- Amazon.co.jp ・本 (404ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101183411
感想・レビュー・書評
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一部で"神アプリ"と言われているYahoo!路線検索の責任者からプレゼントされた本。日本の鉄道の"定刻運転"はまさに神レベルらしい。なぜそうなったのか?それを考察するのがこの本である。
本書ではまず日本の鉄道の定刻運転がどの程度精巧なものなのかを解説する。曰く「もし定刻運転のオリンピックがあったら日本は万年金メダル」とのこと(笑)。すごいレベルだ。
続いて、核心である「なぜ?」に迫る。ザクッと書くと、歴史・文化的背景と、近代日本の急激な都市化に要因があるらしい。歴史・文化的には、まず参勤交代の正確な運行があるらしい。かつ江戸期の日本は寺の半鐘が数十分ごとに時報をする"時鐘"の制度が確立されていてどの階層でも時間感覚に鋭く、ペリーは「日本は時鐘がうるさい」と回想しているほどだったそうだ。
もう一つの要因は、文明開化、富国強兵といった開国後の日本政府の方針により鉄道もどんどん延長されて行き、かつ東京や大阪など大都市圏への人口の集中が増し都市機能が集約化されるに至って鉄道網の精密化と正確さが増した、あるいは、人の移動を司る鉄道が正確さを増したが故に都市の集積化、大規模化も可能になったという相関性があるらしい。なるほど、深い。
本書はその後、その定刻運転の具体的技術の解説に没頭していくが、さすがに私は読み飛ばしてしまった。。そして、最終章は、日本の鉄道の未来。結局、技術というのはその時代、時代の要請に応えるものであり、完璧とも言える定刻運転の技術は都市化の増大と日本人に画一さやせっかちさをもたらした。そういった生活のリズムや価値観が今後、社会の成熟化に伴い、"個別化"や"ゆとり"の方にシフトしていくと、自ずと鉄道の技術もそちらの方にシフトしていくだろう、ということを最後に予測している。その兆候はまだ見られない気もするが、これからは十分に考え得ることのような気もする。
何れにしても、部下がプレゼントしてくれなければ、絶対に読まなかったような本。こういうセレンディピティーは嬉しいものだ。電車のに乗っだ時の目も変わること間違いなし。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
国民性なんて短絡的な言葉ではなく、調べあげた感がいい。
江戸時代に既にダイアグラムがあったとは驚き。 -
定刻発車の日本の鉄道の理由、仕組みを説いたもの。江戸時代の参勤交代にダイヤの発想があったこと、新宿や東京駅を始発ターミナルから通過駅にすることで停滞を解消、メンテナンスの重要性、といった事が印象に残った。2015.1.15
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けっこう読むのに時間がかかった。。途中で読むのが疲れちゃった・・・かな?
随所で「へぇ」ポイントはあったものの、基本は「日本人きっちり」「みんなの協力のもと定刻が維持されてるんだよ」ということを中心にして、話が展開されていく。取材を元にしたレポートもあるが、結構筆者の想像である部分も多い。同じようなことを行っている部分も何箇所かあったような気がするので、もうちょっと本薄くできたんじゃない?とも思ったりする。 -
図書館で借りました。
この本が書かれた後に福知山線の事故があったのかなあ?
鉄道の安全神話が壊れた瞬間でしたね。あの事故は。
それにしても欧米と日本では背景と利用目的が違うのだから当然運用方法も違ってくるということは良くわかりました。鉄道は日本人にとって定刻に走って当たり前、と言う存在なんですね。
今は検索エンジンで簡単に乗り換えも調べられますので便利になった反面、電車の遅れにはさらに厳しい目が向けられている気がします。 -
日本の鉄道の定時運行率は世界的に見て特異。欧州でも15分未満の遅延は遅れにカウントしないというが,日本は1分1秒違わぬ運行を目指すのが当然とされている。その背景・経緯をいろいろ考察してある。
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1.日本の鉄道は1分遅れただけでなぜ謝るんだろう。2.スジ屋の仕事を詳しく知りたい。そんな動機から適当に検索して出会った本です。本書はどちらかというと「1」の方を掘り下げたもの。
まず、データとして本書の内容を引用しますと。
・JR東日本の1列車あたりの遅れは、平均してわずか0.3分。
・JR東日本の定時運航率は新幹線で96.2%、在来線で90.3%、欧米の定時運航率は約9割。ただし、日本では「1分」の遅れから「遅れ」とみなされますが、欧米などでは「10分」「15分」からが「遅れ」とみなされます。
本書序盤は、日本の鉄動の正確さの起源を考察していて、それは江戸時代やそれ以前までさかのぼっての「国民性」ではないかという論を展開します。正直、ここの部分は、資料が少ないせいもあるのでしょうが、検証よりも推論が多く見られ、それなりに納得できるんだけど釈然としないものも残りました。まぁ、著者の考えであると割り切れば良いのかもしれませんが。
その後、明治維新後の鉄道の始まりから戦後に渡って、日本の鉄動がどのように「正確さ」を獲得してきたかが書かれます。そこには、正確であるべきと言う漠然としたものが、あるひとりをキッカケにシステム化されていくさまが描かれていて、なかなかに刺激的です。
その結果。昭和40年代の「お召し列車」の運転手が「東京-名古屋-京都-新大阪の運転で、停車位置1cm、時間は5秒以内の誤差しか許されていなかった」ことが証言され、「ただ、特別な事情が無ければ誰でもこの範囲で運転する」と信じがたいことを語っています。今から40年前でそうだったのです。
後半は、実際に「定刻発車」をするために、どのような工夫と努力がなされているのかに割かれています。このあたり、実際の我々の日常ともリンクします。そして、21世紀を迎えて検討されている「新しい鉄道ダイヤの仕組み」にも言及され、それは今の定時運転とは全く別の概念なのですが、なるほど「必要な時、必要なところへ、必要なだけの鉄道を」とでも言いますか、鉄道の「オンデマンド」を感じる側面がありました。
私的に、前半の推論の多さが気になったので☆は3つですが、総じて「鉄」の方なら興味深く読めるでしょうし、そうでない方でも、日本の鉄道の正確性になんらかの疑問なり興味なりを持っていれば、面白く読めるのではないでしょうか。
※読んだのはハードカバーでしたが、文庫版でレビューです。 -
電車が定刻通りに発着することは、日本以外では考えられないことだというのは、聞き知っていたが、それが凄まじいまでの執念により達成されていることが分かった。
ありがたいことです。 -
2010年11月12日読了。
前半の、「定刻発車が日本にどのようにして根付いたか」っていうテーマが面白かった。時刻システムや都市間の距離関係が重要なファクターだったんだなあ。 -
電車が2~3分遅れるだけで腹を立てる日本人。
なぜ私たちは“定刻発車”にこだわるのか。
その謎を追うと、江戸の参勤交代や時の鐘が「正確なダイヤ」と
深く関わり、大正期の優れた作業マニュアル、鉄道マンによる
驚異の運転技術やメンテナンス、さらに危機回避の運行システム
などが定時運転を支えていた!
「なんで時間通りに電車が来ないんだ!?」ということを
私は海外に行くたびに感じます。
ではなぜ日本の電車は時間通りに運行しているのでしょうか?
その答えがこの本にあります。
江戸時代にはすでに一刻ごとに鐘が鳴り、人々はそれに合わせて
生活していました。
つまり「時」の感覚が根付いていたのです。
このことが、電車の定刻発車システムをよりスムーズに浸透させた
理由だそうです。
たった一本の電車を動かすのに必要な人員は
車掌、運転手、司令塔の人、安全確認の人、
電車を作った人、その電車を動かすシステムを作った人
…数え切れないほどたくさんの人がいます。
そんな当たり前のことを今更ながら再認識させてくれる一冊です。
たくさんの影武者に支えられて、今日も電車は定刻通りに走って
いきます。
筆者によると、将来的には電車にはハンドルがつき
(これによって線路に置かれた障害物が避けれる)、
オンデマンドで運行する(携帯でX時X分発の電車を予約し、
それが満席なら需要に合わせて増発するシステム)
時代がくるかもしれないそうです。
「そんなことできるわけない!」と思いますが、
紙が電子化されている現代では、案外起こりうることかも
しれません。