花埋み (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (576ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101176017

感想・レビュー・書評

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  • 主人公が置かれている状況って、今の中東諸国の女性たちに似ているのではないだろうか。女性だというだけで、学問も職業も発言も制限された時代。今のようにどんな職業でも女性が挑戦できるようになるためには、彼女のような人が正面から困難と向き合ってくれたからこそなんだとわかった。
    それにしても好寿院で学んでいるときの男子学生の嫌がらせといったら、本当に低俗であきれてしまう。人としてどうなの?って思ってしまう。まあ、時代背景もあるとはいえ、ひどすぎる!
    どこかのレビューにも書いてあったけど、無駄のない文章で読みやすく引き込まれた。吟子が最後に13歳年下の志方と結婚し、北海道で生涯を終えたことには賛否あるようだけど吟子が自分で選んだ道なのだからいいんじゃない?と私は思います。

  • B913.6-ワタ
    300720307

     本書は日本で政府公許の女医第一号である、荻野吟子の生涯を描いた長編小説である。荻野吟子は明治初期、夫から移された業病(淋疾)を異性に診察される屈辱に耐えかね、自ら医師の資格を得ることを決意した。女性が医師になることはもちろん、学問をすることさえ許されていなかった時代である。世間のさまざまな偏見や障害を乗り越え、凄まじいほどの執念で目的を達するその姿には驚くばかりである。渡辺氏が本書を執筆にするに至った動機は分からないが、女性だから故に味わう苦悩の描写は、小説家であればこそできることなのであろうか。実際は小説を上回るものだったかも知れない。
     私が本書を読んだのは、おそらく30年以上前のことである。今回久しぶりに読み返したが、一気に読んでしまった。時代の先駆者はいつの時代でも大変なことではあるが、特にこの時代はそうだったかも知れない。女子学生はもちろん、男子学生にも読んで頂きたい一冊である。

  • 明治時代にこんな酷い男尊女卑があったなんて。

    吟子は辛い目にあっても気を強く持って執念を持ち続けてお医者さんになる。頭がさがる。
    医者になるまで頑張り過ぎて、なってしまったあとはなんとなく 張り続けていた気持ちが切れてしまったような気ががする。再婚相手も吟子に釣り合わなかったのではないか。

  • 日本初の女医、荻野吟子の物語。
    今でさえ、女性の社会進出が声高に言われるが、社会的な男女差がある現状。明治初期、女性が家を出るなんて考えられないような時代に女医を目指した吟子の意志、努力、その強さにただただ感心する。
    他人に頼らず、自分の意思を貫き通し女医となった吟子だが、後年になって好きになった相手との結婚。周囲にも反対され、結婚後は大変な苦労をする。
    孤独の中で社会的地位を高めること、愛を手に入れ愛する人と苦労を共にすること、果たしてどちらが幸せなのだろうか?どちらが吟子にとっての幸せだったのだろうか?

    社会で働く女性として、吟子の強さに励まされると共に、様々なことを考えされられる一冊であった。

  • 日本初の公式女医の生涯。苦労して医者になって開業が人生のピークだったのかな。本人にとっての幸せとは何かわからないけれど晩年が寂しい印象。

  • ホリエモンイチオシ

  • 彼女のことを知ったのは、出張中の空き時間にふとお散歩した雑司ヶ谷霊園で彼女のお墓に遭遇してから。

    『日本で初めて女医になった人』手を合わせながら。まだまだ女性への理解も少ない中で、どんなキッカケでその道を切り拓いた方なのかずっと興味がありました。

    この本を知ったのは、ラジオでの紹介から。失楽園で有名な渡辺先生が彼女の小説を書いていたという意外さ。同じ医師としてどう彼女を描くのかがとても気になっていました。
    決して明るい理由からではない、医師を目指すきっかけから始まる前半。女性として愛を貫いた後半に少しホッとした感情を覚えました。

  • 久しぶりに本を置く手をためらったくらい面白かった。北海道の物語を探しているうちに出会った一冊。日本初の女医としての様々な苦労と、それに立ち向かう勇気に背筋が伸びる思いがした。
     いろいろな分野でこうした女性たちが活躍してきて今日の自分たちがあるが、未だに女性の活躍をと言われる現状にはなんだかうんざりするものもある。
     後半、北海道開拓に臨む部分からはそれまでのキャリアを惜しむ声も多くあるだろうが、様々な人々が今の北海道を作ってきてくれたことに感謝。良い本に巡り合った。なんとなく敬遠していた渡辺淳一だが、興味深かった。

  • わたしにとって(ん、わたしだけじゃなく、
    老若男女問わず誰もが憧れる)、
    かっこいい男性代表のオススメの一冊とあって、
    先日の男性限定の手作りお味噌ワークショップでも、
    ご紹介させていただきました。

    日本で最初の女医と言われる、
    荻野吟子の生涯をつづった力作。
    男尊女卑がはなはだしかった明治初期、
    努力につぐ努力を重ねて、世間の冷たい視線を一掃した
    むっちゃかっこいい女性。

    元夫に淋病を移され、その治療が恥多きものであったと、
    それが医師を志す動機だったというが、
    そのメンタルの屈強さ、わたしが同じ苦しみを味わう女性を救うのだという使命感がすごい。

    淡々と筆を進めていく書き方が、
    北の大地の寒々しい気候と合っていて良いです。
    (物語の半分は、北海道が舞台。)
    「失楽園」と同じ筆者??とすら思います。

    医者としても思想家としても、確かな地位を築きながら、
    恋愛(愛?)に走った、後半の人生。
    キャリアか愛か。
    本人が満たされていれば、それで良いのですが、
    東京に残ってキャリアを積んでいたら、
    現代における女性のポジションもちょっと違ったかな、
    どうかな。

    そんなわけで、男性も社会の荒波に揉まれまくって
    大変かとは思いますが、もし機会があれば
    これをお読みいただき、働く女性や奥さまに優しくして
    あげてくださいね。職場や家庭の空気が変わりますよ。


    (株)北未来技研 
    代表取締役社長 安江哲さんよりご紹介いただきました。


    安江さん!
    頑張りたいわたしに、素晴らしい小説のご紹介を
    ありがとうございました^^
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    《THE DAYの実穂ちゃんとの打ち合わせトーク》
    ※実穂ちゃんは、北星女子高校の後輩。

    実穂:「あの高校は
    『オンナだからやめておきなさい』がそこになくって、
    ジャンジャンバリバリやらせてくれるんですよね。
    だから、社会に出て企画が通らなかったりすると
    『ああ、男に生まれてたら違ってたんだろうな』って
    悔しい思いをすることもありました。


    亜美:「わかる!自分が男に生まれていたら、
    人生違っていたよなと、仕事関係で悔しい思いをするたびに20代の頃は考えてたよ。今もだけど(笑)
    あの学校は、自分で考えさせて、行動させてくれて、
    でも責任も持ちなさいよっていう校風だもんね。」


    実穂:「頑張りたいと思ったら、先生たちも
    とことん付き添ってくれますもんね。」


    読書&打ち合わせトークが、
    時代こそまたがってますが
    ジェンダーの壁にぶつかる女性についてで、
    でも、時代が変わったら、
    ちょっとはマシになってるのが光ですね。


    実穂ちゃんと、理代さんと佐藤の頑張りたい女性3人の
    打ち合わせトーク、けっこうおもしろいですよ。ふふ。

  • 日本初の女医のおはなし。努力に努力を重ねる姿は尊敬にも値したが・・・若い男に振り回される人生後半が非常に残念で勿体ないと感じてしまった。最後まで崇高に生き抜いて欲しかったがそう思いとおりにはいかないなぁ~。と感じた一冊。

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著者プロフィール

1933年北海道生まれ。札幌医科大学卒。1970年『光と影』で直木賞。80年『遠き落日』『長崎ロシア遊女館』で吉川英治文学賞受賞。2003年には菊池寛賞を受賞。著書は『失楽園』『鈍感力』など多数。2014年没。

「2021年 『いのちを守る 医療時代小説傑作選』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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