言語小説集 (新潮文庫)

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  • 新潮社
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感想 : 21
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101168340

感想・レビュー・書評

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  • 井上ひさしらしい言葉をいじった(?)短編集。個人的には「言語生涯」が面白かった。文庫版にあたり、4編追加。筒井康隆の解説も嬉しい。

  • 日本語を使ってやりたい放題に遊びすぎで、


    これは・・・

    おもしろい!!!
    『括弧の恋』
    書店でぱらっと開くとこれが出てくるので、「!!!???」となって買う人がほとんどなのでは・・・。
    『言い損い』
    好きです。キューンとなるやつ。
    『見るな』
    これはしてやったりという感じで、気持ちがいい。
    『決戦ホンダ書店』
    有名な小説やら映画やらがいくつも出てきて楽しい。
    『大惨事人体大戦』
    内容が酷すぎる(批判ではありません!)。男子中高生が大喜びしそうな酷さ。

    文庫版よりも単行本の方が登録数が多いので、リンク↓
    http://booklog.jp/item/1/4103023333

  • 「言葉の魔術師」の本領発揮の短編集。

    『括弧の恋』、ワープロの "」" さんが "「" さんと恋に落ちて、威張った"◉"とか"■"に邪魔されながらも"!"や"×"に助けられながら思いを遂げる話、そこらのラブストーリー(もちろん主演は人間の。)より切なくて泣ける。

    一番好きなのは、流行りのビデオと古臭い本が戦う『決戦ホンダ書店』。愉快な中に書店さんの悲哀も感じる一編。

    ミステリィな筋立ての『見るな』、ドラマチックな『親銭小銭』などなど、多彩でお得な一冊でした。

  • 2015.3.9 車校にて
    テンポよく読めて楽しい。あまり深く考えずに読んだ。方言すご。著者のことばや言語に対するアンテナの広さを感じた。広くないと、こんなの絶対書けない。私のパソコンは、「 さんと 」さんが一緒に出てきてくれないので、辞書登録して一緒に出るようにしようかな(笑)

  • 最後の「質草」はいい。歌舞伎になる。「芝浜」や「文七元結」みたいな世話の新作にできるんじゃなかろうか。落語にするのもいいかも。

  • 冒頭の「括弧の恋」や「耳鳴り」なんかは、なんとなく筒井康隆のような…シュールな作品。
    (そういうご縁でか、解説は筒井康隆が書いている。)

    そうかと思うと、マレー語が残っている集落の話である「見るな」とか、老方言学者が五十年ぶりにかつての憲兵に復讐する「五十年ぶり」など、ドラマティックなものもある。
    最後の「質草」は、「手鎖心中」を思い起こさせる。

    井上ひさしの、いろんな側面、いろんな作風が見られて楽しい一冊だった。

  • ワープロの上で暴れ始める記号たち、ある日突然舌がもつれて落魄する元青年駅員、古書店で繰り広げられる小説と映画の仁義なき戦い…。
    本書は言葉にまつわる、そんな奇想天外な物語を集めた短編集。
    実は恥ずかしい話、井上ひさしの小説を読んだのは今回が初めてで、代表作のひとつで読売文学賞を受賞した「吉里吉里人」も、直木賞受賞作の「手鎖心中」も未読。
    いつか読みたいと思いつつ、まず取っつきやすい短編集から手に取った次第。
    全部で11編収められており、どの作品も巧みな構成と描写、それにどこか黒いものを感じさせるユーモアで、小説を読む醍醐味を存分に味わわせてくれます。
    私は「極刑」が最も気に入りました。
    劇団に所属する男二人(主人公の「私」と座付作者で演出家の北条)と女一人(加代)の三角関係を描いた作品です。
    ここからはちょっとネタバレなので、これから読もうという方はご注意いただきたいですが、タイトルの「極刑」は北条が脚本を書いた演劇作品のこと。
    北条はヒロインに加代を抜擢しますが、加代は北条を裏切った女。
    そこで北条は脚本で、加代のセリフをまったく日本語の意味をなさないセリフばかりにして、ついに加代を体調不良、降板に追い込んで復讐を果たします。
    その意図が最後に明らかになって戦慄しました。
    いや、それも驚きましたが、それより何より言語について深く考えさせられました。
    私たちは、意味をなさない言葉の連なりに多大なストレスを覚えるようです。
    「どの台詞も意味をなしていないから、彼女は頭の中に意味の骨組をつくることができなかった。意味の骨組がないかぎり台詞をからだに滲み込ませることは不可能である。加代は腸をこわした。」
    いや、抜き差しならない作品ですよ、これは。
    あと、読んでいて何度か既視感を覚えました。
    私が大ファンの筒井康隆さんとユーモアの感覚が似ているのですね。
    解説はその筒井さん。
    なんと贅沢な本でしょう。

  • 80年代の雰囲気が残る、懐かしさを感じる作品集。解説を書いている筒井康隆の作品を感じさせる短編もあります。

  • 大きくグループ分けして、
    言葉を話す物や概念(要は擬人化)の話と、
    文法や方言、いい間違いといった言語そのものを題材にした話を集めた短編集。

    下ネタが多々見られるので
    万人受けはし難いかもしれないが、
    擬人化のほうは可愛らしくて面白い。
    「決戦ホンダ書店」は書籍&ビデオ版
    トイストーリーのよう。

    言語そのものを題材にした話は
    重くて恐ろしいのが多い。
    作者の原体験がベースなのかと勘ぐってしまう。

    皮肉の利かせ方や発想は
    筒井康隆の短編集に良く似ていたな、
    という印象。

  • 前にハードカバーを図書館で借りて読んだけれど、短編小説7篇に単行本未収録の4篇が新たに入ったのでつい購入。解説は筒井康隆。
    文体やネタには井上ひさしらしい偏向があるものの、おもしろく読ませるという意味では名人芸。

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著者プロフィール

(いのうえ・ひさし)
一九三四年山形県東置賜郡小松町(現・川西町)に生まれる。一九六四年、NHKの連続人形劇『ひょっこりひょうたん島』の台本を執筆(共作)。六九年、劇団テアトル・エコーに書き下ろした『日本人のへそ』で演劇界デビュー。翌七〇年、長編書き下ろし『ブンとフン』で小説家デビュー。以後、芝居と小説の両輪で数々の傑作を生み出した。小説に『手鎖心中』、『吉里吉里人』、主な戯曲に『藪原検校』、『化粧』、『頭痛肩こり樋口一葉』、『父と暮せば』、『ムサシ』、〈東京裁判三部作〉(『夢の裂け目』、『夢の泪』、『夢の痴』)など。二〇一〇年四月九日、七五歳で死去。

「2023年 『芝居の面白さ、教えます 日本編』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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