燃えよ剣(上) (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (592ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101152080

感想・レビュー・書評

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  • おれのやりたいのは、仕事だ。
    おれァ、職人だよ。
    新選組を天下第一の喧嘩屋に育てたいだけのことだ。

    土方歳三は、新選組が烏合の衆だけに、鉄の組織をつくらねばならぬと考え実行する。その結果、鬼の副長として隊士から怖れられ憎まれることにもなった。隊を緊張強化させるために、いやな命令、処置は全て自分が引き受ける。局長である近藤勇が隊士から慕われるよう、全ての憎しみを自分がかぶる。彼にとって新選組を強靭な隊にするためなら、そんなことぐらい痛くも痒くもなかったのだろう。全ては新選組のため。信念を貫きとおす歳三に漢を見る。
    そんな気概を理解しながら、いつもちょっかいを出すのが沖田総司。沖田はひそかに俳句をつくるという歳三をからかい、具足をつけ、甲冑を着こんだ歳三の姿を五月人形呼ばわりする。沖田とのやり取りを垣間見ることで、歳三とて赤い血が通う人間なのだとひそかに安堵する。
    だからと言って、「新選組副長」としての歳三はやはり鬼のような漢に違いない。

    そんな歳三が、どういう意味で沖田を選んだのか。山南敬助が脱走したときのことである。
    歳三と山南は結盟以来の古い同志である。それ故にお互い憎しみの感情が膨れてくる。その山南が脱走し、その追手として歳三は、山南が弟のように可愛がっていた沖田ひとりを向かわせる。局中法度では無論切腹である。しかし歳三は、山南が自分の大切な者に斬られるのか、それとも斬るのか。沖田が自分を大切にしてくれた者を逃がすのか、捕捉するのか。それらの判断をふたりに委ねたようにしか思えない。
    沖田の「なぜ山南は自分に追いつかれてしまったのか」と腹立たしく思う気持ちはわかる。山南の「追手が君なら、仕方がない」との気持ちも何だかわかる。それは二人の築いてきた兄弟のような関係があったから。でも、歳三はどうだったのだろう。山南が憎かったとはいえ、やっぱり長年ともに過ごした情が込み上げてきたのだろうか。それは、鬼が見せた優しさだったのだろうか。

    鬼。実は私にとって鬼は沖田かもしれない。それも美しく幽玄なる鬼。可愛らしく無邪気でありながら、たくさんの人を斬る。何だか彼の精神が孤独の深淵に沈吟しているように思えたからだ。

  • 新選組をテーマにした作品は沢山あるが、今までは興味を持って、見てきたものはそれほど無かった。今回も妻からの勧めで、司馬遼太郎作品から始める。あまりにも有名な小説だ。
    京都育ち、京都住まいの私。新選組が歩いた京都の世界に、引き込まれるのにはそう時間は掛からなかった。

    時は幕末。ここ京都。その名は新選組。
    よく見るあの羽織、誠の字。色んなイメージがあるだろう。
    本書は土方歳三にフォーカスした時代小説。
    格好いいけど、どこか寂しく、不器用な男。剣に生きたその姿を描く。

    概ね、登場する人物の印象は、他のそれと変わらないが、沖田の人柄には誰だって好感を持ってしまうだろう。だから切ないのだ。

    新選組を強くする。その為に、あくまで副長であること、近藤を輝かせ、嫌われ役は引き受ける。妥協を許さぬ規律の中で、登場人物それぞれの思惑が交差する。
    また、人の感情、腹の底について巧みに表現されていて、読んでいて心が動く。

    嘘のようで本当の話。本当のようでうその話。
    全部ひっくるめて、エンタメ作品である。
    かつての日本に実在した若者たちの熱き活動を見る。

    上巻読了。
    下巻へ。

  • ずっと読みたいと思っていたけど、歴史小説は難しいと思っていたから、ずっと積んであった。
    なんでもっとはやく読まなかったんだろう。
    思っていたよりも読みやすいし(ちょっと難しいところはサラッと流しても問題ない)、日本史の知識があまりないわたしでも理解できる。
    歳カッコよすぎ。沖田総司も好き。
    下巻へ、、、

  • 日本最強の喧嘩屋集団、新撰組を組織する。
    組織を強くするのは気組と秩序。そして例外を認めないこと。

  • 新撰組立ち上げから、岐路まで。

    土方からみた
    近藤、沖田、山崎、齊藤、伊藤、山名などなど、
    新撰組を知りたいなら上巻を読めば良い。

    この時代になぜここまで名が轟く組織が完成したのか、
    その謎のアンサーとしては十分なほどの上巻である。

    近藤がブレブレななか、土方が全くぶれず局中法度など統制を縛る制度で組織力をあげてり。それを緩和するような近藤のゆるさが新撰組の屋台骨である。

    裏切りや粛清も組織内で多々発生するが、皆大義があり土方も武士としてそれらを粛清している為、粛清する度に、不安感ではなく安心感・統率感のようなものが感じられた。

    土方歳三という、人物はトップには立てない。
    ただブレないそして、欲がない。

  • 歳三や総司が魅力的なのは言わずもがなだけど、七里や山南も好きだなー。
    近藤が思想を重んじたのに対し、歳三はルールや士道を用いて組織を強化しようとしたのが興味深いですよね。

  • 新撰組について読むの初!
    しかも今見てる大河ドラマとちょっとかぶってた時代でもあり面白い!
    七里との対決気になる!

  • 時代小説って取っ付き難いイメージがあるので敬遠してたけど、この作品は凄く読みやすいです。
    土方歳三のイメージが思ってたより違くてビックリしました笑
    喧嘩師のバラガキ性分を、新撰組副組長になったとて変わらないその生き様に魅了されました。
    上巻は結成から池田屋事件と、最盛期を描いていて、かなり盛り上がりました。

  • ☆☆☆2020年12月☆☆☆


    2004年、僕が20歳だったときに大学の生協で何となく手に取って読んでみたあの時。
    僕が本を読む楽しみを知るきっかけになった本だ。
    あの時は単純に「土方歳三ってかっこいい」そう思った。
    僕の人生を変えた一冊と言っていいだろう。
    学生時代は何度も読んだ。


    このたび、10年以上のブランクを経て読んでみると、「土方とは意地悪な男だ」と思うことが多かった。
    自分の変化に驚いている。
    特に山南を干して追い詰めたやり方はいやらしいと感じる。

  • 司馬遼太郎ずっと避けてきたけど(歴史に興味なかったし、面白くなさそうって偏見)、面白かった!!
    これ小さい頃から読んでたら日本史好きになりそう笑
    もっと前に読めば良かったと後悔した…笑

著者プロフィール

司馬遼太郎(1923-1996)小説家。作家。評論家。大阪市生れ。大阪外語学校蒙古語科卒。産経新聞文化部に勤めていた1960(昭和35)年、『梟の城』で直木賞受賞。以後、歴史小説を次々に発表。1966年に『竜馬がゆく』『国盗り物語』で菊池寛賞受賞。ほかの受賞作も多数。1993(平成5)年に文化勲章受章。“司馬史観”とよばれ独自の歴史の見方が大きな影響を及ぼした。『街道をゆく』の連載半ばで急逝。享年72。『司馬遼太郎全集』(全68巻)がある。

「2020年 『シベリア記 遙かなる旅の原点』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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