ひらいて (新潮文庫)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (189ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101266510

感想・レビュー・書評

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  • 容量もルックスもいい女子高生の愛が好きなったのは地味男子のたとえ。でもたとえは、糖尿病のおとなしい美雪とつきあっていた。

    たとえが好きで好きで好きで、フラれて、たとえの彼女の美雪を抱く愛。身勝手にあたりをなぎ倒し、傷つけ、そして傷ついて。
    女子高校生の絶対的孤独、愛ゆえの不安定さ。自意識からの自己中心さ、自分を認めて欲しいという欲求。愛の中のあらゆる感情がごちゃ混ぜになって、自分でコントロールしてると思っても出来てない、歪んだ形で体の外に、行動に出てしまう。恋ってすごい、愛ってすごい、とまで思ってしまうほど、愛は自分の気持ちにまっすぐだった。たとえも美雪も愛もみんな愛情不足で、自分の心の拠り所を必死に探している気がする。
    たとえの父親を殴る愛がカッコいい。嘘だと分かりながら言葉が止まらない愛が悲しい。自己愛を捨てきれない愛が愛おしい。読みながらいろんな感情になる。綿矢りさの表現力がすごすぎる、好きすぎる。本当に好きだ。不安定な女の子の感情を描かせたらピカイチすぎる。

    映画も見たけど、映画も良かった。原作も映画も良い作品って実は少ない。「ひらいて」。それぞれ、こころをひらいて。

    「愛は、唾棄すべきもの。踏みつけて、にじるもの。ぬれた使い古しの雑巾を嗅ぐように、恐る恐る顔を近づけるもの。鰯のうす黒いはらわた、道路に漏れるぎらついた7色のガソリン、野外のベンチにうすく積もった、ざらざらした黒いほこり。
    恋は、とがった赤い舌の先、思い切り掴む荊の葉、野草でこしらえた王冠、頭を垂れたうす緑色の発芽。休日の朝に起き抜けに布団の中で聞く、外で遊ぶ子どもの笑い声、ガードレールのひしゃげた茶色い傷、ハムスターを手のひらに乗せたときに伝わる、暖かい腹と脈打つ小さな心臓。
    私は、乾いた血の飛沫、ひび割れた石鹸。ガスとちりの厚い層に覆われた惑星。」

    「理由なんか、どうでもいい。私たちはいつもときどき、ひどくつらい。」

    「およそ、忍耐力など持ち合わせていない人が、たとえ打算があったとしても、私の前ではおそろしく辛抱強くふるまい続けるのであれば、私は愛さずにはいられません。
    ほんのひとときでも、心を開いてくれたのであれば、私はその瞬間を忘れることはできません。」

  • 「器用に腕白な彼らより、わたしのほうがよっぽど、据わってはいけない部分の肝が据わっているのだ」

  • 主人公の強い勢いと詩みたいな文章で、続きが気になってイッキ読みだった。正直、あんなに激しく恋する子に感情移入はできない。最初は、プライドを保って普通だったのに、たとえにふられてからありえないくらい執着しちゃって怖かった。そこから、全然立ち直れなくて受験も失敗して、クラスでもヤバいやつみたいになって、最後は教室から飛び出してしまって、人生を狂わせすぎている。折ると祈るが似てるっていうのはいい表現だと感じた。

  • たとえって名前いいよね

  • 恋愛を少し重めに描いてるけどそれがすごくリアルで普通はできない行動も高校生の主人公はしちゃうくらいにたとえを愛してる、でもそれが本当に愛なのかは謎だけどその曖昧さも美しい。恋愛なんて思い込みな気がする。

  • あまりにも現実からかけ離れている(と信じたい)歪んだ愛から始まった物語だが,思春期特有の心情をいい塩梅で突いてくるために登場人物たちの動向に目が離せない。
    タイトルにもある「ひらいて」の言葉が最後の最後にも登場したがあれはどのような解釈をするのか正解はきっとないからこそ,他に読んだ人の意見をぜひ聞いてみたい。

  • 愛がした、身勝手、自分勝手で本能的で情熱がきらきらと燃える様な恋はきっと10代にしか出来ない。破滅願望、貴方との未来、嫉妬、恨み、確かに愛は身勝手だけど心の底にある感情に従って生きている姿は生命力に溢れていて、こんな女の子になりたいと何度も思った。

  • 苦しすぎた。読んだ記憶ない、、最後の方ほぼとばし読みしてた。久しぶりに恋愛小説読んだけど感情移入してしまう。なんか誰の気持ちも分かってしまうから
    映画を知ってて、ずっと読んでみたかった本、やっと読めた。けどやっぱり紡がれた言葉は綺麗だったな、また読みたい


  • 主人公の、自分への自信だったり思い立ってすぐ行動しちゃうところが羨ましいと思った。

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著者プロフィール

小説家

「2023年 『ベスト・エッセイ2023』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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