一の糸 (新潮文庫)

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著者 : 有吉佐和子
  • 新潮社 (2007年11月28日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (551ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101132082

一の糸 (新潮文庫)の感想・レビュー・書評

  • 酒屋の箱入娘として育った茜は、17歳の頃、文楽の三味線弾きの弾く一の糸の響に心奪われた。
    天真爛漫で一途な茜が、彼の後妻となり、芸道一筋に生きる男を支える、波乱万丈な愛と芸の世界を描いた物語。

    戦前から戦後にかけて、「文楽」という私の知らない世界で、芸に生きる人々の粋な様子と、愛に生きる茜のひたむきさに引き込まれました。たくさん泣いたし、余韻がしばらく消えなそうです。

    口下手で根っからの芸人で、なんて奴だと思うこともある徳兵衛だけど、理屈じゃなく茜が恋に落ちる瞬間、盲目にそれを追い掛ける過程を見ていると、何割増しにもいい男に思えてしまう。
    実際、一芸に秀でている人、譲れないものがあって自身を磨き続ける人というのは格好いい。

    それに、徳兵衛なりに茜に深い愛情があることが垣間見える場面では、きゅんとします。
    登場人物は昔ながらの粋な人が多いですが、茜の母が中でも印象深いです。強く賢くたくましい女性。

    一冊で人の一生が見える。時代の移り変わりを感じられる。
    そんな一冊だからこそ、するりと時間が経過してしまう部分もあるけれど、行間には濃い時間が流れていて、その月日を思うと気が遠くなる程。

    世間一般のルールとは違うかもしれないけれど、茜にも徳兵衛にも共通して自分のルールがあって、それを大事に守っているところが心に残っています。
    世間に流されず自分ルールを守るためには、強くあらねばならないものですね。

    文楽にも興味を持たせてくれる素敵な1冊でした。

  • 有吉佐和子さん、やっぱり好きだなぁ。
    けど、私は文楽が好きなうえ、沖縄の三線だけれど三味線を弾くのでよかったけど、一般の人はどうなんかなぁ?伝わるんかなぁ?
    芸に或る程度の尊敬を払えるタイプの人でないと、この本は辛いでしょうね。

    有吉さんの何が上手って、ただの芸事の本に終わらず、年とって分かる実の母親の強さ、しなやかさ、結婚をするということの意味、少し前の世代の女性の大変さ、男の静かな友情と呼ぶには軽薄に感じる感情の交流など、様々なテーマを懐深く内包し、かつどのテーマも浅はかになっていないところ。

    文楽もまた、何がすごいって、演奏中に死亡した三味線や太夫と相三味線の仲たがいなどが現実に起きた世界であると云う事。ぽっと出の芸能を解さない政治家の補助金カットに負けず、守り抜きたい関西の大切な芸能なのである。

    有吉さんが文楽から依頼されて書いた「雪狐々姿湖」も見てみたい。

  • 文楽は、ここ5年ほど定期公演に通っており、この世界を描いた小説は関心があります。有吉佐和子さんは凄い人ですね!造詣の深さ、構成力、細部の描写、すべて非凡な作家でした。特に「音締」からは見事な盛り上げで、一気に読ませます。一方、文楽は素材に過ぎないと思わせるくらい、茜の描写が周到で、自我を貫くヒロインの生き様が実在感に溢れています。

  • 造り酒屋の箱入娘として育った茜は、十七歳の頃、文楽の三味線弾き、露沢清太郎が弾く一の糸の響に心を奪われた。その感動は恋情へと昂っていくが、彼には所帯があった。

    二十年が過ぎ、妻を亡くしていた清太郎は、偶然の再会から茜に求婚。それを受入れ後妻となった茜は、芸道一筋に生きる男を妻として支えていく。


    以上、そんな内容です。
    最初は馴染みのない文楽という世界に読み辛さを感じていましたが、徐々に世界に引き込まれていき、
    母親と妻の強さ・愛の強さ、そして芸に生きる真っ直ぐな誇りに魅了された名作でした(^-^*)/
    面白かった!

    母は本当に強しだし、妻も強く素晴らしいのです(^o^*)☆彡
    そして芸に生きる真っ直ぐな誇りは、かつて同じような誇りを持ち、名前ほどは売上がなくても誇りを貫いた過去のLUNA SEAを思い出し、色々考えさせられました。

    理解されにくい誇りを貫いても、生活に困る事がなかった清太郎は幸せだったなと思います。
    そして、文楽という世界を支えた女性の縁の下の素晴らしさに、面白さと敬意を感じる名作でした(^-^*)/

    あらすじに興味を持たれたら、是非読んでみて下さいO(≧∇≦)o

  • 文楽の世界を舞台にした愛に生きた女性の一代記であり、
    芸道一筋に命を賭けた男の物語です。

    タイトルの一の糸と言うのは三味線の3本ある弦の中で一番太くて強い糸なのですが、
    「三の糸が切れたら二の糸で代わって弾ける。
     二の糸が切れても一の糸で二の音を出せる。
     そやけども、一の糸が切れたときには、
    三味線はその場で舌噛んで死ななならんのやで。」
    文中で値段の張る一の糸を贅沢に使う徳兵衛に
    糸を惜しんだ茜が言われるセリフです。

    この本で有吉さんが書きたかったのは
    一途な茜であり、芸道にストイックに邁進する徳兵衛なのでしょうが、
    芯になっているのは、ここかなと思いました。

    茜、徳兵衛、世喜、宇壺大夫みなが一の糸なのでしょう。

    これは文楽という男の世界を舞台にした、
    愛の物語であり、家族の物語であり、
    名人たちがしのぎを削る芸道の物語であると同時に戦いの物語のようでした。

    文楽には全くなじみのない者でも面白く感動出来る作品だと思います。
    これが40年も前の作品だと言うのに全く古びず感動して読める事に感動します。
    覚悟をもった人たちは美しいですね。

  • 芸のいい人は何をしてもOK。文楽行きたい〜

  • 久しぶりに有吉佐和子さん。

    造り酒屋の一人娘である茜は、甘やかされて育つ。
    ある日父親と共に出掛けた文楽で、露沢清太郎の弾く三味線の音色に心を奪われる。

    こうはじまる物語で、茜の清太郎への想いと芸一筋に生きる清太郎とを大正末期から戦中戦後にかけて描いている。

    観たこともなく、正直それ程興味もない文楽。
    日本の芸能の中でも歌舞伎や能や狂言などに比べ、文楽は余り知られていないのではないかと思う。
    文楽とか浄瑠璃、義太夫など聞いたことはあるが、恥ずかしながら区別がつかない。そういう世界に生きるひとたちの物語でもあるが、そもそもわからない世界なので想像しづらい面はあった。
    それでも知らない文楽の世界にも、興味を憶えるような一冊だった。

    甘ったれた茜が時に大胆に時に密やかに、ただ直向きに清太郎を想う姿。
    気ままに生きてきた茜が、義理の子供たちのために奔走する姿。
    芸に生きる清太郎を支え気遣う姿。
    様々な茜の描写の中に、女性としての成長と成熟がうかがえる。
    ただ清太郎への想いが激しく、深く考えずに行動してしまうところがある茜に心情としては寄り添いにくいものがある。

    戦中戦後は有吉佐和子さんの作品には多く描かれているが、戦争を知らないわたしからすると呑気とも思える程変わらない日常を送るひとが多いように感じる。
    空襲が激しくなっても疎開もせず三味線を弾きつづけた清太郎や、恐怖を感じながらもそばを離れない茜といった記述からも清太郎の芸事への姿勢がうかがわれると共に、戦中であっても文楽を楽しむひとびとの日常が感じられる。

    清太郎が三味線の糸についてのこだわりが厳しいことに対し、茜が経済的に苦しいため反問したときの言葉が芸事に命を懸ける想いが伝わってくる。

    「三の糸が切れたら、二の糸で代わって弾ける。二の糸が切れても、一の糸で二の音を出せば出せる。そやけども、一の糸が切れたときには、三味線(弾き)はその場で舌噛んで死ななならんのやで」

    ラストは概ね想像通りではあるが、有吉さんの手にかかると場面が鮮やかに見えてくるようで、予想通りでつまらないとは思わなかった。

    茜は有吉さんがよく描く、弱そうでいて芯の通ったキリッとした女性とは少し違うが、寄り添えないと感じたのにも関わらず最後には知らないうちに寄り添ってしまえるのは、有吉佐和子の文章だからだろうか。

  • 久しぶりに文楽を観たので、再読した。
    渡辺保の「昭和の名人 豊竹山城少掾」を再読した後だったので、表と裏、モデルとなったと思われる事件との対比がおもしろく読めた。
    これほどまでに惚れて入れ込んで崇拝できれば、色恋なんぞこえて幸せだろう‥

  • 激情にかられる女の人の気持ちは、若い時ならもっと共感できたかもしれない。今読むと、それはそうしちゃうまくいかない!とか突っ込んでしまう。

  • 男に、三味線に、文楽に。ZOKKONラブだらけ。芯の通った強さ、一途な姿勢が美しくもあり、おいおいおいと突っ込みどころも満載。

  • 第一部の茜と清太郎がどうなるかドキドキしながら見て、第三部は戦後の文楽の厳しい状況を、今の助成金打ち切りで揺れる文楽の状況を重ね合わせて読んでしまった。

  • 我儘な一人娘、茜が文楽三味線弾きの清太郎(徳兵衛)に惚れ、彼の後添えになり、彼の芸を支え見守った話。
    あるいは、茜の目から見た三味線弾き露沢徳兵衛の生涯。

    茜は自分の思いを募らせ暴走、清太郎は三味線馬鹿で女癖が悪い。初めはこの話を読み終えるのは無理かもしれないと思ったけれども、関東大震災、家族の問題、文楽のことなど色々なことが詰まっていて、引き込まれてしまった。
    三浦しをんさんの解説も嬉しかった。

    有吉佐和子さんは学生時代に課題図書で「複合汚染」を読んで苦手意識を持ったのであまり気は進まなかったのですが、また読んでみたい。

    そういえばこれは大正七年頃から昭和の戦後にかけての話で、今、放送している朝ドラ「ごちそうさん」と時代は同じだなぁと、どうでもいいことを思いました。

  • 「妻の座は強い」
    主人公茜の母親の言葉であり、この本を読んだ私の感想でもあります。

    「一の糸」は芸に打ち込み芸に燃え尽きた男と、その男を一途に思い続けた女性のお話。
    造り酒屋の箱入り娘茜は文楽の三味線弾き、清太郎に恋をする。
    やがて二人は手紙を交わす間柄となり、世間知らずな茜は清太郎の妻になれるものと思い込んでいた。
    所が、清太郎には既に妻がいた。
    その後、二十年の時を経て二人は再会を果たし夫婦となる。

    娘時代の茜の純粋な恋心。
    妻となってから夫につくす愛情。
    どちらも胸にじんと染み渡りました。

    私がこの話で最も感動したのは、普段は娘を諌める茜の母が清太郎に向かって凛と言葉を発した場面。
    お嬢さん育ちながら後年逞しさを見せた茜の気質は、このお母さんの背中を見て育ったからだと思います。

    二の糸、三の糸は替りがきく。
    楽しいときだけでなく、苦しいときを共にしてこその夫婦。
    何ものにも変えがたい「一の糸」なのだとこの本を読んで思いました。

  • 初めは苦手だった茜を読み進めるうちに応援していた

    三味線を弾くシーンは、弦を爪弾く振動がこちらまで伝わってくるかのよう。

  • 本を開いた瞬間、改行の少なさにひるみました。
    読みづらそうだなーって思ったのに、面白さにぐいぐい引き込まれ、あっという間に読み終わりました。
    一昔前の朝ドラを彷彿とさせる濃厚さでした。

  • 古めの本で表紙が異なる、人から借りた本。
    茜の人生はの波乱万丈で、悪く言えば近代版昼ドラのようなアウトライン。ただ、関東大震災、戦争など大正から昭和にかけて変動の時代であり、近代化へ進む日本の中で風習も変わり、充分起こりうるかと思った。その茜の波乱万丈の人生、心情が如実に描かれている。
    最初は入り込めなかったが、時代背景を捉えるとその茜の成長が伝わってきた。内容の濃い本である。
    「文楽」について、もっと知ってれば、さらに面白かったんだろうけど。

  • 存在したかもしれない・・・と思わせてくれるほどの迫真。
    きっとこんな女性はいたかもしれないし、文楽の三味線に命をかけた芸人はいたかもしれない。
    一気に読み終えたし、余韻もたくさんいただいた。
    さすがに有吉佐和子。無駄がないし、引き込まれるし、読後の後悔などありえない。
    文学は本当におもしろい。

  • 文楽のことが全くわからないのが
    悔しいけれども
    有吉佐和子さんの美しい日本語と文体に
    魅了されます。
    芸人たちの話す大阪弁がいい。

    女心の機微は相変わらず表現が素晴らしく
    時折、自分自身の中の言葉にできないような
    もやもやとした感覚も、
    「そう、こういうことなのよ」と膝を打ちたくなるほどの
    絶妙かつ美しい言葉で表現されていて
    爽快感さえあります。

    登場人物のなかではやはり茜の母、世喜の見事な生き様に
    惚れ惚れ。 昔の女性は芯が強かったんだなぁ、やっぱり。



     

  • 三浦しをんさんのエッセイで文楽にはまり、手当たり次第に関連本を読んでいて、手にとる。茜の突っ走り具合に最初は「おいおい」となっているのだが、だんだんシンクロしてきて、徳兵衛を見守っている気持ちになる。芸に憑かれた男と、芸の世界には一生身を置けなくても、見守り続ける女と。どちらもそれで幸せであることと。

  • 題名にもなっている一の糸は、三味線に貼られた糸。義太夫節の三味線は太棹と呼ばれて他流より大きい。上から順に一の糸、二の糸、三の糸が張られている。一番太い一の糸は、二千本もの細かい絹糸で縒って作る。
    三味線弾きの職業病は心筋梗塞で、主人公徳兵衛も楽屋に戻ったとたん、茜の前で息をひきとる。

  • 流し読みが出来ない一冊。読者を殺す文章とはまさにこのこと

  • こんなに一途な愛を知れて素敵な時間を感じた。


    古い本。母の本棚にあったものを本屋で見つけ、購入。違う作品もだけど、有吉作品は主人公の女性の生き方に作者の信念を感じる。心に決めたものに一途な主人公がすき。高校のころ読んだ作品も読み直してみようかな。

  • どうも古い方のバージョンらしく、表紙の絵が違いますが・・・。

  • 面白かった〜
    三人称小説ではあるが、完璧茜視点なので、清太郎(徳兵衛)への気持ちが切なくっていじらしくって。でも家族になってからもずっと尊敬であり恋であり、愛とか欲とかではなかったような。それが「妻」ということばに象徴されるものなのかもしれない。世喜が「弓次郎」とよび茜が「お父さん」と呼び慣わしたことにも。うーんうまくいえない。芸は男のもので、女はそこに入れない哀しさはあるけれども、それに惹かれ支えている立場は自信となり誇りとなり女を支えていく。どちらの生き方も心動かされるものだと思いました。

  • わがままで、贅沢好きで、
    夢中になると理性なんてふっとんじゃう茜

    わたしの中にも茜がいることを思い出した

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造り酒屋の箱入娘として育った茜は、十七歳の頃、文楽の三味線弾き、露沢清太郎が弾く一の糸の響に心を奪われた。その感動は恋情へと昂っていくが、彼には所帯があった。二十年が過ぎた。清太郎は徳兵衛を襲名し、妻を亡くしていた。独身を通して茜は、偶然再会した男の求婚を受入れ、後添えとなるのだった。大正から戦後にかけて、芸道一筋に生きる男と愛に生きる女を描く波瀾万丈の一代記。

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