家守綺譚 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
4.14
  • (1475)
  • (938)
  • (812)
  • (69)
  • (20)
本棚登録 : 8946
感想 : 1102
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101253374

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 親友の幽霊、タヌキ、河童‥‥そんなものがまことしやかに出てくる世界。しかし不思議と嘘臭さはなくリアリティーさえ感じさせる。

    短編小説というより掌編小説、各章のタイトルがすべて植物の名前なのも心憎い。庭や山野の植物が地味だけど鮮やかな彩りを添えている。

  • 何度呼んでも良い。最高に好きな一冊。
    ハードカバーの装丁も素敵。文庫もいいけれど。

  • 地理感が乏しい私は明確に記されていない限り、ほぼ物語と舞台となる土地に気づくのが遅い。
    本作も、
    「あ、これ湖って、琵琶湖やん」
    と様々な地名が出てきてから認識した。

    疏水って何回出てきてるねん…

    琵琶湖疏水遊歩道なんかを歩けば私も小鬼を見かけたり出来るようになるんだろうか。

    あ、でも、どうしようもなく手入れするのが難しくなってしまった我が家を圧迫し続けたサルスベリに一か月ほど前にさようならした。

    恨み辛みが聴こえてきたら凹んでしまいそうなので、もうちょっとしてから歩きに行く事にしよう。

  • 読んだ当初は梨木香歩がこんなの書いたのか!と驚いた。幻想っぷりと古い文体に。
    しかし中身は極上。どういう流れでこのような今までと全く違うものを書かれたのか知りたい。

    内容を敢えて例えるなら、川上弘美のように不思議なことが次々起こるけど、特に不思議な大事件とされず日常の一部として淡々と過ぎていく。
    高堂と綿貫のやりとりのこなれた感じは、夢枕獏の陰陽師のような雰囲気も。ただしこちらはなにもやっつけない。

    ある意味、架空のエッセイとか嘘日記のような気分で書かれたのかしらん。
    からくりからくさや裏庭で見られたような、緻密で複雑な世界を作り出せる魔法使いが、リラックスして楽しみながら箱庭を作ったような。いや、これは宝石箱か。というには渋いけど。

    後日Wiki見ると書いてあった。

    梨木はこの作品を「料理人が作る自分用の賄いのようなもの」と位置づけている。『沼地のある森を抜けて』で敢えて得意分野とする植物を登場させないという選択をしたため執筆に行き詰まることがあり、バランスを保つために平行して書くようになったのが本作のきっかけである。

  • 不思議な話だった。人を化かす狸やら河童、小鬼などが普通に出てきて、亡くなったはずの友人、高堂もちょいちょいやって来る。しかし皆それに驚かない。こういう世界観はいいな、と思う。

    謎なのがダァリヤの君が、駅で誰を待っていたのか。はっきり書かれていないけど、高堂と面識があったんじゃないかなあ。そう考えたら、彼女が朗誦した詩の一節、「彼方へ君と共に行かまし」がすごく切ない。「まし」は古文だと反実仮想らしいので、「貴方と一緒に行けたらいいのに」っていう感じかな。高堂を待っていたんだろうか。

  • 2009年2月5日~6日。
     危うくこの本を読まずに死ぬところだった。
     とある方が教えて下さった。
     感謝。
     ここには僕の失ったものがある。
     失いたくは無いものがある。
     頑なに守ってきたものがある。
     忘れていたものがある。
     たとえ一文、いや漢字一文字ですら読み飛ばしたくはない。
     不思議でもあり、当たり前でもあり、ペーソスとちょっとぶっきらぼうなその文章は、まるで煮物にされたジャガイモになったようにジワジワと染みてくる。
     綿貫、高堂、となりのおかみさん(ハナさん)、ダァリア、ゴロー、和尚、山内、百合、花鬼、小鬼、タヌキ、河童、竜、長虫屋、そしてサルスベリ、その他諸々。
     すべての登場人物(人物じゃない存在もいるが)が魅力的。
     本当に久しぶりに心が震えた。
     そうか、高堂は葡萄を食べてしまったんだな。
     僕は綿貫と同じく、例え渇きがあっても、もう少し食べるのを後回しにしよう。

  • 自然の中の「気配」のようなものを、誰しも少なからず感じるもの。この物語ではそれらが形を得て、いきいきと動く姿を見せてくれます。征四郎と彼らとの密やかな交流は、幻想的でありながら不思議とどこか懐かしい。「家」の寂びた雰囲気といい、謎めいた隣人たちといい、こんな暮らし素敵だなあ......。

  • 亡き友の家の家守となった主人公征四郎が、四季と通じ合うゆったりとした空気の中で出会う数々の怪奇、でもそれに対して恐れたり疑ったりすることなく受け入れてしまう主人公がとっても良いなと思う。出てくる自然とのエピソード(サルスベリに嫉妬されたり、河童を助けたり…)が想像力をかきたてられる。又、亡き友がふら~と現れてぼそっつとつぶやきまたあの世へ帰っていくのも心くすぐられる。さすが、本屋さん大賞ノミネートされただけある。手元に置いて心を軽くしたいときに読みたくなる一冊です。

  • 小説の舞台の近くに住んでいる友達がいて、
    私も親しみ深い場所だから
    あぁ、やっぱりこんなことがおきてたの、
    うなずけるわ、って感じだった。
    あの付近の桜にはやっぱり花鬼がいるんだなっと思ったし。

  • いいか、この明るさを、秋というのだ、 と共に散歩をしながらゴローに教える。 ゴローは目を閉じ鼻面を高く上げ、 心なしその気配を味わっているかの如く見えた。 私がゴローで一番感心するのは、斯の如く風雅を解するところである。 犬は飼い主に似るというのは、 まことにもって真実であると感じ入る。 亡き友人の家を守ることになった 綿貫 周辺で起こる奇怪なできごとに 驚きつつも すべてを受け入れる 達観 植物の名は 章タイトル 掛け軸から出てくる高堂を切っ掛けに 植物の蔓が伸びて 物語をつないでいくような。 ゴローの活躍にも 注目です。

全1102件中 71 - 80件を表示

著者プロフィール

1959年生まれ。小説作品に『西の魔女が死んだ 梨木香歩作品集』『丹生都比売 梨木香歩作品集』『裏庭』『沼地のある森を抜けて』『家守綺譚』『冬虫夏草』『ピスタチオ』『海うそ』『f植物園の巣穴』『椿宿の辺りに』など。エッセイに『春になったら莓を摘みに』『水辺にて』『エストニア紀行』『鳥と雲と薬草袋』『やがて満ちてくる光の』など。他に『岸辺のヤービ』『ヤービの深い秋』がある。

「2020年 『風と双眼鏡、膝掛け毛布』 で使われていた紹介文から引用しています。」

梨木香歩の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×