驟(はし)り雨 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (353ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101247113

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  • 過去の読書ノート記録第3弾 

    藤沢周平は、名もなき人々の悲しみに寄り添い、薄いしあわせに寄り添う。

    (以下ネットなき時代なので全て自分用覚えです)
    『驟り雨』95.1.6読了
    藤沢周平著 新潮文庫 440円
    85年2月発行 80年単行本

    下町市井もの

    「贈り物」
    作十 渡世人 蔵前から駒形町にかかる所で腹が痛くなる。
    おうめ 親身な看病。
    「かわいそうに、とおうめはつぶやいた。たかがその程度の女なのに、作十は家ものぞいちゃいけないとあたしをかばって、暗いところで一人で死んでいったのだ。おうめはこみ上げてくる涙をあふれるままにしていた」

    「人殺し」
    伊太蔵 大河の船頭 日斜め長屋

    「遅いしあわせ」
    両国橋で 免沢町のおもん

    「捨てた女」
    「病気がぶり返す前に、ふきを探し当てたいものだ、と信助は思った。それが今の信助にとっては、たったひとつののぞみのようだった」

    「泣かない女」
     お才は黙って道蔵を見返したが、不意に風呂敷包みを取り落として手で顔を覆うと、背をむけて蔵屋敷の塀の下にうずくまった。
     お才は声を出して泣いていた。お才の泣き声を聞くのははじめてだった。風呂敷をひろい、雨に濡れたお才の髪と肩が小さくふるえるのをぼんやり眺めながら道蔵は、山藤の店をやめようと思っていた。ほかの店でやり直すのだ。そう思うと、店も、小料理屋で待ってるかもしれないお柳も、遠い景色のように小さく思えた。泣くだけ泣いたお才が、手に取りすがってきたのを、道蔵は振りとって歩き出した。その時になってやっと思い浮かんだことを道蔵は大きな声で言った。「夫婦ってのはあきらめがかんじんだ。じたばたしても始まらねぇ」その言葉をどう受け取ったかは分からなかったが、お才はめずらしく晴々とした表情で道蔵を見上げた。

  • 社会現象にもなっている『鬼滅の刃』のヒット理由の一つが、主人公が自分だけでなく相手の感情も含め一から十まで説明する判り易さだそうです。もっとも「それが嫌だ」という人も居て、そういう方にはこの本を。
    平易な文章で一つの情景をサラリと描くだけで、その時に主人公の心の奥底やその行く末も暗示させてしまう。藤沢周平の名人芸です。
    ちょっと崩れかけた男たちが、身の回り人物、特に女性の真摯さに絆されて立ち直ろうとする。そんな姿を描いた10の短編。お涙頂戴でもなく、甘いばかりの優しい話でも無く、どこか心が落ち着くような作品集です。
    辛い話、暗い話もありますが、落語的なユーモアを見せる話も有って、藤沢周平多作の時代にバランスの良く取れた代表的な短編集。

  • 07年5/27読了。

  • 10編の作品だが似たような名前が出てくるので、コンガラって来る
    江戸時代に生きる下町の喜怒哀楽をつぶさに描いている
    時代を超えて見えてくる人間模様が面白い

  • 秋雨の朝読了。3回目くらい。全10編が本当に「珠玉」。しんみりとしたり、憤ったり、滑稽だったり、ほっこりしたり。いろいろあるけど、“人生っていいな”と思える。
    『泣かない女』の最後、道蔵の言葉が良い。
    「夫婦ってえのは、あきらめがかんじんなのだぜ。じたばたしてもはじまらねえ(p345)」

  • 江戸戸の市井の人々の人情を描いている。
    しみじみと湧き出す感情。切なくもあり、余韻もあり。

  • 江戸の下級の人々の生活を描く短編集。全ての作品が素晴らしく、特に男女の機微の表現はどれも秀逸。この辺はあまり若いと理解しにくいかも知れない。

    様々な女が出てくるが、どれもこの時代の男によって幸せにも不幸にも転ぶという悲哀を感じる。作者の女性への思いやりのような優しさを感じた。

  • 男と女のお話・・・けっこう理不尽な目に遭う女が多くてなんだか切ない。報われないのは本人のせい?男を選ぶ目がないからなのか

  • 贈り物
    うしろ姿
    ちきしょう!
    驟り雨(はしりあめ)
    人殺し
    朝焼け
    遅いしあわせ
    運の尽き
    捨てた女
    泣かない女

    抗いきれない運命に翻弄されながらも江戸の町に懸命に生きる人々を、陰翳深く描く珠玉の作品集。

  • 知人に勧められ、同郷出身ということもあり。実際の江戸がどうかわからないけど、今もありそうな事が描かれている。いや…今はないことなのかも…。艶と情がある。

著者プロフィール

1927-1997。山形県生まれ。山形師範学校卒業後、教員となる。結核を発病、闘病生活の後、業界紙記者を経て、71年『溟い海』で「オール讀物新人賞」を受賞し、73年『暗殺の年輪』で「直木賞」を受賞する。時代小説作家として幅広く活躍し、今なお多くの読者を集める。主な著書に、『用心棒日月抄』シリーズ、『密謀』『白き瓶』『市塵』等がある。

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