楽天旅日記 (新潮文庫)

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感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101134406

感想・レビュー・書評

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  • 軽快な文章で物語に入りやすく、間抜けな馬鹿殿様の珍道中で、大御所の作品にしてはこんな「アホ」な作品で良いのかと思ったら、最後の対面シーンで一気に胸が熱くなった。

  • 大吉田藩七十万石の正嫡順二郎は、四歳の時、側室一派の陰謀によって廃嫡され、国許で幽閉同然の生活を送る。ところが、二十四歳になった時、世継ぎとされていた側室の子が突然死亡し、順二郎は隠密裡に江戸表へ迎えられる事になるが……。お家騒動の渦中に投げ込まれた世間知らずの若殿の眼を通して、現実政治に振り回される人間たちの愚かさとはかなさを諷刺した長編小説。

    ---

    周五郎風の風刺を効かせた癖の強い話。周五郎の滑稽物は癖が強い。というか何かを風刺するときには滑稽さというか悪ふざけを大げさにすることでマイルドにしている感じなのかと。

    主人公が特に自覚も危機感もないまま騒動に巻き込まれつつも、主人公の素質や自力でもって自体が進んでいくという様は最近の”なろう小説”のようですらあるけど、物語の向かうところは違っていて、締めの持っていき方はなるほどというところでしたし、そこら辺に風刺の効いているところなのかとも思う。キャラの立ち方も良い。「超高速!参勤交代」みたいなノリの映画にしたらいまでも面白いのではないかと思う。

    風刺のきき場所について。周五郎は政治をきれいなものとしては描かない。周五郎の描く政治を引き受ける人間は業を背負っていることが多くて、そして街の人間たちにしてみれば関わりの濃いものとしては描かれていない。これは江戸時代の話であって、明治の話なのかもしれなくて、現在の日本政治や社会の姿なのかもしれなくて。

  • 側室派の陰謀により廃嫡されお蚕様のように育てられた順二郎がいかに目覚めてゆくか。登場人物がやたらと多いにも関わらず皆いきいきと頁のなかで暴れている。とはいえ基本的にこれは喜劇だ、電車の中で読んでいて苦しいほどだった。時々、活動弁士のように周五郎が現れて解説をいれるところなどまるで談志の高座をみているよう。

  • 年少の頃、城内の者の陰謀によって城を追われた順二郎。そして成人した頃、後を次ぐはずだった者が亡くなり長男であった順二郎が後継者となる運びになるが、またまた城内の者の陰謀で殺されかける。命の助かった順二郎は彼を後継者として立てようとするものと江戸へ旅をして行く。

  • 周五郎に稀な滑稽本。お家騒動の渦中に投げ出された純粋無垢な順二郎。政治のはかなさ、人間の愚かさを現代にもなぞらえて風刺する。13.6.23

  • 乐天旅行的日记。日本的江户时代幻想话。无知的大力量王子的独立的故事。

  • 再読了。

    選挙真っ最中のためか・・
    「大多数の人間は陰では不平を云いながら、実際には伝統と権力に支配されたがるもので、いかに合理的な制度であっても、伝統を破壊したり権力を否定することは決して好まない」 (295頁)
    ・・なんて言葉が、妙に心に残りました。

  • 珍しく砕けてるからうーん。その濡れ場?と呼ぶべき?いらなくない?とか。主人公の真っ直ぐなのはらしくていいけど

  • 武家ものなんですが以外とお気楽痛快ものでした。
    主人公の性格がいいですね。憧れます。
    私、男の人の権力争いとか大嫌いなんだけど思わず順次郎を応援しちゃってました・・・。
    でもこの若にとっての幸せを一番に考えてたのはやっぱり親なんだなぁ・・・。
    ってかそもそも女を見る目がないお父さんが悪いぞ!!

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著者プロフィール

山本周五郎(やまもと しゅうごろう)=1903年山梨県生まれ。1967年没。本名、清水三十六(しみず さとむ)。小学校卒業後、質店の山本周五郎商店に徒弟として住み込む(筆名はこれに由来)。雑誌記者などを経て、1926年「須磨寺付近」で文壇に登場。庶民の立場から武士の苦衷や市井人の哀感を描いた時代小説、歴史小説などを発表。1943年、『日本婦道記』が上半期の直木賞に推されたが受賞を固辞。『樅ノ木は残った』『赤ひげ診療譚』『青べか物語』など、とくに晩年多くの傑作を発表し、高く評価された。 

解説:新船海三郎(しんふね かいさぶろう)=1947年生まれ。日本民主主義文学会会員、日本文芸家協会会員。著書に『歴史の道程と文学』『史観と文学のあいだ』『作家への飛躍』『藤澤周平 志たかく情あつく』『不同調の音色 安岡章太郎私論』『戦争は殺すことから始まった 日本文学と加害の諸相』『日々是好読』、インタビュー集『わが文学の原風景』など。

「2023年 『山本周五郎 ユーモア小説集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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