からくりからくさ (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (447ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101253336

感想・レビュー・書評

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  • 何度となく読んでいる本。
    蓉子のつくる暮らしの基盤や家に流れる包み込むような空気に触れると丁寧に暮らしていくことへの憧れが強くなる。

    1番共感したのは紀久。

    それまで自然の作り出したものを受け入れ好んできた作り手たちだったのだけど、どうしても自然からは出来上がらない底の見えない黒を必要とする様はここのところ経験した黒い闇にとても似通っていた。
    人が生きていくということは綺麗なだけでは済まされないことがあり、それでも何世代も後に消化してしまえる強さが人にはあるのだなぁ。

    梨木香歩さんの小説は始まりから全てが繋がっていて、それは物語が始まる前からずっとずっと繋がっているというテーマでもあると感じる。

    紡いでいくということ。

    そして暮らしの丁寧さや言葉、自然の描写の美しさにたまらなく惹かれるのでした。

    うう、レビューは苦手だけど頑張ろうw

  • 女性4人の共同生活と聞くともっとドロドロしたものを想像するけれど、確かにドロドロしそうな部分もあるんだけれども何となくカラッとして終わってしまう。それは登場人物それぞれが、個人の事情や恨みつらみよりももっと大きな、人が延々と営んできた生活の連なりの方に興味の対象をもっていってしまっているから。だから何となくみんな目の前のことには無頓着というかぼんやりしているというか
    女性というのは(自分も含めて)えてして目先のことに囚われすぎなところがあるので、そのくらいの方がちょうどいいかもしれない。

  • 祖母が遺した古い家に女が四人、私たちは共同生活を始めた。糸を染め、機を織り、庭に生い茂る草が食卓にのる。静かな、けれどたしかな実感に満ちて重ねられてゆく日々。やさしく硬質な結界。だれかが孕む葛藤も、どこかでつながっている四人の思いも、すべてはこの結界と共にある。心を持つ不思議な人形「りかさん」を真ん中にして――。生命の連なりを支える絆を、深く心に伝える物語。
      
    『家守奇譚』『西の魔女が死んだ』に続いての梨木香歩作品3冊目です。上記紹介文を読んでもどんなストーリーなのか見当がつかず、読み始めてからしばらくも何ともつかみどころのないお話だなあ、と思っていました。が、読み進めるうちに梨木さん独特の透明感、静謐さ溢れる文章にはまっていき、物語も四人の女性の不思議な因縁や「りかさん」にまつわる謎解きの様相を見せて、目が離せなくなりました。機織、染織という珍しいテーマにとまどいながら読んでいたところもありましたが、それがすべて伏線となりラストに一点に収束し昇華するシーンは圧巻でしたね。四人の女性たちがそれぞれの生き方、主張をぶつけながらもお互いに支え合って成長する様子の描き方も秀逸です。命の不思議な連鎖を感じさせてくれる優しい作品でした。時系列が逆になってしまいましたが、次は『りかさん』を読む予定です。

  • そもそも女の人の共同生活がとても苦手で、あんまり入り込めなかった。内容もどろどろしていて、なんで一緒に暮らしているんだろうと思った。そのドロドロの犠牲になるのが小さなミゲルであるところが、また嫌な感じだった。
    草木染や織物の描写はきれいだし、人形が燃えると場面はきれいな風景が脳裏をよぎったが、好きな小説ではなかった。

  • しれっとものすごくフェミニズムやった。さまざまな方向で。だからか分からんけれども、男性キャラが胡散臭くてどうにも好感持てんかったなあ。神崎あいつはいかん。

    それにしてもこの人は季節感のある自然の情景の描き方が素敵よね。まだこれ読んだの3冊目やけども。
    庭に季節の野草が生えたのを摘んで食べるとかもうね、あこがれよね!庭なら犬のおちっこも心配ないし。
    ごちそうさまでした。

  • 与希子と紀久、マーガレット、そして蓉子四人の物語。
    メインは与希子と紀久かな、そこにマーガレットが少し絡んで、蓉子とりかさんがみんなを優しく包み込む。何があるというわけでもなく、しずかに淡々と優しく物語は進んでいく。
    赤光という人形師が出てきて、それぞれが少しずつ赤光と繋がっていたことがわかる(マーガレット以外)。
    最後りかさんが竜女になるところはすごかった。りかさんが竜女になるためにみんなが集まりみんなで紡いできたのかな。
    与希子と紀久は「よきこときく(斧・琴・菊)」なのだろうな。

  • このタイミングでこの本に出会った不思議
    と、思いたくなる内容でした。
    作品内の会話に出てくる
    『偶然は偶然』『偶然は必然』なんてよくあるコピーみたいなことはない…

    そう、そんな陳腐な表現は嫌だけど
    そう言いたくなる繋がりがあるように思えてきた。

    つながりについて、現れ方には、事例4つ挙げているようだ。
    人は、今、現在も、過去も未来も一人では成り立つことはなく、
    だからと、繋がらなくてはいけないのでもない。独りを見つ、なんとかしよう、その受け入れる力。
    『でも傷を持たない人なんていないでしょう。問題のない人も少ないと思う』
    『そうなんだけれど、彼と関わることになる人って、独特の暗さのある人たちなんだ、…』

    何処かそんな一端を持つ4人の女性
    それに、これまでの女性の社会的立場や土地とのつながり、芸術と職人技の境とつながり
    名もないひとたちが作っている
    この今を生きる、生き方に
    それも良いでしょうと伝えているようだ。
    後半、そしてラスト前は鳥肌のスピード感が
    また、前半の影から綺麗に光らせている

  • 連綿と続く人の営みは、普段見えていないだけでいつでも存在し、紡がれているんだ、と空を仰ぎたくなった。
    織られている時には、全容は分からない。今、ここ、は、いずれどんな模様になるのだろう。
    自分に流れてる川を辿ったら、水脈までの道のりはどれほどのものなんだろう。

    ぐるぐる頭の中にいろんなことが巡る。
    しばらくの余韻を、蝉の声とともに過ごすことになりそう。

  • 思っていたイメージとは違いましたが良かったです。
    機織りをして暮らすというと穏やかで優しい感じがしますが、読んでみると儀式的で隙のない印象を受けました。
    機織りや織物の歴史を理解しながら読むのはなかなか疲れましたが、読みきって良かったときっと思えるはずです。

  • 児童文学のイメージが強いのだけれど、とっても大人なお話。怨念とか、嫉妬とか人間の奥深くのドロドロとしたところがテーマの一つであるのに、清浄な気配が湧き上がってくるのはこの人ならでは。ミケルの庭を先に読んでしまったけれど、まだ覚えているうちに本作を読めてよかった。とっても哲学的。はっとする言葉が随所に散らばっていて、読む時々で惹きつけられる箇所が違いそう。
    能に興味が出てきた。手仕事もなにかやってみたい。

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著者プロフィール

1959年生まれ。小説作品に『西の魔女が死んだ 梨木香歩作品集』『丹生都比売 梨木香歩作品集』『裏庭』『沼地のある森を抜けて』『家守綺譚』『冬虫夏草』『ピスタチオ』『海うそ』『f植物園の巣穴』『椿宿の辺りに』など。エッセイに『春になったら莓を摘みに』『水辺にて』『エストニア紀行』『鳥と雲と薬草袋』『やがて満ちてくる光の』など。他に『岸辺のヤービ』『ヤービの深い秋』がある。

「2020年 『風と双眼鏡、膝掛け毛布』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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