本屋さんのダイアナ (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
4.23
  • (601)
  • (605)
  • (212)
  • (25)
  • (3)
本棚登録 : 6634
感想 : 528
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101202426

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • とても好きな一冊です。

    ティアラはかっこよくて逞しい。うちの娘ならハンパなことはしてほしくないという台詞にティアラの筋の通った強さが出ていて、グッときました。

    地頭がいい人に憧れを持っていましたが、物事についてたくさん考える人が結果そうなるのかなと思いました。

    この物語の好きなところは、深く通じ合えた人との繋がりの強さと色々な家庭環境での親子の愛情がそれぞれちゃんと見えるところです。

    色々な本がたくさん出てくるので、それも興味深いです。祖母にもらった若草物語、読み直してみようと思います。

  • 『 私の名は、大穴(ダイアナ)。おかしな名前も、キャバクラ勤めの母が染めた金髪も、はしばみ色の瞳も大嫌い。けれど、小学三年生で出会った彩子がそのすべてを褒めてくれた――。
    正反対の二人だったが、共通点は本が大好きなこと。地元の公立と名門私立、中学で離れても 心はひとつと信じていたのに、思いがけない別れ道が……。
    少女から大人に変わる十余年を描く、最強のガール・ミーツ・ガール小説。』新潮社

    『最強のガール・ミーツ・ガール小説』
    なんてわくわくする文字列なんだろう。最強で、ガールとガールがミーツするのだ。柚木麻子さんの伝家の宝刀、女の子たちの連帯の物語でもある『本屋さんのダイアナ』。
    これはダイアナと彩子の女の子たちの物語でもあり、ダイアナのお母さんであるティアラと彩子のお母さんである貴子の話でもある。これを読んでいて、本当に世の中には女の子たちを分断するための仕組みがたくさんあるのだと感じた。主にそれは男性によって作られた仕組みであり、それに女の子や女性は翻弄されて本来であればつなげるはずの手を引き剥がされる。また女性たちでの連帯を妨げられることのほかにも、女の子は、女性は、母親はこうでなければならないというメッセージで呪いをかける。作中ではダイアナと彩子がだんだんとその呪いや分断に巻き込まれて、もがきながらも自らの呪いを解呪するために奔走する。
    物語の最後のほうにダイアナはとある人物と会うのだけど、物語の最初のほうから散りばめられた欠片がすべて合わさって成型されてひとつのものになっていくのがあまりにも鮮やかで、物語でダイアナの生き様を追ってきた私は泣いてしまった。ぼろぼろと目からあふれて止まらなかった。ちゃんとダイアナと彩子もまた手をつなぎ直す。
    柚木麻子さんの作品は女の子たちや女性が手を取りあって、世間のままならなさに立ち向かう。現実の社会で実際に女性たちが苦しんでいるものと、そのまま同じことで苦しんでいる女性がたくさん出てくる。柚木麻子さんの描く女の子は本当に魅力的で素敵な女の子たちなんだけど、その子たちが苦しんでいる姿を見るのがつらくなる。作品に反射したいまの社会があまりにも女性たちへ優しくなさすぎてしんどい気持ちになる。
    なんでこんなに呪われて絆を結ばせないような作りになっているんだと腹立たしくなる。そして何くそこのやろー!と思う。女の子たちが自らに呪いをかけて、女性たちが分断されて都合のいいやつらの思い通りになってやるのものかと奮起する。
    いま繋いでいる女の子たちとの手を握り直したくなるのだ。

  • 作中に出てくる赤毛のアン。読んだことがないので、一度でも読んでいたらより楽しめたのだろうと思う。ティアラさんが1番好きでした。

  • 可愛らしい装丁と表題に騙されて、軽い気持ちで読み始めたけれど、実際にはかなりずっしりした大人向けの内容だった。
    特に後半、高校生活の終わりを描くあたりから、ダイアナと彩子の置かれた状況が、かなりベビーになってくる。
    自分が持ち得ないものに対する純粋な憧れは、いつしかコンプレックスに変わり、自分を偽ろうとして傷ついてしまう…
    そんな、大人になろうとする誰もが経験するだろう自分への「呪い」が、2人の目線を通して描かれていた。大人になりきっていない私は、読みながら心がチクチクさせていた。きっと誰もがどちらかに少しでも思い当たる部分があるのではと思う。

    しかし最後は、大団円ではないけれど、2人とも「呪い」を自分で解いて、キラキラした大人になっていく予感があるラストでよかった。

    この作品は、赤毛のアンをはじめとして、実在の児童文学がたくさん引用されている。
    私は幼い頃は読書好きではなかったので、特に海外の児童文学はしっかり読んだことがない。子ども時代から文学に親しんでいる2人を見ていると、羨ましくなった。
    まずは赤毛のアンシリーズ、読んでみよう。

  • 正反対の性格、生活環境の2人が、お互いをお互いのことを尊敬して羨ましく思っている所が印象的でした。完全なるハッピーエンドでは無いところが、より現実味を感じられて、すごく良い小説でした·͜·

  • 性格も育ちも全く違う二人の少女が、色々な人と関わりながら、壁にぶつかりながら、変化をとげていく物語。
    色々な出来事に直面する中での、登場人物の内面のリアルな描写にひきこまれました。
    ダイアナが、大事な場面で自分の言葉で自分を表現することに少しずつ挑戦し、それが認められていくところが、好きでした。

  • 小学生の頃に憧れた親友像がここにありました。
    武田君とはその後どうなるのか、ティアラの家庭環境はどんなものだったのか、気になる所もあるけれど読み応えのある作品でした。
    綾子が勘違いしたことはちゃんと謝ってほしいなぁ。
    おばあさんになるまで追ってみたい2人でした。

  • 自分と異なる環境や個性を持っている周りの子を羨ましく思うところとか、自分じゃない何かになりたい気持ちとか、成長の過程でみんなが感じる悩みを細かく描いていて、共感しっぱなしだった。

    2人の女の子のように、文学作品の中に出てくるヒロインや作家さんに憧れるのすごく分かる。

    個人的にはティアラの性格がすごく好きで、自分の足でしっかり立って生きているのがかっこよかった。

    「自分の呪いは自分でしか解けない」っていう言葉がすごく好き。みんなそれぞれ呪いを持っていて、それを解く勇気を出せるかどうかで、人生は簡単に変えていけるんだと思う。

    そんな勇気を出せるようになるために、2人の女の子のようにたくさんの本を読んでいきたいな

  • キャバクラ勤めの母親に育てられた矢島ダイアナは、本だけが友達であった。小学校で本好きから仲良くなった彩子は、ダイアナとは全く違う境遇で育つ。中学で公立に進んだダイアナと、市立のお嬢様学校に進んだ彩子。知り合ったきっかけであった本『秘密の森のダイアナ』シリーズを軸にはそれぞれの人生を歩む。

    タイトルから、本屋の店員の話だと思っていたら、なかなか本屋にたどり着かない。なにしろダイアナは小学校から育っていくわけで、高校卒業までかかるわけです。

    モンゴメリ『赤毛のアン』の有名な「腹心の友」がダイアナで、本一冊、『赤毛のアン』の現代日本版という作品。生まれも育ちも違う少女たちのドラマチックな人生を楽しむという作品で、テンポもよく楽しく読める。

    ただ、後半の高校卒業からが作者が本当に描きたかった話だと思われ、伏線を拾うような教訓じみた話が繰り返されるのだが、ストーリーが前のめりに焦り始め、前半中盤までで心地よかったオブラートのくるみ具合がなくなって、ギスギスした話が続いていく。子供にも読めるかと思っていたけど、中学生くらいには読ませたくないような内容になるんだよなー。

    「十年後である」と引っ張ってしまった彩子との再会も、なんだかぼんやりで、それなら引っ張らなければよかったのに。

    全体には読みやすく、ドラマチックで楽しめる話であるので、大人にはおすすめかな。

  • ダイアナと彩子は大親友。まるで『赤毛のアン』のアンとダイアナのように。家庭環境が真逆のダイアナと彩子はお互いが羨ましくて仕方がない。しかし些細な誤解で二人は絶縁してしまう。そこから10年後に再び会うまでの二人の軌跡。結構、闇も描かれる。母の秘密、父の秘密。徐々に解き明かされていく過程に読む手が止まらない。名作少女小説のオマージュに溢れた一作。

全528件中 81 - 90件を表示

著者プロフィール

1981年生まれ。大学を卒業したあと、お菓子をつくる会社で働きながら、小説を書きはじめる。2008年に「フォーゲットミー、ノットブルー」でオール讀物新人賞を受賞してデビュー。以後、女性同士の友情や関係性をテーマにした作品を書きつづける。2015年『ナイルパーチの女子会』で山本周五郎賞と、高校生が選ぶ高校生直木賞を受賞。ほかの小説に、「ランチのアッコちゃん」シリーズ(双葉文庫)、『本屋さんのダイアナ』『BUTTER』(どちらも新潮文庫)、『らんたん』(小学館)など。エッセイに『とりあえずお湯わかせ』(NHK出版)など。本書がはじめての児童小説。

「2023年 『マリはすてきじゃない魔女』 で使われていた紹介文から引用しています。」

柚木麻子の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
辻村 深月
米澤 穂信
恩田 陸
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×