人情裏長屋 (新潮文庫)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (376ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101134321

感想・レビュー・書評

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  • 表題作がいい。人情と理の区分。平易に語られるヒューマニズムです。

  • 確か。

  • (2013-01-23L)

  • 古い作品も多く収められている。
    全般的に面白く読めるけど、バラつきはありますね 笑

  • 長屋にて生活する人々の正直であるがままの呼吸を感じる事ができる短編作品集。共通のテーマは"他人への思いやり"か。裏長屋に込めた筆者の思いは、ギリギリの生活の中に灯すわずかな希望がつまった場。そして地道に稼ぐ人間が汗のする銭でつつましく生きる場かな。特にお勧めの作品は「おもかげ抄」と表題作の「人情裏長屋」。ふか~い愛情にふれ感涙に咽んだ~ 。秋の夜長に読む本としてうってつけ。

  • いいんだよ、これ!!!
    なつかしい「ぶらり信」兵衛」を思い出すんだよね。うわ~古い

  • 11篇からなる短編集。

    「おもかげ抄」
    周囲から甘次郎と呼ばれるほどに女房に甘い鎌田孫次郎は、腕も確かで武士を助けたことで仕官の道が開ける。しかし孫次郎の妻は、本当は既に亡くなっていて…。

    「三年目」
    大工の友吉は博打から足を洗うために、許婚のお菊を信頼できる友、角太郎に預けて上方に旅立った。しかし戻ってみるとふたりは夫婦となっており、怒りに駆られた友吉はふたりの住処を捜し当て…。誤解が解けてよかった!

    「風流化物屋敷」
    おおらかな性格の武士、御座平之助が化物屋敷と名高い屋敷に越してくる。日々、物音がしたり化物が脅かしてくるが平之助は平気の平左、ちっとも動じない。賭場として使いたいがために博打打ちたちが化物屋敷として広めていたというのがオチ。

    「人情裏長屋」
    松村信兵衛は優れた剣客であり、弱きに優しい武士である。長屋の住人とも親しくしていたが、ある日ひとりの浪人に親切にしてやると、浪人は信兵衛に赤子を押し付けて消えてしまう。酒を断ち、赤子を育てるが…。

    「泥棒と若殿」
    藩の後継ぎ争いに巻き込まれた末に孤独に貧しく暮らしていた武士の屋敷に伝九郎という名の泥棒が押し入る。あまりの窮乏に見かねた伝九郎は武士の世話を焼いてやり、ふたりは楽しく暮らしていた。そこへ藩からの迎えがきて…。「信さん、行ってしまうのか」の台詞が切ない。

    「長屋天一坊」
    長屋の家主である吾助は業突く張りの嫌われ者。女房と娘もそれに張る強烈な性格の持ち主。吾助が家系図に興味を持ったことから起きる騒動。

    「ゆうれい貸屋」
    職人の弥六は芸妓の幽霊お染と意気投合し、幽霊を貸す商売を始める。しかし思うように働いてもらえなかったり、人間に負けて返ってくる幽霊も。すったもんだの末に実家に帰っていた女房とやり直すことになる。

    「雪の上の霜」
    「雨あがる」の続編。伊兵衛は武芸には優れているが、優しすぎる性格が災いして仕官の道を見出せない。病気の妻おたよを養うために街道で荷物運びをして日銭を稼ぐが、人足達から縄張り荒らしだと責められ…。己の立身出世よりも他人が虐げられることに我慢がならない伊兵衛を支える妻の姿が微笑ましい。

    「秋の駕籠」
    駕籠屋の相棒である六助と中次は、普段は一緒に暮らすほどに仲がいいが、時折つまらないことで喧嘩をする。ある日、払いのいい客を乗せて箱根まで行くが、途中でその客を追ってきた男にそいつは詐欺師なのだと教えられる。タダ働きかと意気消沈するふたりだったが…。

    「豹」
    正三は兄が死んでから、義姉と甥が暮らす家に寄宿していた。ニュースで近くの動物園から豹が脱走したと知り…。女の生々しさと情。

    「麦藁帽子」
    偶然であった老人から昔話を聞く。いったいどこまでが真実だったのか、それとも全てが老人の紡ぐ物語だったのか。

  • 再読(何回目かの)
    昭和8年から27年に書かれた作品を集めた短編集です。
    山本さんは分りやすい作家で、若い頃は書割りの様に薄っぺらく、年を経るに従い深みが出てきます。この短編集でも戦前の作品は小中学生向けの読み物の様で、後の作品になるほど読み応えが出てきます。もっとも、本当に円熟味が出てくるのは昭和30年以降という気がしますが。
    とはいえ、久しぶりに周五郎の世界に浸りました。

    ==================
    05-100 2005/11/08 ☆☆☆☆

    全体としての出来は中くらいでしょうかね。やや”こっけいもの”が多く、また初期の作品が多めの構成です。
    周五郎の面目躍如とまでは行きませんが、収録されている初期作品も、将来の周五郎を予感させるような、その時代の中では出来が良い作品が集められているようです。
    ちなみに「雪の上の霜」は寺尾聰主演で映画化された「雨あがる」の姉妹編。

  • 武芸や学問の才は並外れているが要領がわるく、他人のかなしみを見過ごせないためにいつも士官が果たせない、山本周五郎が繰り返し描くテーマの一つである「雪の上の霜」や、同じく得手とする、市井の人々が寄り添いながら生きる日常を書いた「おもかげ抄」「人情裏長屋」、軽くてテンポのよい展開にくすりとする「風流化物屋敷」「秋の駕籠」、各々が向き合わなければならない責任と共感の心を描いた「泥棒と若殿」、現代ものの「麦藁帽子」等が良かったです。表題作の長屋が示すとおり、今短篇集ではストレートな武家社会ものは除かれております。

  • 短編集でしたが、どの話も面白かったです。ゆうれいとの掛け合いがおかしくって大笑いしました。面白さというのはいつの時代も変わらないのだな、と心が和みました。

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著者プロフィール

山本周五郎(やまもと しゅうごろう)=1903年山梨県生まれ。1967年没。本名、清水三十六(しみず さとむ)。小学校卒業後、質店の山本周五郎商店に徒弟として住み込む(筆名はこれに由来)。雑誌記者などを経て、1926年「須磨寺付近」で文壇に登場。庶民の立場から武士の苦衷や市井人の哀感を描いた時代小説、歴史小説などを発表。1943年、『日本婦道記』が上半期の直木賞に推されたが受賞を固辞。『樅ノ木は残った』『赤ひげ診療譚』『青べか物語』など、とくに晩年多くの傑作を発表し、高く評価された。 

解説:新船海三郎(しんふね かいさぶろう)=1947年生まれ。日本民主主義文学会会員、日本文芸家協会会員。著書に『歴史の道程と文学』『史観と文学のあいだ』『作家への飛躍』『藤澤周平 志たかく情あつく』『不同調の音色 安岡章太郎私論』『戦争は殺すことから始まった 日本文学と加害の諸相』『日々是好読』、インタビュー集『わが文学の原風景』など。

「2023年 『山本周五郎 ユーモア小説集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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