死者の奢り・飼育 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101126012

感想・レビュー・書評

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  • 陰湿さと残酷さ、不気味さの暗さと文章の美しさのマリアージュ

  • いつか読みたい、いや、読まなきゃと思っていた大江健三郎。読みやすい文体、しかし閉塞感いっぱいのシチュエーション。短編ってこともありかなり物語に入って読めた。個人的には「人間の羊」が印象に残った。

    • 川野隆昭さん
      大江健三郎は、一時期、若手の評論家諸氏から、かなり、攻撃されていましたが、彼の作品群の日本文学における重要性は、今後も増し続けていくのだろう...
      大江健三郎は、一時期、若手の評論家諸氏から、かなり、攻撃されていましたが、彼の作品群の日本文学における重要性は、今後も増し続けていくのだろうと思います。
      僕は、本作は未読ですので、機会がありましたら、ぜひ、読んでみたいです。
      2021/11/15
  • まだ読み切っていないが、表題作を読んだので残しておく.
    生々しくジメジメした描写は良いが、結局何を主張したいのかが不明瞭. そして、これは恐らくどんなに文学的知識をつけても自分にはわからない気がする. 短編ではなく長編の大江健三郎を読んでから、彼の自分の中での評価を定めたい...

  • 芥川賞受賞作「飼育」を含む、最初期の短編集。戦中、戦後GHQ統制時代の色濃い背景の作品が並んでます。
    大江健三郎未読だったので、今回、主要作品をおとな買いし、少しずつ読んでいきたいと思ってます。20代前半でこれだけ濃密な小説を書けるなんて、ほんと凄いですね。まあ、芥川賞を取る人は総じてお若い方が多いのだけど。
    で、ネットでコメント見てると、大江さんの初期作品は難解だとか読みにくいとか結構出てますが、この1冊に限って全然それはなく、楽しく短時間で読めました。
    確かに昔、「同時代ゲーム」にトライして音を上げた経験もあるのだけど、安部公房氏に比べると格段にわかりすいというのが個人的感想。
    まあ自身の読解力が向上したせいだと思うようにしたい。
    どれも読み応えのある短編6短編編だけど、表題となっている、「死者の奢り」「人間の羊」が特によかった。いくつかの作品に、黒人兵に対する差別表現や感情が出すぎていることは、進駐軍や朝鮮戦争動員での影響があるのかもしれないけど、今の時代での読書の隔世感という点で少し気になりました。
    なかなか根が深くて感想らしい感想を書けません。自分にも大江健三郎を十分読めることがわかったのが最大の収穫ということでいいかとw

  •  これを20代前半で書いた人間はどんな人生を生き、そしてどのような人間性でもってこれを書いたのだろうか。その疑問は本作の内容よりも私の心を捉えたが、残念ながら読めば読むほどわからなくなっていった。
     読む前に、大江健三郎について私が持っていた手がかりというのは彼が愛媛の田舎の大自然のなかで育ったらしいということだけだった。私はそれがある程度本作の土壌を形成する要素となっているのだろうかと想定していたが、本書からその印象は全く感じられなかった。それよりもむしろ、村、僕の家、黒人が囚われていた監獄といった暗く四角い空間が生む暗鬱な閉塞感が強く印象に残った。

  • 初期短編集。言葉に圧倒される感じ。

  • 自分にとって大江作品初体験の作品。
    芥川賞受賞作「飼育」や処女作「死者の奢り」を初めとした6つの短篇が収められている。
    どの作品にも感じられる主人公の置かれる他者からの差別の念との葛藤。また特に描かれるのは戦中戦後派作家だけあり、米国人に対する恐怖と彼等に蔑まれることから生まれる日本人としての恥とへつらいに如何にして折り合っていくかと言う内省。
    外国人を他者として描かれる作品として、文学的表現、ストーリーテリング、哲学観にも最も優れたのは芥川賞受賞作である「飼育」に違いないが、自分が好んだのは「人間の羊」と言う短篇。
    バスの中で荒げる外国人兵に脅され、四つん這いで下肢を晒される主人公を含む日本人乗客者たち。散々外国人兵に蔑まれ屈辱から消えてしまいたい主人公の念。それにもかかわらず傍観者となった他の日本人乗客の一人の教員の男に正義感を振りかざされ、この事態を世に訴えるべきだと振り回される。だが主人公はかかされたその恥から一刻も早く逃れてしまいたい。
    世の虐めの現場で僕はよくある事態だと感ずる。傍観者が第三者だけでしかなく救いの手をその場では差し伸べないのに、正義感面をして自己満足で虐められた人間を振り回す。虐められた側にとってこれ程の屈辱は無い。
    大江がこの信義を「人間の羊」の中で、人の世の正義の傲慢さとして描き出してくれた事に僕は感謝するし、その洞察に敬意を払う。今更だが見逃せない作家として彼の書を今後も手に取っていきたいと思う。

  • 薄暗くてじめじめとした雰囲気が作品全体から感じられる。一つ一つの作品に粘着質でずっしりとした重みがあって、考えさせられる。おすすめです。

  • 「死者の奢り」★★★
    「他人の足」★★★★
    「飼育」
    「人間の羊」
    「不意の唖」
    「戦いの今日」★★★

  • 戦争中の、閉塞された壁の中にいる人々を描いている。6つある作品の、どれを読んでも救いがない。ほんの一瞬見えた希望も、ことごとく打ち砕かれてしまう。読むのは簡単だけど、理解するのは難解。これを読んで、何を思えば良いのかもわからない。それでも読み進めずにいられない、不思議な力がある。

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著者プロフィール

大江健三郎(おおえけんざぶろう)
1935年1月、愛媛県喜多郡内子町(旧大瀬村)に生まれる。東京大学フランス文学科在学中の1957年に「奇妙な仕事」で東大五月祭賞を受賞する。さらに在学中の58年、当時最年少の23歳で「飼育」にて芥川賞、64年『個人的な体験』で新潮文学賞、67年『万延元年のフットボール』で谷崎賞、73年『洪水はわが魂におよび』で野間文芸賞、83年『「雨の木」(レイン・ツリー)を聴く女たち』で読売文学賞、『新しい人よ眼ざめよ』で大佛賞、84年「河馬に噛まれる」で川端賞、90年『人生の親戚』で伊藤整文学賞をそれぞれ受賞。94年には、「詩的な力によって想像的な世界を創りだした。そこでは人生と神話が渾然一体となり、現代の人間の窮状を描いて読者の心をかき乱すような情景が形作られている」という理由でノーベル文学賞を受賞した。

「2019年 『大江健三郎全小説 第13巻』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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