塩狩峠 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (464ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101162010

感想・レビュー・書評

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  • 読後10年経った今でも、鮮明に心に残る本。

    北海道に行くことになり、ふと、この本のことを思い出した。私にとっては初めてキリスト教に触れた小説。明治の言葉で書かれた息遣いの中で、人間の美しい部分と醜い部分とが揺れ動く。
    クライマックスに向かうにつれて加速する物語のスピード感は一級品だと思う。物語の中に入り込み、思わず涙が溢れるエピソードが実際の事件を元にしたものであったとは驚いた。美しい、清らかな感情が心を動かす。これからもずっと大切にしたい本。

  • とても大切に想っている人から薦められた小説。

    読み終えて、信夫さんの人生にとても感動し、
    同時にとても悲しい気持ちになった。
    自分にはとうてい真似できない。
    ふじ子さんの最後のシーンも想像すると、
    とてもやりきれない。
    もう少しで幸せを手にするはずだったのに…。


    そして、この小説を薦めてくれた大切な人と、
    読書感想を話しあえた事、きっと忘れない。

  • 2020.10.31何度目だろうか。読了。読んだことがあるはずなのに、冒頭から新鮮な気づきばかり。きっとこの本は、手放せないだろうなぁ。名著。心が綺麗になったような読後感。最後は涙が止まらない。

  • 実話を下にした小説で、三浦綾子さんらしく、人間や信仰の本質を問う作品になっている。一度でいいから塩狩峠に行って、思いを馳せたい。

  • ようやく結ばれるはずの信夫とふじ子に、悲しい結末が待っていた。信夫はふじ子の待つ札幌に向かう途中の汽車で、乗客を助けるため、自分を犠牲にして亡くなってしまう。神を信じ、「神のなさることは、常にその人に最もよいことなのですよ」と語っていた信夫なので、犠牲の死を選んだことは悲観的にならなくてもいいのかもしれない。でも、物語の最後に、吉川とふじ子が事故のあった塩狩峠を訪れ、信夫の亡くなった場所にうち付し、胸を突き刺すような泣き声をあげて泣いているふじ子の姿に、やっぱり凄く悲しくなり、涙が出てきた。ふじ子の泣き声が、雲ひとつない青空の塩狩峠全体に響いている情景を想像した。
    最愛の人を失くしたふじ子の気持ちは、想像もできないほど悲しくさびしいものだろうけど、生涯信夫に愛され、一生貫ける愛を知ったふじ子は、幸せだと思いたい。
    「塩狩峠」を読んで、立派ではなくても、自分を信じれる人になりたいと思った。

  • 主人公は鉄道職員の永野信夫。彼の生涯を追った作品。もともとキリスト教徒のことを「ヤソ」と呼び否定的な考えを持っていた信夫が、如何にしてキリスト教に入信したのか、どんな考えを持ってどんな行動をとったのかが「愛と信仰」をテーマに丁寧な言葉で描かれている。実際にいた人物がモデルになっており、塩狩峠には彼の石碑も立っていたような記憶がうっすらとだがある。小説の舞台になった場所を訪れてみるのも感慨深いものがある。

  • 随分前からこの作品と作者の名前を知っていましたが、初めて読みました。思っていたよりもかなり読みやすく、なおかつおもしろい話で、一気に読んでしまいました。
    おもしろいだけでなく、胸に重いものがずしんと伝わってくる話です。作者が連載前に本作のテーマを「犠牲」としていたことを語っていたそうですが、これが書かれた時代に既に自己犠牲的な精神が忘れられていたんですね。今の時代にも忘れてはいけない精神だと思います。

  • 最初に読んだのは、高校生の時。二回目は大学卒業してから。そして今回が3回目。ラストが衝撃的なので、それまでの所は3回目なのに、殆ど覚えていなかった。しかし、ラストに向けての色々なエピソードにも、三浦さんのメッセージが込められているのだなと思った。そもそもこの小説は、当初日本基督教団の発行物に掲載されていた。三浦さん自身、まだキリスト教を知らない人に向けてということもあったかもしれないが、全国のクリスチャンへの問題定義もあったのかもしれないと思う。特に、中村春雨の小説を巡る永野家のやりとりでそれを強く感じた。妹待子の罪を犯した牧師に対する純粋な嫌悪感は、クリスチャンが陥りやすいものであると感じた。牧師たるもの、クリスチャンであるもの、聖であるはずという、福音の取り違いである。それはともすれば、自分たちが、クリスチャンでない人たちよりも聖い存在であると思っているように感じられてしまうものである。「義人なし。一人もなし。」聖書はこう説いており、全ての者は弱く惨めな罪人であるのだ。母菊の諭しは、三浦さんの思いそのものであるのではないかと思った。
    何れにせよ、三浦さんの聖書にしっかりと根付いた福音の深い理解が、至る所に散りばめられた作品であるなと感じた。

  • 中学生時代に国語教諭に薦められて読み、ラストでは涙した。
    それ以来、「もし、自分が信夫の立場だったら同じことができたか?」という問いが自分自身に発せられるようになった。しかし、自分は同じことはできないという結論に毎回達する。
    それほど信夫の自己犠牲は高潔であり、尊いものだと思う。
    あの時、信夫が躊躇無く行動できたのは、常日頃から他人を思いやるという信念を持っていたからこそ決断に迷いが生じなかったのだと思う。自己利益の追求のみがクールともてはやされる昨今、このような包摂的な考え方が今一度見直されてもよいのではないだろうかと感ずる。

  • 泣ける小説と言われて読んだのですが、私からするとそんな軽い一言では片付けることのできないとても衝撃的な作品でした。

    この物語の主体は素晴らしい青年の死に涙することよりも、彼の生きる事死ぬ事に対して素直すぎるくらい真っ正面から考えぬいた生き方にあると思います。

    今までこれほど真っ直ぐで純粋な心をもった主人公を見たことがありません。そしてその姿にひどく心うたれました。

    自分がどう生きるべきか、見つめ直さずにはいられない一冊でしょう。

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著者プロフィール

1922年4月、北海道旭川市生まれ。1959年、三浦光世と結婚。1964年、朝日新聞の1000万円懸賞小説に『氷点』で入選し作家活動に入る。その後も『塩狩峠』『道ありき』『泥流地帯』『母』『銃口』など数多くの小説、エッセイ等を発表した。1998年、旭川市に三浦綾子記念文学館が開館。1999年10月、逝去。

「2023年 『横書き・総ルビ 氷点(下)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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