- Amazon.co.jp ・本 (435ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101224213
感想・レビュー・書評
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本書は瀬島龍三の人物伝ではなく、瀬島龍三に代表される責任を取らないエリートを批判的に検証することで、日本の戦争責任をもう一度浮き彫りにさせようとしている本。あとがきに、瀬島龍三を主人公にしたのは、氏の軌跡が、戦中戦後の日本の歩みを象徴しているからとある。そのあとに、あの悲惨な戦争を引き起こした日本社会の構造が今なお変わりなく続いている暗然たる事実という文言が出てくるが、この記述からも分かる通り、本書は、ある特定の意図を持って書かれた本であることが窺える。著者四人は全員、戦後生まれであり、そのうち三人が同じ時代に歴史教育を受けている。参考文献にも怪しいものが含まれており、四人の根底に流れる歴史観が、東京裁判史観→陸軍悪玉論→瀬島龍三という部分で共通して重なっているのではないかと思う。あとがきを信じれば、本書が書かれた目的は、日本社会の構造が今なお変わりなく続いている暗然たる事実に対し異議を申し立てることとなり、共同通信社の成り立ちを思うと、その態度に沈黙せざるを得ない。従って、本書は、シベリア民主運動(p207参照)における日本新聞の役割を果たしているのではないだろうか。瀬島龍三のことは嫌いだが、この本は懐かしき進歩的文化人の臭いを醸し出している。
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大日本帝国陸軍参謀にして、東京裁判の敵国ソ連側証人、シベリア拘留、民間の伊藤忠、政財界や宮家に対するインフルエンサー…。
何回人生を歩んだと思わせる様な様々な経歴の数々。
たいへん興味深く読みました。 -
瀬島龍三を通して戦中戦後の日本の裏側をあぶり出す共同通信渾身のノンフィクション。
シベリアで苦労をした(将校として一般兵よりは楽だったらしいけど)人をとやかく言う気は無いのだが、韓国/インドネシアの戦後賠償にたかり日韓の政治家に賄賂を送る姿は、戦後賠償を経済成長の糧とした戦後日本の政治と合わせて国家の恥であるという感想は持たざるを得ない。
なお瀬島龍三の下で働いていた方が一億円の入ったアタッシュケースを持って中曽根康弘との約束の場所に行ってみたら、読売新聞の記者(渡邊という名前)が来て代理で受け取っていったというのは酒の席で聞いた笑い話。 -
瀬島龍三だけにフォーカスされておらず、周辺のストーリーも含めて綿密に調べられており、興味深かった。戦後賠償ビジネスは、そりゃあきちんと賠償がなされていないという声も出るカラクリで、当時の商社やフィクサーの収益の実態がよくわかった。
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2023/04/25 読了 ★★★
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瀬島龍三と有るが、それは結局副題。
唐突に731部隊が出てきて驚く。
あくまで主題は「沈黙のファイル」なのだろう。
様々なエピソードが混在しているが、この手の本なのでスタンスは一貫している。
瀬島龍三の事を書いた普通の本だと思っていたので初めは面食らったが、そういう本だと思って読むと楽しめた。
関東軍の降伏交渉に立ち会ったロシア人のインタビューなど他にないものもある。 -
「不毛地帯」とは違ってリアル!しかし、戦争って。。。
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山崎豊子の「不毛地帯」を読み終えた後、壱岐正のモデルである瀬島龍三について書いた本があるんだと見つけて買ったものの、そのまま積読になっていた本。
今、改めて読むと、戦時中のことやシベリアのことよりも、韓国の戦後賠償ビジネスのくだりが気になりますね。日本では賠償したつもりになっていても、ずっと賠償しろって言い続けられる諸悪の根源がここにあったんだと再認識させられた。
とはいえ、自分が所属する組織には忠実だし、その利益を最大化させるんだよな。この人。 -
戦後賠償のからくり◆参謀本部作戦課◆天皇の軍隊◆スターリンの虜囚たち◆よみがえる参謀たち◆インタビュー:崔英沢、井本熊男、イワン・コワレンコ
著者:共同通信社社会部
解説:船戸与一(1944-2015、下関市、小説家)