ちだったのだろう。
    彼の人生は1冊という本のも収まりきらないものだった。自分もそのような生き方ができているか?

    捕鯨やアザラシ、ムースやカリブーの捕獲も興味深い。エスキモーは代々彼らを狩猟し、その生肉を食すことによって生きてきた。動物の子供は殺さないなどのルールを守っていたため、動物が絶滅することはなかった。それが、白人の乱獲により状況が変わる。現在は、捕鯨やアザラシの捕獲は、野蛮な行為などと評価され、否定的に考えられている。しかし、「野蛮」とは何なのか?ある文化で「野蛮」と考えられていることが、ある文化では「伝統」である、というに過ぎない。しかし、「野蛮」と考える文化がprevailしたから、その考え方が主流になった。歴史はいつも勝者のものである。現在エスキモーは、その勝者たる国からパターナリスティックな保護を受けている。それは、本当にエスキモーにとって誇り高い生き方なんだろうか?自力では生きていけない、アメリカの援助なしでは存続できないという状況下で生きていることは、本当に生きたい生き方なんだろうか?

  • 昨今の流行といえば、極寒・熊・金塊?
    ゴールデン・カムイ、レヴェナント(…あれ?他が思いつかない)がそうでしたが、今作アラスカ物語はそんな現在の流行を先取りした一大叙事詩。

    最後まで読むと、なんとも言えない寂寥感が残る。
    作中何度も現れる表現で「日本から来たエスキモー」と言うのがあるが、なんとも皮肉な言い回しだ。
    結局、主人公のフランクはエスキモーの気持ちを理解しようとしたし、エスキモーの為に生きた。なのに彼は常に「日本人」である自分の性質を否定することは出来なかった。
    彼は本当は日本を捨てたくなかった、しかし捨てざるをえなかった。そして行き着いた先で出会った表面上「日本人のように見える」人たちの為に生きた。

    フィクション部分もかなり多い様だが、少なくともこの作品内のフランク安田のことを俺は幸せには見えなかった。
    ヒッチコックのめまいよろしく、フランクの日本という国への理想をイヌイットに押し付けている様に見えたのだ。
    しかしフランクの心と裏腹に、イヌイット達は新しい土地で無事生き残ったし、今も彼らから尊敬されている。そのギャップの様なものが何とも言えない物悲しさがある一方で、やはり彼の素晴らしさは否定出来ないとも思う。
    単純なサクセス伝記物というよりかは、日本人論的な面白さのある作品でした。

  • フランク!グッジョブ!

  • フランク安田という人物を一体どのくらいの日本人が知っているのだろう。

    20世紀初頭のアラスカで「日本という国から来たエスキモー」と呼ばれた男。彼の波乱万丈の人生と偉大な業績に驚き、同時に日本人である事を誇りに思った。

  • 高校時代の国語教師に勧められた。丹念な取材と冒険家への敬意がいかにも新田次郎らしい。アラスカのモーセと言われながらほとんど知られていないフランク安田の存在がもう少し知られても良いと思う。しかし、新潮文庫から廃版にならないのはそれだけ心動かされる作品ということ。巻末の藤原ていとのやり取りが微笑ましい。

  • 結構なボリュームだった。
    白人の乱獲によりクジラやアザラシが捕れなくなったアラスカに住むエスキモー達を引き連れてアラスカ内地に移動し村を作った日本人フランク安田の話。当時はジャパニーズモーゼと言われアメリカの新聞にも載ったらしい。
    と言っても、彼は宗教家では無くエスキモーの嫁をもらい、エスキモーに信頼されたリーダーになってしまったようだ。多分本人も望んではいなかったのではないか?
    本の中ではアラスカの気候のきびしさや、自然、特にオーロラに対する描き方が好きだった。

  • 何十年振りかで再読。現在の宮城県石巻市に生まれた安田恭輔の波瀾に満ちたアラスカでの生涯を描いた傑作記録文学である。

    外国航路の船員となり、アラスカに赴いたフランク安田は、数奇な運命に導かれ、エスキモーと共に暮らす。白人による海獣の乱獲による食糧不足と疫病に苛まれるエスキモーたちを救うべく、フランク安田が取った行動は…

    明治時代にアラスカに渡り、エスキモーのためにその生涯を捧げた日本人が居た事に驚きを感じるとともに彼の行動力、運命を享受する逞しい生き方には感服した。

    巻末に『アラスカ取材記』が収録されており、この記録文学を描いた経緯が分かる。

  • 立派な人って、なかなかいないと思うのだけど
    アラスカのモーセと言われる
    フランク安田は間違いなく、立派。偉人。
    強靭な精神の持ち主。
    かっこいい!!!

    丹念な取材によって書かれた実話で
    構成や表現にクドさがなく、
    かと言って容易な文章でもなく
    この作品を書いた新田次郎さんもかっこいい!!!

    皇太子さまがこの方の本を愛読してるというのも
    なんかわかる気がします。

  • フランク安田という日本人エスキモーがアラスカの地で妻を娶り、エスキモーの大酋長となって海岸エスキモーや内陸エスキモーを救う物語。
    登山ものではないが、アラスカの極地でエスキモー達を救うために奔走するフランクは雪と戦うのではなく、自分の置かれた状況といつも戦い、何百人のエスキモーの運命を背負って生きた。ゴールドラッシュの時期であり、それにフランクも上手く乗ることができ、エスキモーを救ったのである。

  • 約100年前にアラスカに渡りエスキモー(イヌイット)の救世主となり、「アラスカのモーセ」と称えられたフランク安田の事績を描く。北極圏の荒々しい自然の描写が想像をかき立てる。何ヶ月も太陽が昇らない、骸骨の踊りのようなオーロラ、前後左右を見失うような吹雪。このような小説は出来るだけ快適な環境で詠むに限る。僕はこの小説に出てくる人間だけでなく、犬たちも健気だと思う。彼らはどんな吹雪でも迷わず家に帰れるそうだ。人物ではジョージ大島の煮ても焼いても食えないようなところが良い。本名は大島豪十で群馬出身ということだが、彼はいったいどんな人生を歩んでアラスカに来たのかよく分かっていないらしい。ジェームズ・ミナノに至っては何も分かっていないようだ。

  • まるで創世記を読んでいるようだった。
    世界の北の最果ての地に、エスキモーのために生涯を捧げた日本人がいたなんて驚きを通り越して感動を覚えた。
    新田次郎お得意の雪山の描写もたっぷりで、山岳小説としても大満足。
    2015/11

  • 新田次郎。夏休みの読書感想文用に子どもに推薦。相変わらずおもしろい。

  • アラスカのモーゼと呼ばれたフランク安田、日本人の偉人をもっと周知すべし。

  • 海を渡りエスキモーとなった日本人の物語。

  • 読書部課題図書その10

  • 遠い昔に読みました。
    今でも所々覚えています。アザラシ食べてるところとか。
    もう一度読みたい作品です。
    「砂の器」と「アラスカ物語」と「氷点」は子供ながらに読んで印象深い作品でした。

  •  辺境にすむ日本人女性なるテレビ番組を見て、100年以上前にエスキモーを率いた日本人がいたことを知り、その人のことを知りたくなり、当然のごとく本を手に取った。

     第二次世界大戦前にアメリカに渡り、仕事で乗船していたアラスカへの食料運搬船が思いもよらず早くにおそってきた氷によって身動きがとれなくなったことにより、エスキモーと暮らすこととなってから、その一族を海の民から、陸の民へと変貌させ、生き延びさせ、現在もその村があるということは、何とも素晴らしい話である。

     彼の苦労に比べると、現代の日本人の苦労など、まだまだであるとしか思えてこなくなる。

  • 極寒の地アラスカとエスキモーとともに運命をともにした、日本人フランク安田を主人公とした物語。エスキモーの生活やアラスカという想像もつかない厳しい環境でリーダーとして活躍した安田に感動する。せめて一度でも日本に帰してあげたかった。ちなみにKindle ペーパーホワイトで読んだ初めての本でした。凄く読みやすかった。

  • クジラやオットセイが激減した酷寒のアラスカ沿岸部から、エスキモーを率いて内陸部へ「民族移動」して新しい村ビーバーを開いた「アラスカのモーセ」ことフランク安田の人生。
    こんな日本人がいたのか。
    先住民の生活環境がアメリカ人に浸食されていく様と、狩猟採集生活の厳しさがよくわかる。

    「白人は海から鯨を追い、陸からカリブーを追った。この次に追われるものはなんであろうか。おそらくそれは、僅かながら存在している原住民であろう。フランクはやりきれない気持ちになった」

  • 混迷の時代に、混迷の土地で活躍をした日本人がいたことに感銘を受けた。

    22歳で渡米し一度も帰国せず先住民のために生き、日本を思い浮かべながら死んだ彼の人生こそは「潔さ」のお手本だと思う。

    彼が出会った人たちもまた素晴らしい。

  • 明治初期、日本を離れアラスカにたどり着いて、エスキモー社会に溶け込み現地女性と結婚した「フランク安田」。白人による乱獲や疫病により滅亡に直面し飢餓に苦しむエスキモーのために新天地を築き、「ジャパニーズ・モーゼ」と呼ばれた男の半生。
    人格や心で尊崇を集めエスキモーのリーダーとなる日本人の生き様に対する驚きと感動。。

    ネットで調べると「Yasuda Mountain」の地名が確かにある。
    http://mapcarta.com/24102640

  • フランク安田という、明治期に石巻からアラスカに渡り、イヌイットのために生きた実在の人物を扱った新田次郎による小説だが、人物伝としてだけではなく北米の自然誌として読んでも興味深い。

    白人の乱獲により鯨や、海獣類の捕獲ができなくなり、飢餓が目前となった沿岸部のイヌイットたち。その命運を金鉱探しに賭け、最終的にはイヌイットを率いて内陸部へ移動するのだが、ツンドラの海に生きるイヌイットたちは、初めて目にする木々に驚き、マツの匂いで頭痛を起こしてしまった。頼みの綱であったカリブーも減っていく中、好戦的なインディアンの住む森林地帯へ向かっていく。ところが、調理したものは食べない、カリブーの肉は生で食べるイヌイットたちもムースの肉は生では決して食べなかった…等と、ある民族が自分たちの境遇を捨て異なる環境に移住するとき何が起きるのか、という視点でとても面白かった。大型哺乳類が白人の乱獲により次々と消えていく姿は、ファーレイ・モウワットの「オオカミよ、なげくな」のほぼ同時代かやや前の時代であるから、両者を通じて、この時代の自然誌が浮かび上がってきたのだった。

    新田次郎のあとがきを読むと、基本的に全て、現地へ赴き、実物や一次資料を目の当たりにしたそうで、その表現は緻密で真に迫っているようだ。ただし、オーロラに限っては、アラスカを訪れた際、赤祖父博士のもとで映像で見た限りで実物を見てはいないらしい。私もオーロラは見たことがなかったが、冒頭のオーロラに関する記述が、やや過剰な表現に思えたのはその所為だったのかもしれない。

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