塩狩峠 (新潮文庫)

著者 :
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  • Amazon.co.jp ・本 (464ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101162010

感想・レビュー・書評

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  • 作品を読み終えて、あとがきをみて驚いた。本当にあった話だったなんて!人間の死とは本当にあっというまに突然起こることだつくづく思った。

    とても面白かった。その理由は大きく分けて三つある。

    一つは、信夫とふじ子の恋模様が新鮮でいいから。病気になっても明るいふじ子は、女性としての強さを感じた。また、もらった花に喜んだり、部屋にトンボが入ってきて嬉しがる姿が無邪気でとても可愛いと思った。

    二つは、今まで学んできた武士道とキリスト教の考え方を、内容をおいながら答え合わせできている感じがして面白かったから。信夫の父である貞行は本当に「武士」みたいな人。どんな人でも対等にみるし、一回かわした約束は必ず守ろうとするし。

    三つは、人間性の高い登場人物が多く、読んでいて真似したくなるような考え方が多いから。貞行は武士道に通じているし、ふじ子は障害があるからこそ自覚的に生きられるという自負をもっているし。

    古い作品なので、読む前は難しいのかと思ったけど、とても読みやすかった。読んで良かった。
    もし北海道に行くことがあったら、塩狩峠にあるお墓に手をあわせたい。

  • たしか……小学生の頃に、親の本棚から借りて読んだ。
    泣きそうになった。
    果たして今の私が再読しても、心を揺り動かされるのだろうか……。

  • 佐藤優氏の何らかの著作で読んだ、氏が高校生の頃に本作に感銘を受けて塩狩峠を訪れたというエピソードが印象に残っており、店頭で本書が新潮社の夏のフェア対象作品として取り上げられていたことを機会に、手に取りました。

    最も特徴的な要素としては、著者のキリスト教信者としての深い信仰心が根本にあると感じます。主人公・永野信夫のモデルである事件の犠牲者の長野政雄氏も同じくクリスチャンであり、本作を物語るモチベーションの源泉はそこに根差しています。明治時代を舞台にして幼児の東京における信夫の生活にはじまる物語は、彼の生い立ちと成長を辿りながら、「ヤソ」と忌み嫌う祖母や当時の世間の反発にも影響されて、両親や知人が信じるキリスト教に対して当初は抵抗を感じながら、信者たちの真摯な姿や聖書の内容から次第に信夫が心惹かれてゆくさまが描かれます。塩狩峠における事件を基にした有名なクライマックス部分の展開は全体としてはわずかな分量ですが、基本的にはこの終点を引き立たせるために登場人物とそれぞれのエピソードが配されています。

    作風としては、感動を引き出すためのご都合主義的な感も否めないストーリー展開と全体的に線の細い人物描写は、昭和の女性作家としては珍しくないセンチメンタルな情緒性を感じます。個人的には過去のベストセラー作品として読みました。

    ちなみに、あとがきで著者も明かす通り、実際の事件の真相については諸説あったようです。

  • 佐藤優の読解力の本で、題材となっていたので読む。

    主人公信夫の幼年期、青年期の精神的な苦悩に少し共感。「自分は他の人と比べて真っ当に暮らしているはず」という潜在意識が、人に優劣をつける考え方をもたらして、相手の立場を慮る利他的な人になるのを妨げている。キリスト教入信後に信夫はこのような悩みを解決し、他の人にも影響を与えるような人格者となる。

    人の思考、行動を許容し理解する読解力は、キリスト教においても必要な力であるように思われた。読解力の向上は、利他的な行動をも促進するのか

  • 中3のときに一度読んで、大1でまた読み返した。2回とも、思わず涙がぼろぼろと。
    何が起きるかは予め知っているのに、それでも心を掴まれるのは、筆者の優れた筆致によるものだと思う。

    永野伸夫さんは、長野正雄さんというモデルがいたことは知っていたが、三浦綾子さんのプロフィールを読んで、三浦綾子さんご自身が一部ふじ子さんのモデルとなっていたことに気がついた。

    キリスト教のことは少しわかるけれど、自己犠牲の精神は、是非の判断がつきかねる。聖書に則った生き方をするために、神様を優先して、身近な家族を悲しませることはどうなんだろう。永野さんの転勤と死はふじ子さんを苦しめたし、母の菊の家出も幼い永野少年を苦しませたし……

    でも、エセではなく本当に神様を信じている方って、びっくりするくらい心が綺麗で、人格が素晴らしいのも事実だと思い出した。私の中高でお世話になった先生方とか。

    私はキリスト教を知っているけれど、洗礼を受けるところまでは多分行かないと思う。それでも、キリスト教のことを考えたり、心を正したいときには、またこの本を読みたい。

  • 父よ、彼らを許したまえ、そのなす所を知らざればなり
    汝の敵を愛せよ

    少しでも近づきたい姿 感動します。
    いつも明るく、周りに感謝して生きたいです。

  • キリスト教が忌み嫌われていた時代。
    士族の家に生まれた美しい青年ーー永野信夫は人間の罪深さについて悩み、考えながら生きていた。
    やがてその問いの答えをキリスト教の教えに見出し、感銘を受ける。
    仕事も私生活も順風満帆で、結婚を控えたある時、彼は列車事故に遭う。彼は自らの命を犠牲にして多くの乗客を救った。

    驚くことにこれは事実を元にした小説だそう。実際にそんな人がいたという事実に驚いた。
    自分の尊い命を投げ打ってまで人々を助けた利他の心は、自分が損をしたくないという当たり前の価値観を覆される。

  • 本当にあったお話ということにまず驚く。
    永野信夫という人の一生涯を通して、
    人を信じるとはどういうことなのか…
    信仰を持つということの尊さ、など
    色々考えさせられた。

    私は特に信仰を持つわけではないけれど、
    この時代にあって、
    キリスト教を信じるということの困難さが
    浮き彫りとなり、だからこそ、母、菊や
    信夫やふじ子のような
    厚い信仰心となるのだろうか。

    それでもラストは切ない。
    信仰を持つ人全てが果たして
    自らを犠牲に多くの人の命を救うという行動に
    出られるのか、
    それもようやく、待ちに待った愛する人との
    人生の第一歩を歩む日に、
    躊躇なく飛び込めるのか、

    三浦綾子、すごいな。
    氷点に続いての完読…
    決してお手軽ではないこの小説、
    大切なことが凝縮して込められていると思う。

  • 母から勧められた一冊。
    キリスト教を信仰することでこんなにも人生が変わることもあるんだと驚いた。
    実際の出来事がもとになったと知りさらに感動した。

  • ブクログのおすすめ(泣ける小説)にあったので、
    読んでみましたー。
    「自らの命を犠牲にして大勢の乗客の
    命を救った一青年の…」って本の裏に解説してあったから、
    事故に関する小説かと思ってたら、
    キリスト教について、もんもんと考える小説だった。

    解説で泣ける部分を知ってしまったためか、
    泣けなかった…。
    泣きたかったけど、泣けなかった…。
    ってか、この話、実話ベースなんだね!!
    それに驚きましたー!!

    話の内容としては、舞台は明治。
    主人公は祖母に育てられていたが、祖母亡き後、
    死んだと思っていた、母が実は生きていた。
    しかもキリスト教(ヤソ)。
    最初はキリスト教に反感を覚えているが、年月が経ち、
    自信もキリスト教を教えとする。

    主人公が生きることや、死ぬことについて考えており、
    一緒に考えることのできる本だなーって思ったよ。

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著者プロフィール

1922年4月、北海道旭川市生まれ。1959年、三浦光世と結婚。1964年、朝日新聞の1000万円懸賞小説に『氷点』で入選し作家活動に入る。その後も『塩狩峠』『道ありき』『泥流地帯』『母』『銃口』など数多くの小説、エッセイ等を発表した。1998年、旭川市に三浦綾子記念文学館が開館。1999年10月、逝去。

「2023年 『横書き・総ルビ 氷点(下)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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