こころの処方箋 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (241ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101252247

感想・レビュー・書評

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  • 【読もうと思ったキッカケ】
    村上春樹氏の『職業としての小説家』を読んだ際に、村上春樹氏が唯一河合隼雄氏だけが深い共感を感じることが出来た人物と書いていたので、興味を持ったのがキッカケ。

    【読了後、感じたこと】
    恥ずかしながら、『職業としての小説家』を読むまで、著者である河合隼雄氏のことは全く存じ上げなかった。経歴としては京大教授として、日本におけるユング派心理学の第一人者であり、臨床心理学者。

    本の構成は、55章からなり1章が4ページ構成に区切られているので、隙間時間に読むことも出来る為、かなり読みやすい構成だった。

    読了後に最初に感じたことは、「この本は、今後の人生で何回かは読み返すだろうな」と思ったほど、自分の中に著者の言葉が素直に身体に沁み渡った。
    また、難解な言葉が全くなく、終始平易な言葉で語ってくれているのが読みやすかった。

    【特に心に残った章】
    1章 『人の心などわかるはずがない』
    臨床心理学の専門家の著者が、人の心など分かるはずがないと思っており、「人の心がいかに分からないかということ、確信を持って知っていることが、専門家の特徴である」と言い切ってしまうところが、清々しくもあり、心に響いた。

    3章 『100%正しい忠告は役に立たない』
    「己を賭けることもなく、責任を取る気もなく、100%正しいことを言うだけで、人の役に立とうとするのは虫がよすぎる」
    自分のことを言われている様で、身につまされる心持ちになった。

    10章 『イライラは見とおしのなさを示す』
    「イライラは、自分の何か、多くの場合、何かの欠点に関わることを見出すのを防ぐために、相手に対する攻撃として出てくることが多いのである」の文章が新たな発見で、イライラしているのは、他人のせいでは無く、相手の表面上の欠点から感じれる、深層にある自分の欠点を隠すことにより、自分の心に矛盾が生じ、その心の矛盾を解消する為に、イライラするのかと自分の中で腑に落ちた。

    20章 『人間理解は命がけの仕事である』
    「私は、他人を真に理解するということは、命がけの仕事であると思っている。このことを認識せずに、「人間理解が大切だ」などと言っている人は、話が甘すぎるようである。
    この章が最も心に響いたので、この章だけでも気になった方は読んで欲しいと思います。

  • この本も私にとって必要な本でした
    この本は再読して、もっと理解したいと思います

    二つ良いこと さてないものよ

    初めて聞くフレーズで、なかなか覚えられなかった言葉でしたが、最初の方に出てきて、何度もそこを読みました
    これは良い言葉を教えてもらった!と思いました

    当たり前のことや、毎日の生活で気づいてないことに気づける本です

  • 何度も読み返す本です。はじめて手にしたときは様々な変化の中で迷いが多く、何か答えを出そうと闇雲に本を読んでいた時期でした。取り上げられている短いお話の中に、そうなのか、思い悩むことはない、と少しずつ縄を解いていった記憶があります。既に他界されてしまいましたが、多くの方の著作、対談の中に著者の言葉が生きていると感じています。

  • 定期的に河合隼雄に戻ってくるのに、この本は、どの章もいいなあって思った一冊。

    一番最初に読もうと思ったのは、自殺しようと思うほど追い詰められていると、止めたくなるのだけど、死ぬ思いを経て(むしろ経ないと)生まれ変わる時もある、という話だった。

    それほどまでに、いなくなりたい、消えてしまいたいに込められた否定は強いものなんだと思うし、でも自分が死んで、変わることで、生きることに繋がる可能性もあるんだなぁ……とも思えた。

    あとは、100点以外はダメな時もある、も、結構衝撃だった。

    人と向き合わないといけない時、逃げてはいけない時、100点の答えを出さないといけない場面。
    少しだけ、分かるような気がする。
    いつも100点を目指していると、結局ここぞという時に、踏ん張れなくなってしまう。

    余裕を持ちなさい、余裕が、本当のピンチに生かされる余力にもなると言われたことがある。
    私は、いつも余裕の持ち方が下手で、100点を目指して80点で安心してしまうし、余裕と思うと何もしなかったりする。難しい。

    そういう意味では「物事は努力によって解決しない」が名言かな。
    でも努力を完全に放棄する勇気もないから、解決しなくてもまあ、努力くらいはさせてもらおうのスタンス(笑)
    こんなに頑張ったのに、努力したのに、は、自分以外のものへの憎悪を不必要に高めてしまうんだな。

    「権力の座にある者は、孤独に耐えねばならない」も、殴られた。
    自分の権威を守るために権力を行使すると、それは孤独ではなく孤立になってしまう。
    権力のある者とない者と、同等にはなれない。
    だからこそ、その差をよく理解して、適切な距離を保つこと。時には権力を棄てる経験を持つと良いということが書かれていた。

    権力を棄てることは、権威を棄てることと同じではない。
    内的権威を、いかに磨いていくか。
    なるほど。

  • 著名な臨床心理学者の話。
    冒頭、「人の心などわかるはずがない」からスタートしており、好感が持てました。
    ふむふむと頷きながら且つ自分の人生を振り返りながら、話半分の姿勢(良い言葉として使用!)で読むと良いと思います。
    さて、学んだことを整理していきます。

    1.人の心はわからないことを自覚する
    ⇒よく聞く言葉ですが、専門家は”確信”をもって知っているとのこと。また、人間は絶えず変化することを理解しておく「あの人、昔と変わったなぁ・・180度変わってしまった・・」は当たり前なのです!

    2.子どもを完全に理解することはできない。ぶつかることを避けてはいけない
    ⇒子供と真剣にぶつかることができる親になりたい。もしかしたら、非行少年の多くが、ぶつかってゆける存在(親)を求めているのでは?子供のためにも、親は力強く生きよう。いつか子供に胸を貸してあげられるように。

    3.危機の際には生地が出てくる
    ⇒人の気質は、生まれた時からある程度決まっている。他人からは「楽天家」と言われる私だが、おそらく自分の生地は「心配性」だと思う。だけど、それで良いのだと背中を押してくれる。私は、これからも「楽天家を目指す心配性」で在り続けよう!

    〇【さいごに】
    著者のあとがきに記されているように、この本は「常識」が大半です。ただ、素敵な言葉・考えさせられる「常識」がぎゅっと詰まっています!
    何度も読み返したい作品でした!

  • 働き始めてから2.3回読んだかな。あまり私の参考にはならない話ばかりだったけど、本を通して、河合隼雄さんの言葉を聞くことができるから、古くなった紙の質感の本ってプライスレス

  • 何度も読み返したい本。
    最初は付箋をつけながら読んでたけど、付箋の数がえらいことになったので、付箋は全部外しました。
    付箋をつけた部分だけ読むのももったいないし。
    一つひとつの話が短いので、難しい本を読んで疲れた時など、合間あいまに挟んでいきたい。

    別の本を読んでいるときに、この本の一文が紹介してあって、気になったので購入しました。
    昔から有名な本だったのですね。
    そして有名な方だったのですね。
    今更ですが、この本にたどり着けて良かったと思います。

    本から本につながっていくの楽しい。

    あの時、あの本屋で、いろんな本を立ち読みしまくった挙句、あの本を買ってよかったです。

    そうやって元をたどっていくと、いろんな本を読むきっかけのきっかけになったところの、あの時、あの人におすすめの本を聞いた自分をほめることができるかな。

  • 1.人の心などわかるはずがない

    人の心がいかにわからないかということを、確信を持って知っているところが、専門家の特徴である

    「わかった」と思って決めつけてしまう方が、よほど楽なのである。

    2.ふたつよいことさてないものよ

    ひとつよいことがあると、ひとつ悪いことがあるとも考えられる

    ふたつわるいこともさてないものよ

    人間はよいことずくめを望んでいるので何か嫌なことがあると文句のひとつも言いたくなってくるが、そんなときに
    全体の状況をよく見ると、なるほど上手くできていると微笑するところまでゆかなくても、苦笑ぐらいして、無用の腹立ちをしなくてすむことが多い

    10.イライラは見通しのなさを示す

    イライラは、自分の何かー多くの場合、何らかの欠点に関わることーを見出すのを防ぐために相手に対する攻撃として出てくることが多いのである

    11.己を殺して他人を殺す

    「己を殺す」生き方の好きな方は、自分が殺したはずの部分が生殺しの状態で、うめき声をあげて近所迷惑を生じていないかとか、自分が殺した部分が、思いがけずに生き返って、他人を殺すために活躍していないか、などと考えてみることが必要であろう。

    12.100点以外はダメなときがある

    努力を続けてきた、という人の中には、常に80点以上の努力を続けている人がある。たしかにその人の平均点は人並み以上どころか大変に高い。ところが100点以外はダメ、という時も80点をとっていては駄目なのである。

    いつも100点を狙っている人は不要な努力を払っている分だけ不機嫌になったり他に対して攻撃的になったりしがちになるものだ。100点はときどきでいいのである。


  • 日本におけるユング心理学の研究を確立したあまりにも有名な筆者が、1988年から4年ほど連載したものに書き下ろしを加えた55の心の「処方箋」。著書もあとがきで述べられていますが、多くは「常識」的なことが書かれています。ただ、何となく分かっていたことを、的確な筆致で一章ごとに各4ページにまとめてくださっており、心にストンと落ちます。また、30年以上も前の書籍でありながら現代にも通じるアドバイスであることに敬服です。
    特に心に残ったものの中から、以下の5つを紹介します。

    第5章「『理解ある親』をもつ子はたまらない」
    真の理解などということは、ほとんど不可能に近いという自覚が必要である。そんな難しいことの真似ごとをやるよりは、まず自分がしっかり生きることを考える方が得策のように思われる。

    第12章「100点以外はダメなときがある」
    ここぞというとき100点をとっておけば、それ以外は60点でいいのだ。平均点は80点以下でも、その効果はまるで違ってくるのである。(中略)100点はときどきでいいのである。

    第21章「ものごとは努力によって解決しない」
    一切の努力を放棄して平静でいられる人は、これは素晴らしくて、何の言うこともない。(中略)しかし、われわれ凡人は、努力を放棄して平静でなどいられない。いらいらしたり、そわそわしたり近所迷惑なことである。そんな状態に陥るくらいなら、努力でもしている方が、まだしもましである。それにひょっとして解決でも訪れてきたら、嬉しさこの上なしである。

    第47章「二つの目で見ると奥行きがわかる」
    ものごとの「奥行き」を知るためには、二つの異なる視点をもつことが必要だと言えそうである。ひとつの見方だけだと、平板な見方になってしまって、立体像が浮かびあがってこないのである。(中略)そのときの状況に応じて必要と感じられる、二つの目の組み合わせ(甘い目と厳しい目、主観と客観等)により、状況を立体的に把握しようとすることが大切である。

    第48章「羨ましかったら何かやってみる」
    自分にとって実に多くの未開発の部分があるなかで、特に何かが「羨ましい」という感情に伴って意識されてくるのは、その部分が特に開発すべきところ、あるいは、開発を待っているところとして、うずいていることを意味しているのである。(中略)「羨ましい」感情が強いとき、自分のなかに何かが未だ注目されずに捨てられているはずだと思って、探してみたり、いろいろ試みてみたりするのは、それほど悪くはない。そのためにエネルギーを消費する方が、他人に愚痴をまき散らしたり、他人の足を引っ張るためにエネルギーを使うよりは少しはましだと思われる。

    23年前に購入した本を何度めかに読んでみました。読む時の自分の状況や立場によって、必要な「処方箋」はその都度違うと思います。今後もちょくちょく手に取りたい一冊です。

  • 2つの目を持つ意識、善悪や、自分他者など。
     

    100%正しい忠告は役に立たない。

    イライラするのは見通しがつかないから。より理解しようとしてみる。

    休み休み。
    ソウルメーキング、自分がどんな人生を歩むのか、歩んだのか。

    適度に感謝する。

    1人でも2人でも生きていけるようにする。


    道草によってこそ、道の味わいがわかる。

    羨ましいと感じた時は何かしてみる。

    精神的なものが精神を覆い隠す。

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