- Amazon.co.jp ・本 (337ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101259819
作品紹介・あらすじ
華やかな「脳」ブームの影で、研究現場は長い停滞期にあった。そもそも脳は単独に観察して評価できるのか。従来の前提を疑った著者は、より社会性の高い環境下での脳の働きに着目する。そして、2頭のサルの序列確認行動を手がかりに、脳の「他者とつながりたい」本質をとらえ、さらにその中核となる心の姿へと迫る――理研期待の研究者が拓く脳科学の新時代。毎日出版文化賞受賞。
感想・レビュー・書評
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面白かった。脳が持ってるだろう、社会性の探求について書かれており、学ぶことも多い。
ただし、これらの研究は初期段階で、タイトルから期待するような大きな結果はまだ出てないようだ。そういう意味では、この分野が開きつつあることを知る価値はある。
そして著者は、なんとハコスコの人らしい。もう研究はやめたんですかね?? -
研究者としての挫折から、研究対象を変え、他者との関係を脳科学的なアプローチで解き明かす。実験の仕方は猿を用いたもの。専門的な話はほとんど交えず、実験方法もイラスト付きで分かりやすい。これを読んでいると、人間なんて然程猿と変わらないと感じてしまう。
印象に残ったのは、お金という概念ができる前から、人にはインセンティブとして働く概念があったはず。それが承認欲求だという言葉だ。お金そのものは、擬似承認の代替機能を持つ。本質は何か、考えさせられる。 -
<目次>
はじめに
序章 脳と社会と私たち
第1章 脳科学の四つの壁
第2章 二頭のサルで壁に挑む
第3章 壁はきっと壊れる~適応知性の解明に向けて
第4章 仮想空間とヒト
第5章 ブレイン-マシン・インターフェイス
題6章 つながる脳
おわりに
<内容>
脳科学者の思考過程がわかる本。また脳科学の現在のもわかる本。種本が7年前なので、今はさらに進んでいると思われるが、その前半は自分にはかったるすぎた。科学者らしい緻密な筆が堪えた。が、後半の内容な面白かった。 -
貸し出し状況等、詳細情報の確認は下記URLへ
http://libsrv02.iamas.ac.jp/jhkweb_JPN/service/open_search_ex.asp?ISBN=9784101259819 -
著者は,医学部出身の脳科学者であり,このレビュー執筆時点で理化学研究所チームリーダーである.
従来の脳研究は外側から脳の機能を調べることであった.しかし著者は,実験者と実験対象の脳は双方向性のコミュニケーションで「つながる」ことが必要であると考えている.ここで重要なのは,従来のように「実験者」と「実験対象者」がコミュニケーションするのではなく,「実験者」は「実験対象者の脳」と直接にコミュニケーションすることであるという.
また,多彩で常に変化する環境とつながっている条件の下で実験することで初めて,実験対象者の社会的生物としての行動が研究できるという.
そこで著者は,実験対象のサルの神経細胞の活動を微細な多数の電極で記録すると同時に,行動をモーションキャプチャで記録する方法(MDR)を開発し,研究を始める.
二頭のサルの間におかれたエサをめぐって二頭のサルはどう行動するのか,をMDRで記録し,我慢するサルという研究結果をえる.これは社会的ルールがどのように決まってくるかを考える上でおおきな要因であるという.
さらにすすめて,ヒトのココロを研究するために仮想現実を使う,BMI(ブレイン-マシン・インターフェイス)技術を進歩させるためにECoGと呼ばれる脳の表面電極を使う,など次々と新しい方法を開発している.
この文庫の元本は2009年の発行なので,その後の展開は今後追っていくとして,この本の最後部分には,ヒトの社会的脳機能について短い考察がある.そこで述べられている「カネよりホメ.リスペクト(尊敬)を回す社会」は本当に住みやすそうである.
2015.5 -
社会脳の研究者である著者が綴るのは研究の結果ではなく研究への思いや研究の過程、その意味では期待外れと言えるところでではあるが、学者先生の研究生活や学会の実態などが垣間見ることができた。また研究の過程では猿の社会性、仮想空間の活用、ブレインマシンインターフェース構想などを語る。終章の人間はお金だけではなくリスペクトも大きな行動の動機付けの対象となるとの言説は数年前に話題になった「ウッフィー」にも通じる話として納得。
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STAP細胞で有名になった理研では脳科学の最先端の研究もしている。再現性が何度も取りざたされているが、著者は一回性のものも科学の遡上に載せようとしている。さらに、特殊な環境に置くのではなく、日常の生活における脳の活動をとらえようとしている。何らか新しい動きを感じることができる。「心の理論」とか「ミラーニューロン」についても、もろ手を挙げて受け入れているわけではなさそうだ。そういう発想で書かれたものはたぶん初めて読んだ。最終盤でカネやカミの話が出てくるが、「カネよりホメ」とか「リスペクトを回す」という発想はよく分かるような気がする。しかし、サルと言えども手術をして電極を差し込むということが、脳科学者にできるのだろうか? 獣医師か誰かに頼んでやってもらっているんだろうか? 生物実験とかしたことがないので分からないけど、死なせてしまっては元も子もないのだし。「そんなこともできないようでは脳科学者とは言えない」のだろうか。
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様々な脳科学の研究テーマをおぼろげながらつかむことができた。
今後の研究の進展に期待したい。
また、研究費の投資を受ける研究者の立場としての考え方、覚悟にも感銘を受けた。 -
少し前のHBRの記事を書かれていた著者の本で
あったので読んでみようと思い購入。
最近の脳科学ブームで語られているようなことは
本当なのかという疑問に対しては、あまり研究の
現場としては停滞していて成果が出せていない状況
であるらしいこと。
それらの成果を面白おかしくかいていある本ではなく
最後の章の”おわりに”に本人も書かれているとおり
研究を実施するための考え方や悩み。ブレスト的な
内容で、どちらかというとエッセー的な内容の
本でした。
最後の章の『つながる脳』の部分は哲学的な内容で
今からの社会に対しての提言が脳科学の観点から
かかれてあるが、これはよかったと思う。 -
理化学研究所脳科学総合研究センター適応知性研究チーム・チームリーダーで、適応知性および社会的脳機能解明を研究されている藤井 直孝先生の書『つながる脳』。
世間に広がる脳科学ブームにも関らず、行き詰まりを見せる脳科学研究。
脳科学の抱えているさまざまな問題点、その内実や、著者の考える脳科学研究のあるべき姿が実直に語られている。
どうも、僕達が触れる脳科学研究の”成果”は拡大解釈されて伝わっているようだ。
社会的脳機能の研究については、かなり魅力的に感じた。
研究室でのかなり限定された環境下での事象ではなくて、より自然な状態での(被験者のサルがそのためのトレーニングすら必要としない)研究も重要だと感じた。
アバターや仮想空間を使用した研究や課題など、これからの脳科学を切り開いていくのではないかと感じたし、僕の携わるリハビリテーションの世界にも浸透してきそうな予感がした。
良いアイデアもいただけた。
著者の藤井 直敬先生の、人間らしさを感じる脳科学解説本。
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【内容(「BOOK」データベースより】
華やかな「脳」ブームの影で、研究現場は長い停滞期にあった。そもそも脳は単独に観察して評価できるのか。従来の研究前提を疑った著者はより社会性の高い環境下での脳の働きに着目する。そして、2頭のサルの上下関係を手がかりに、脳の「他者とつながりたい」本質をとらえ、更にその中核となる心の姿へと迫る―理研期待の研究者が拓く脳科学の新時代。毎日出版文化賞受賞。
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【著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)】
藤井/直敬
1965(昭和40)年広島生れ。東北大学医学部卒業。同大大学院にて博士号取得。’98(平成10)年よりマサチューセッツ工科大学(MIT)、McGovern Instituteにて研究員。2004年より理化学研究所脳科学総合研究センター象徴概念発達研究チーム副チームリーダー。’08年より同センター適応知性研究チーム・チームリーダー。主要研究テーマは、適応知性および社会的脳機能解明————————
【目次】
序章 脳と社会と私たち
第1章 脳科学の四つの壁
第2章 二頭のサルで壁に挑む
第3章 壁はきっと壊せる―適応知性の解明に向けて
第4章 仮想空間とヒト
第5章 ブレイン‐マシン・インターフェイス
第6章 つながる脳
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脳研究が新たな状況に突入したという実感が熱く感じられる.感性工学で取り扱うような,曖昧模糊とした情報を如何に定量化するかを情報学,工学,あらゆる方面から攻める姿勢も面白い.なにより,過去と現在を説明する前半は,まるで予算申請書の書き方をレクチャされているかのようで参考になる.