悪女について (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
3.98
  • (268)
  • (241)
  • (203)
  • (26)
  • (10)
本棚登録 : 2487
感想 : 305
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (528ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101132198

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 富小路公子。
    強烈すぎる。
    当分私も「まああ」と言ってしまいそうなほど夢中になって読んだ。
    一人の人物について27人が語る形式。

  • ひさしぶりに読んだ。読むものがないときに夢中になれる殿堂入り鉄板小説のひとつ。
    本当に面白い。

    --------------------------------------
    中学生 八百屋の父親死亡、旧華族の家に女中として働きに出る。宝石の職人と親しくなる。
    16歳 簿記の夜学に通う。ラーメン屋の親父、華族家の息子の愛人となる。ラーメン屋のレジをやりつつ最初の夫と同棲。こっそり入籍し、長男妊娠。
    17歳 長男出産 夜はラーメン屋、昼は宝石店で働く。旧華族たちから宝石を集め始める。
    18歳 次男出産、最初の夫が入籍に気づき裁判。
    22歳? 最初の夫と離婚成立、大金を得る。おそらくこのお金をもとに土地を転がしはじめる。ラーメン屋の親父からレストランの経営を任され、経営者に。
    27歳 2度目の結婚。子どもは親の養子にしたため子持ちであることはバレない。
    29歳 離婚。慰謝料として都内の一等地を得る。二人の子を引き取る。
    30代 高級ジムを開く。そこに集まってきた金持ちたちから宝石を安く買い取り、彼らに模造宝石を高額で売る。ごまかせる相手かどうか見極めて売っていた模様。年齢は10歳サバを読む。タレント活動を始める。長男が駆け落ち同然で結婚。
    40歳 ジムの若手トレーナーと婚約。結婚式の数日前にビルの窓から飛び降りる。
     ラーメン屋(次男の父)とは四日前に会っていた。華族の息子(長男の父)とは、結婚式のあとで会う約束をしていた。ふたりともずっと続いていた。

    秘儀は美貌と床上手。「あの女の味を知ってしまったら」なんて台詞、男に言わせてみたいもんだよ。どこで覚えたんだ。
    そして謙遜。けして自慢せず人の悪口を言わず、口先では感謝しまくる。利用されたことに相手が気づいて怒ると、「そんなつもりはなかったのに、誤解されて悲しい」と泣く。
    付け届けは欠かさない。世話になった人、役にたちそうな人には必ず何か、すごいものをあげてる。人付き合いのお金は惜しんだらいけないのね。

    不思議なのは、華族息子との恋愛の継続と、最後の婚約。二度の結婚とラーメン屋は、明らかに財産目当てだが、このふたりとの恋愛にはメリットがない。ラーメン屋だって成功してからは捨てたってよかったはず。
    もしかして本当に好きだったんだろうか。この女に限って、と思うけど、そういいきれない可愛げが公子にはある。
    実の母親に対する態度は嫌な気持ちになるけど、宝石鑑定の人のことは本気で慕っているようにも見える。

    主人公の主観一切なしでこれを書いたのもすごいが、主観では書けなかったのではないかと思う。
    好感とも違うが、女にとってはスカっとするところもある。普通に玉の輿にも乗れたのに、それをせず、男を利用してのし上がって行くのが。


    女とインテリには嫌われてるけど、男とバカには好かれるよう。私はバカの部類に入ります。

  • ページを開き 面白い。と読み進め
    中版は「あの人はね…」的な よく言ったり悪く言ったりの連続にちょっと 疲れ
    後半に入ると 謎解きの要素も加わっての一気読み。
    それにしても ひとりの女性なのに 語る人で天使になったり悪魔になったり これを自分から故意で操作していたのだとしたら… したたかという言葉を超えてるだろうな 病むと思うが…
    ほんとのところはどうだったのだろう
    細かい謎は残るけど あ~そうだったんだね。と最後に思った。

  • どうも自分は多視点の物語が好みのようだ。
    主人公の女性の視点は一切描かれず、彼女と関わった人々がそれぞれの主観で物語を語るスタイル。
    それぞれは見たことを語るだけなのだが、章が進むうちに人間の主観の偏りや小さな嘘が明らかになっていく。そこが面白い。そして主人公の多面性。
    騙された男たちはある意味で自己評価が高い。自惚れているとも言える。
    下品にならずに人間の下衆な面を描いている作品。

  • 男に都合の良い女に、みんな寝首をかかれてしまえ。

  • 実際、取材する人ってこんな感じなのかな
    どれが真実かわかんない…

  • 話の本筋が面白いのはもちろんのこと、昭和時代ってこんなにもいろんな喋り方をする人がいたということ、戦争を精神的に引きずっている復員男性が身近にいる環境だったこと、あの苗字は華族にはないはずだとわかることなどなど、当時の市政の人々の様子を垣間見ることができたのが面白かった。

    2章目まで読んだ時点で、公子は大小問わずたくさんの嘘をついているのでは?ということが読者には察しがつく。
    察しがつくとはいえ、あの二枚舌?三枚舌外交の鮮やかさ!
    途中まで、妊娠出産をダシに男性を騙すのは許しがたいな〜と思って読んでいたけど、騙されていた男性がどんどん出てくるので、もはやその手口の鮮やかさに感服してしまう。

    公子が悪女と言われたり優しい人だと言われたり、いろんな言い方をされていたのも興味深かった。実際お金を得るためにいろんな人を騙した腹黒い部分も持ち合わせているのだろうけど、そんな人でもそりゃ無邪気な側面や優しい側面もあるだろう。悪女という評価が間違っている、清廉潔白という評価が間違っている、ということではなくて、どちらの面も併せ持つのが公子という人なんだと思う。公子じゃなくても、相手によって見せる顔を使い分けるということは誰しもしている。

    有吉佐和子さんの本を読むのはこれが初めて。他の作品も読みたいと思った。

  • 一人の人間を浮かべる時に、人によって印象が違うしいろいろな面があるってことを再確認。
    主人公はどこまでも自立していて、そして騙されたことを知らずに生きている人たちはまた幸せなり。

  • 《自殺か、他殺か、虚飾の女王、謎の死》――醜聞(スキャンダル)にまみれて謎の死を遂げた美貌の女実業家富小路公子。彼女に関わった二十七人の男女へのインタビューで浮び上がってきたのは、騙された男たちにもそれと気付かれぬ、恐ろしくも奇想天外な女の悪の愉しみ方だった。男社会を逆手にとり、しかも女の魅力を完璧に発揮して男たちを翻弄しながら、豪奢に悪を愉しんだ女の一生を綴る長編小説。

  • 富小路公子を取り巻く27人がそれぞれ自分の思う彼女を語ることで、何も語っていない彼女が浮かび上がってくる物語。語る人によって印象が大きく変わるが、自分のやりたい事のために突き進んでいる、という点は一貫しているなと思った。27の彼女を知るうちに、自分の中にも私の思う"富小路公子"が出来上がっている気がする。
    結局、真実など誰かを通した時点で存在しないのではないか。

全305件中 21 - 30件を表示

著者プロフィール

昭和6年、和歌山市生まれ。東京女子短期大学英文科卒。昭和31年『地唄』で芥川賞候補となり、文壇デビュー。以降、『紀ノ川』『華岡青洲の妻』『恍惚の人』『複合汚染』など話題作を発表し続けた。昭和59年没。

「2023年 『挿絵の女 単行本未収録作品集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

有吉佐和子の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×